第13話

 第5階層へ降りた。


 あれから転移魔法陣に移動するまで、ダンジョンジャガーを四体倒した。


 その結果ダンジョンポイントは299になった。


 フィールドはまた森の中だ。


 しばらく歩いていると、モンスターに遭遇する。


 豚の顔に人型の体――オークだった。


 数は四体で、それぞれ鉄製っぽい棍棒を持っている。


 身長は176センチの俺とほとんど変わらない。


 ただ体の厚みはまるで違った。


 体重は間違いなく2倍――いや、もしかすると3倍ぐらいはあるかもしれない。


 オークは単体の強さだとEランク相当だが、群れで出て来るモンスターなのでDランクに分類される。


 初めてのDランクモンスターとの戦闘。


 Eランクモンスターは余裕で倒せたが、Dランクはどうだろうか。


 俺は左手を前に突き出し、魔法を放った。


(エレキネット)


 今までは魔力を温存するため、魔法の使用は控えてきたがもういいだろう。


 Dランクの敵相手に出し惜しみはできない。


 電撃の網がオークたちを捕らえる。


 四体のオークのうち、一体が倒れた。


 他のオークたちも動きが鈍くなっている。


 俺は距離を詰め、一体のオークに斬りかかった。


(浅いか……!)


 単体のオークなら、強さ的にはダンジョンジャガーとそう違いはないはず。


 ただ体の厚みがある分、防御力は高いのだろう。一撃では仕留められなかった。


(でもその代わり、動きはあいつよりもノロいな)


 一撃で仕留められなかったにもかかわらず、まだこちらに主導権がある。


 向こうの反撃よりも、こちらが次の攻撃を当てる方が速かった。


 二度目の攻撃で、オークが倒れる。


(これで残り二体……!)


 いける。


 そう思った、そのときだった。


「っ!?」


 頭部にとてつもない衝撃を感じた。そして遅れてやって来る痛み。


 気づいたときには、俺は第1階層の安全地帯にいた。


「嘘だろ……? 俺、死んだのか?」


 正直信じられないが、この場所に飛ばされたということはそうなのだろう。


(体はどうなってるんだ?)


 今のところ、どこかが痛いとかそういうことはない。


 頭を触ってみても痛くないし、血もついていない。


 服などを見ても、特に汚れたり破れたりはしていなかった。


 おそらくダンジョン内で死ぬと怪我をすべて治し、汚れなども落とした状態でここに転移する仕組みなのだろう。


 ありがたいことだ。


 しかし――。


「マジか……負けたのか……」


 別に自分が負ける可能性を考えてなかったわけじゃない。


 ただ、ショックは大きかった。


 今までとんとん拍子で来ていたので、これからもそれが続くと心のどこかで思っていたのかもしれない。


(なんで負けたんだろ……)


 まあ、わかってるけど。


 単純に俺の実力が足りなかっただけ。Dランクと戦うにはまだ力不足だったのだ。


(何が足りなかったんだろうな)


 防御力かな。


――――――――――――――――――――――――――――――――

村上祐希 レベル:1


魔力     56/66

筋力     33

防御力    9

魔法攻撃   35

魔法防御   8

敏捷     31


武器攻撃力  35


ジョブ:ダンジョン生活者


スキル

ショップ

休息

身体強化Ⅰ

魔導の力Ⅰ

雷魔法Ⅰ

刀剣強化Ⅰ


ダンジョンポイント:319P

――――――――――――――――――――――――――――――――


 スキルをとっていくつかの項目はステータスが上がったが、防御力と魔法防御は最初からずっとそのままだ。


 チュートリアルダンジョンでは死ぬことはないので、防御力や魔法防御の項目はあまり重視していなかった。


(もしもっと防御力が高かったら、敵の攻撃が効かない――とまではいかなくても、耐えて反撃ぐらいはできたんじゃないか?)


 防御力を上げる方法としては、強化水を買うというものがある。


 あとはステータスには反映されないが、防具を買うこと。


(ダンジョンポイントを節約したいなら、防具の方だよな)


 強化水を使うなら、20Pにつき防御力が2上がる。


 今のダンジョンポイントは319だから、使える分をすべて使えば、防御力は30上がって39になるな。


(やっぱりどう考えても、防具の方がいいよな)


――――――――――――――――――――――――――――――――

購入可能な防具一覧

盾(鉄製)   4P

胸当て(鉄製) 5P

※ショップでの累計購入額が大きくなると、購入可能な武器も増えます

――――――――――――――――――――――――――――――――


 それぞれの詳細はこんな感じだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――

盾(鉄製)


防御力  39

魔法防御 13


特殊効果

なし

――――――――――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――――――――――

胸当て(鉄製)


防御力  43

魔法防御 15


特殊効果

なし

――――――――――――――――――――――――――――――――


 ステータスを上げるみたいに、全身はカバーできないけど……。


 それでもたった9Pで済むのはありがたい。


 そして残ったポイントはすべて、敏捷につぎ込む。


(オークの動きはそんなに速くないからな。もっと敏捷を上げれば、ひょっとすると攻撃を全部躱せるかもしれない)


