第16話

 翌日。


 昨日に引き続き、俺は朝からダンジョンに潜っていた。


 今日は第6階層へ行く予定だが、そこへ飛べる転移石をまだ持っていない。


 だからまずは第5階層からのスタートだ。


 第5階層へ飛んですぐ、オーク四体と遭遇する。


(エレキネット)


 網のように伸びた電撃が、オークたちを捕らえた。


 そして間髪入れず、俺は追撃を加えようとするが――。


(お?)


 踏み出そうとした瞬間、すべてのオークが倒れた。


 そしてすぐに、オークたちの体が塵になって消えていく。


(魔法だけで倒せたのか)


 ステータスを上げる前は基本的に二体。運が悪いときは一体しか倒せないこともあった。


 だが――。


(魔法攻撃が14上がるだけで、こんなに結果が変わるんだな)


 魔石が一つドロップしたので回収し、すぐにショップで売る。


 オークが四体で40、魔石が一つで15。合計で55P増えて、ダンジョンポイントは59Pになった。


(……剣を変えるか)


 置き場所がない鉄の剣を売り、鋼の剣を購入した。


 これでダンジョンポイントは11。


(今度は魔法なしでいけるか試してみるか)


 以前は魔法なしでオークは倒せなかった。だが今度はどうだろうか。


 俺は再びオークを探すべく歩き出す。


 数分経って、四体のオークを見つけた。


 奇襲することもできたが、俺は奴らの目の前に堂々と姿を現す。


「「「ブヒィ!!」」」


 俺は瞬時に距離を詰めた。


 以前よりもさらに体が軽くなった気がする。


 俺のスピードに反応できないでいるオークに斬撃を浴びせた。もちろん剣はスキルで強化済みだ。


(お……?)


 俺が振るった剣がオークを真っ二つにした。


 剣を新しくしたせいだろうか。まったく抵抗を感じなかった。


 続けて俺は二体目も攻撃する。


 こちらも一撃で真っ二つ。


 オークの棍棒が振るわれる。


 俺はそれを左手の盾で受け止めると、力で無理矢理棍棒を弾き飛ばした。


 そしてがら空きになった胴体に剣を振るう。


 今度は真っ二つにできなかったが、体を深く斬り裂き、一目で致命傷とわかる傷だった。


 そのオークが倒れかかってきたので蹴り飛ばす。


 そして最後のオークが攻撃してきのでそれを盾で受け止め、同じように倒した。


「……勝てたか」


 初めて魔法なしでオークを倒せた。


(着実に強くなっていってるな)


 ステータスが上がっているので当たり前かもしれないが、こうしてモンスターと戦うことでそれをより実感できる。


(この階層にもう用はない。早く下に降りよう)


 俺はオークを倒しつつ、第6階層へ向かう転移魔法陣を探した。


 



 第6階層へ降りた。


 あれから転移魔法陣に辿り着くまでに結構な数のオークと戦ったので、ポイントは311になっている。


(それにしても……また森の中かよ)


 もしかしたらこのダンジョンは、第1階層以外全部同じタイプのフィールドなのかもしれない。


 そう考えてしまうほど、ずっと同じ景色が続いている。


(今度はどんなモンスターが出るんだ……?)


 周囲を警戒しつつ、俺はモンスターを探す。


 すると――。


 少し先の空中に、何かが浮いている。


(あれは……カマイタチか?)


 カマイタチ。それはDランクのモンスターだ。


 見た目は動物のイタチに似ている。ただ両前足の先に鎌がついていて、胴体に竜巻のような風を纏っていた。


(確かこいつは、魔法を使うんだったな)


 思えば魔法を使うモンスターと戦うのは、これが初めてだ。


 心してかからなければ。


(っ!?)


 俺の方に向かって何かが飛んでくる。


 結構なスピードだ。


 俺はその場から離れることで、それを躱す。背後にあった木が倒れた。


 だが俺は気にせず、カマイタチに魔法で反撃する。


(エレキネット)


 しかし届かない。


 エレキネットは攻撃範囲が広く、一度に複数のモンスターを攻撃できる便利な魔法だ。


 ただ、射程があまり長くないという欠点があった。


(なら次は――)


 エレキラインだ。


 こちらは攻撃範囲は狭いが、エレキネットよりも射程は長い。


(届いた!)


 一条の電撃が、カマイタチを直撃する。


 しかしカマイタチは攻撃を受けながらも、俺に魔法を放って反撃してきた。


(今の俺でも一撃では倒せないか。さすがDランクモンスター。オークとは違うな)


 もう避けるのは間に合わない。


 俺は自分に向かってくる攻撃を、盾でガードした。


 甲高い金属音が鳴り響く。


(よし。もう一撃!)


 俺はすぐさまエレキラインで反撃する。


 今度もしっかりと、カマイタチに命中した。


 しかし倒せなかった。


(ああいうモンスターには、ほんとは物理攻撃の方が効くんだろうけどな)


 魔法を使うタイプのモンスターは、魔法攻撃に強いものが多いと言われている。


 だからこいつに対しても、できることなら魔法ではなく剣で攻撃するのが理想なんだろう。


 だが、ああやって空中に浮いていては今の俺ではどうしようもない。


 非効率的だとわかっていても、魔法で戦うしかなかった。


 俺はその場から移動し、カマイタチの魔法から逃れる。


 そしてエレキラインで反撃した。


(よし!)


 三度目の攻撃が命中すると、カマイタチが地面に落下した。


 その小さな体が、塵になって消えていく。


(倒せたか……)


 結構強かったな。


 俺はステータスを起動し、ダンジョンポイントを確認する。


――――――――――――――――――――――――――――――――

村上祐希 レベル:1


魔力   56/87

筋力   47

防御力  9【+43+39】

魔法攻撃 59

魔法防御 8【+15+13】

敏捷   71


武器攻撃力 78


ジョブ:ダンジョン生活者


スキル

ショップ

休息

身体強化Ⅰ

魔導の力Ⅰ

雷魔法Ⅰ

刀剣強化Ⅰ


ダンジョンポイント:391P

――――――――――――――――――――――――――――――――


 さっきが311Pだったから、80P増えている。


 ってことは、一体で80Pも貰えるのか。


 結構多いな。同じDランクのオークは四体で40Pだから、倍の数字だ。


(まあ今の状態ならオークの方が楽に倒せるから、ポイントを稼ぐだけならあっちの方が速いかもしれないけど)


 だがこいつをもっと楽に倒せるようになれば、それは変わってくるだろう。


 そしてこれは俺の単なる予測というか、願望に近いものではあるが、もう少しステータスを上げるとかちょっと工夫すれば、カマイタチもすぐ楽に倒せるようになると思う。


(そうすればポイントをもっと速く、多く稼げるようになるな)


 さっきリニューアルされたショップを見たとき、俺はガッカリした。


 だが、もしかしたらそれは早とちりだったかもしれない。


(むしろ前よりも、ステータスが上がるのが早くなるかも)


 そんな予感がした。

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