第18話 新人風紀委員の受難(前編)
かなり昔に戻ります
*
これはイジメか!
今日も風紀委員の校門での活動は不調だった。
参加者は委員長の私一人だけ。
他の委員は誰も来なかった。
*
「今朝も1人だったよぉ・・・」
私は左隣に座る朋ちゃんに愚痴を言った。
「あんたの噂のこと真に受ける人居たんだね。本人知ってたらデマだって分かりそうなもんだけど」
「元気だしなよ」
そう言って、ぽんぽんとわたしの肩を叩く。
ありがとう
涙が出そうだった
うん、頑張るよ。
私泣かないよ。
まだ今は
*
*
3月に都会からこの町に越してきた私は、早くもその洗礼を浴びていた。
ホームルームまでのひと時、私は教室の中で机に伏せていた。
胃が痛くなる原因
ひとが集まらない
それは私の噂が原因だった。
*
「風紀委員が朝帰りなんてやるわね!」
4月になってのある日。私は見知らぬ女生徒にそう言われた。
少し派手目の彼女はそう言って去った。
なんの事だろう。
意味がわからなかった私は、クラスに入ってその異様な雰囲気に気がついた。
戸惑う私に後ろの席の子が小さな声で教えてくれた。
曰く
(私が朝方男の子と歩いてる姿を見た人がいた。二人はとても楽しそうだった。)そんな噂が流れているらしい。
馬鹿らしい
でも納得。
見方によっちゃ確かに不純異性交遊だよね。
「それ友人だよ。みんなで徹夜で天体ショーを見ての帰りだったんだよ」
私がそう言うと彼女は安心して微笑んだ。
「ああ、なんだそうだったんだね。心配したんだよ」
「でもそんなことくらいで騒ぐなんてね」私はくすっと笑った。
瞬間彼女の顔がこわばった気がした。
そっか、なら安心だね。
そう小さな声でつぶやくと、彼女は前の方に向いた。
その日彼女から話しかけることはなかった。
でも私はその事を気にもとめなかった。
よし、これで一安心だ!
安心しきった私は
周囲が私達の会話を聞いていたなんて想像すらできなかった。
*
人が離れ始めたときは、ちゃんと説明すればわかってもらえる。
そんな余裕がどこかにあった。
その日、校内放送であたしは呼ばれた。
教室の喧騒はいっそう酷くなった。
「私も行くよ」
隣の子がそう言って席を立つ。
「お願い」
ふらつきながらも気持ちを奮い立たせ、私達は職員室へと向かった。
結論としては、疑惑はあっさり溶けた。
先生は噂のことが心配で聞いただけだった。
普段から素行の良い私は、あっさり開放された。
帰る際に先生は私を呼び止め
「女子校ってあなたが思っている以上に閉鎖的だと思うわ。だからしばらくは噂くら流れると思うけど、先生は知っているから。だから気にしちゃダメよ」と
はい、そうします。
ふう 最難関を無事突破できた
終わったー
でも終わらなかった。
*
その日以降離れていった人は、殆ど戻っては来なかった。
私から離れて行ったまま。
*
どうして信じてくれないの!
離れる人たちに言い訳する機会も与えられず
そんな気力もなく
時間だけが過ぎていった。
続く
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