 それができなければ、盾を使って防げばいい。


 なんだかいけそうな気がしてきたぞ。


(いや、待てよ。魔法攻撃も少し上げておくか。そうすればオークの動きをもっと遅くできるかもしれない)


 まず俺は、鉄製の盾と胸当てを購入した。


 これで残り310P。


 そしてそのうちの100Pを魔法攻撃に使って10上げる。


 200Pは敏捷に使って20アップ。


「ふぅ……」


 強化水を飲んで一息つく。


 合計で15個も買ってしまったから、量はわからないが15個水が出て来るものだと思っていた。


 だが出てきたのは80mlぐらいの、小さな容器に入った水が2つ。


 おかげでお腹がタプタプにならずに済んだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――

村上祐希 レベル:1


魔力     56/66

筋力     33

防御力    9【+43+39】

魔法攻撃   45

魔法防御   8【+15+13】

敏捷     51


武器攻撃力  35


ジョブ:ダンジョン生活者


スキル

ショップ

休息

身体強化Ⅰ

魔導の力Ⅰ

雷魔法Ⅰ

刀剣強化Ⅰ


ダンジョンポイント:10P

――――――――――――――――――――――――――――――――


 防具を装備すると、それもステータスに反映されるみたいだな。


 ……よし。これでもう一度第5階層に挑戦してみよう。


 もしダメだったら、そのときは第4階層でまたダンジョンポイントを貯めればいい。


(ああ、でも第5階層の転移石はまだないからまた第4階層からだな)


 俺は転移魔法陣を使って、第4階層へ飛んだ。





 第4階層でダンジョンジャガーを狩りつつ、転移魔法陣を使って第5階層へ降りる。


 その結果ダンジョンポイントが66まで増えたので、60Pを敏捷の強化水Ⅰに使った。


 その結果敏捷は57に。


 第5階層に来て数分探すと、オークを四体発見する。


 向こうはこちらの存在に気づいていない。


(ここは奇襲をかけるか……?)


 一瞬そんな考えが浮かんだが、やめた。


 ステータスを上げて、防具を装備した。それでこいつらに通用するかどうか。


 今俺が知りたいのは、そこだ。


 仮に奇襲で勝ったとしても意味はない。


(毎回奇襲ができるならいいけど、そうじゃないしな)


 俺は隠れるのをやめ、わざと音を立てながら奴らの前に姿を現した。


「ブヒィ!!」


 俺に気がついて、まるでギャグのような声で鳴くオークども。


 こんな奴らに負けたかと思うと、腹が立ってくるな。


 今度こそ絶対に勝ってやる。


(エレキネット)


 縦横無尽に広がる電撃の網が、オークたちを襲う。


(どうだ……?)


 魔法攻撃を上げたおかげかどうかはわからないが、二体のオークが倒れた。


 倒れなかったオークたちも膝をつき、立ち上がれないでいる。


 それがあとどれぐらい続くかはわからないが、今のうちに――。


 俺は地面を蹴ると、膝をつくオークに肉薄する。


 体が軽い。まるで風になったかのようだ。


(喰らえ!)


 俺は剣でオークの首を斬りつけた。


 急所に当たったのがよかったのか、一撃で仕留めることができた。


 そして最後の一体。


 そいつの方へ振り向くと、ちょうど立ち上がってこちらに近づこうとしているところだった。


 距離を詰めてきたそのオークの攻撃を盾で防ぐ。


 見た目的にパワーは相当なものじゃないかと思っていたが、そうでもなかった。


 今の俺でも力負けすることなく、しっかりと棍棒を受け止めることができた。


 棍棒を盾で弾き、隙ができたところで胸元を斬りつける。


 やはり一撃で仕留められないか。


 だが一体なら、こいつはまったく脅威じゃない。


 俺は再びオークの攻撃を躱すと、素早く奴の背後に回り込む。そしてその無防備な背中に斬撃を浴びせた。


 オークが膝をつく。


(これで終わりだ!)


 背中にもう一撃。


 オークが倒れ伏した。


 そして、しばらくするとその体は塵になって消えていく。


「よし! 勝った!」


 これは嬉しい。


 正直ちょっとステータスを上げたぐらいじゃ、勝てないんじゃないかと思ってたからな。


(ダンジョンポイントはどれぐらい増えてるかな?)


 確認してみると、46Pになっていた。40増えてるな。


(ってことは、やっぱり一体につき10Pか)


 倒すのが難しい分、得られるポイントもまた多い。そういうことだろう。


(よし。この調子でどんどん狩るぞ)


 俺はオークを探すべく、歩き出した。


 結果として、そのあとオークを29体倒した。


 魔法で先手をとったときは、必ず勝つことができた。


 魔力が切れてからも戦ってみたが、負けて第1階層へ戻されてしまった。四体のうち三体まではなんとか倒せたんだけどな。


 第1階層に戻ったあとは、時間がまだあったので第4階層でダンジョンジャガーと戦った。


 ダンジョンジャガーは17体倒した。


 最終的にダンジョンポイントを455まで増やして、俺はダンジョンから出た。




――――――――――――――――――――――――――――――――

80mlというのは、ヤ〇ルト400に入ってるのと同じぐらいの量ですね。

わかりにくかったらすみません。


【追記】

防具の説明に魔法防御の項目を追加しました。

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