第14話 風紀委員と星(4月11日火曜日)
翌日
今日も僕は淡々と挨拶運動をこなしていた。
「おはようございます!」
「おはよー」
よしだいぶ声が通る用になってきた!
「おはようございまーす!」
つい声を張ってしまい、丁度前を通りかかった生徒がびくんとなる。
緩む口元を必死で手で抑えた。
なにこれ楽しすぎる。
「おはようございます!」
でも何事もやりすぎはよろしくない。
僕のこの密かな楽しみは風紀委員の二年生にダメ出しを受けた。
「あれはやめなさい」と厳命されてしまった。
「なぜですか。僕はこれから一体何を楽しみに生きれば」
何を大げさな。先輩は大きくため息をつくと、ポケットから折りたたまれた一枚の用紙を出した。
「なんですこれ」
「いいから見て」
B5サイズの紙にはカラフルな星のイラストが描かれていた。
【天体観測会】
うちの高校の天文部が主催する星空観測会の告知だ。
「うちみたいな田舎の良いところは都心と比べ光害が少ない点よ」
・・・つまり星がよく見えるということですね
「星はすばる。ひこぼし。ゆふづつ。よばひ星、すこしをかし」
「尾だになからましかば,まいて」
「枕草子、清少納言ね 意外だわ。君古典弱いでしょう」
「失礼な先輩ですね、正解だけど。昔人形劇で見たのを覚えていたんです。小学生向けの」
「でも覚えているなんてすごわ」
「でも記憶力は人並以下ですよ」
「あ、強く生きてね」
先輩は残念な子でも見るような目をした。
*
天体観測会では県内各地から10校近く来るらしい。まさにビックイベントだ。
総勢300人!天文部恐るべし!
「ちなみにうちの高校の天文部員は30人よ。あたしもこの数字が多いのかよくわからないけどね。イベントを開催するには彼らだけでは全く人手が足りないわ。だから生徒会と風紀委員が運営をサポートしているの」
そうなんだ。まあ僕はただのクラス委員だけど
*
「興味があったら来てくれない。できれば裏方で」人材不足なら仕方ないです。
「でも星空観察なら夏では?」素人考えでそう言うと彼女は普通そうねと答える。
「例年夏に開催してたんだけど、今年はどうしても駄目なの。なんでも夏に大きな催し物があるらしくて。今なの」
夏・・・イベント・・はっ
「コミケですね!」
「違うよ!なんで天文部が夏コミで新刊出さなくちゃいけないの!売れるわけ無いでしょ!擬人化でもしなければ大赤字よ」
いまさらっと酷いことを
「コスプレか、夏コミと言えばコスだよね。ジャッジメントですの!」
「読者が反応しづらいやめて!あと年がバレるから」
先輩はゼーハーと息をさせている ・・・年か
「あなたと話していると調子狂うわね」
「ありがうございます!」
「違うわよ、褒めてないから。お願いよく聞いて」
先輩は以降一言も話さず何処かへ去っていった。
僕を放置して。
先輩遅刻しないといいけどね
*
教室
「と言う感じで、楽しい時間はあっという間でした」
「何か満足してるようだけど、授業これからだから」
教室に着くとまだ人はまばらだった。
僕は彼女たちなら興味を持つかなな。そう考えて、先程の天体観測の用紙を出そうとしたところ目の前に僕の彼女がいることに気づく。 まあ今更なんだけど
彼女はどこか疲れたように、
僕の机に突っ伏していた。
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