第10話


 これはかなりおいしい、と思っていいのか?


 ゴブリンは一体ならホーンラビットより厄介とはいえ、大して強くはない。


 ただ、基本的に群れで出て来るモンスターだからな。危険度はホーンラビットとは比べ物にならない。


 そう考えると、破格に思える一体につき2Pという数字も妥当に思えてくる。


 って、どうでもいいか。今はとにかく、どんどん狩ってダンジョンポイントを稼ぐべきだ。


 俺はゴブリンを探すべく、歩きだしたのだった。


 




(お、いたいた……)


 前方にゴブリンの姿を発見した。


 俺は木の陰に隠れているから、向こうからこちらの姿は見えない。


 数は四匹。


 俺は奴らに見つからないよう身を隠しながら、ゆっくりと背後に回り込んだ。


(今だ!)


 どのゴブリンもこちらを見ていないタイミングを見計らって突撃する。


 ここまできたらもう見つからないようにとか、そういうことは考えない。音を立てても気にしない。


 とにかく少しでも早く距離を詰められるよう、全力を尽くす。


 ゴブリンどもは途中で気づいてこちらを振り向くが、もう遅い。


 俺は右から二番目のゴブリンに狙いを定めた。


 そのゴブリンの頭をバットで殴りつける。そしてその隣のゴブリンは、蹴り飛ばして仲間から引き離した。


 これで死んではないだろうが、それでいい。数の利を活かして同時に攻められるのが一番厄介だからな。


 左から二番目のゴブリンが木の棒で俺を攻撃してくるが、躱す。


 初めてゴブリンと戦ったときは避ける自信がなかった。だから距離をとったわけだが、今は違う。


 ゴブリンの動きが鈍いのか。それともステータスが上がった影響なのか(敏捷が上がると動体視力がよくなると言われている)。


 わからないが、集中してよく見ればゴブリンの攻撃を躱すのなんて簡単なことだ。そう少し前に俺は気づいた。


 俺のバットがゴブリンの腹を捉える。

 

 左端のゴブリンを巻き込んで、そのゴブリンは吹き飛んだ。


 と、先ほど蹴り飛ばしたゴブリンが俺に向かってくる。


 振るわれた木の棒を躱し、隙ができたところで顔面をバットで粉砕する。


 最後に一匹が立ち上がろうとしていたので、すぐに距離を詰めこちらも顔面にバットを叩き込んでおいた。


 倒れたゴブリンたちの体が塵になって消えていく。


「ゴブリンと戦うのもだいぶ慣れてきたな」


 もうこいつらを倒しても、心が痛むことはない。


 最初は人型のモンスターだったから、倒したあとは手が震えて心臓がバクバクしていた。


 だが今はただ汚い、気持ち悪い。そんな感情が湧くだけだ。

 

 俺はステータスを出現させる。


――――――――――――――――――――――――――――――――

村上祐希 レベル:1


魔力     26/26

筋力     33

防御力    9

魔法攻撃   10

魔法防御   8

敏捷     31


武器攻撃力  24


ジョブ:ダンジョン生活者


スキル

ショップ

休息

身体強化Ⅰ


ダンジョンポイント:93P

――――――――――――――――――――――――――――――――


 最初にゴブリンを三体倒したとき13Pだったから、あれから80P増えている。


 ゴブリンは一体につき2Pなので、80P得るためには40体倒す必要がある。


 つまり俺はゴブリンを合計で43体も倒したわけだな。


(そんだけ倒したら、さすに慣れるか)


 とはいえ、俺はだいぶ早い方だと思う。


 人によっては、魔物を殺すのに抵抗を感じなくなるまで何週間もかかったっていう話もあるからな。


(そろそろショップでスキルを買うか)


 前から魔法を使ってみたいって、ずっと思ってたんだよな。


 もちろん、そんな理由だけで買うわけじゃないが。


 ちゃんとダンジョン攻略に活かすためだ。


 俺はショップを起動する。


――――――――――――――――――――――――――――――――

購入可能なスキル一覧

刀剣強化Ⅰ 30P

防具強化Ⅰ 30P

挑発Ⅰ   30P

障壁魔法Ⅰ 30P

魔導の力Ⅰ 30P

水魔法Ⅰ  30P

火魔法Ⅰ  30P

風魔法Ⅰ  30P

土魔法Ⅰ  30P

雷魔法Ⅰ  30P

治癒魔法Ⅰ 30P

※ショップでの累計購入額が大きくなると、購入可能なスキルも増えます

※スキルを他者に譲渡することはできません

――――――――――――――――――――――――――――――――


 買うのは”魔導の力Ⅰ”と”雷魔法Ⅰ”にしておくか。


 ”魔導の力Ⅰ”を選んだのは、魔力と魔法攻撃のステータスを底上げするためだ。


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>魔導の力Ⅰ

魔力を40、魔法攻撃を25上昇させる。

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 このスキルは”魔導士” ”僧侶”のジョブ持ちが手に入れられるスキルだ。


 13歳の誕生日にこの2つのうちのどちらかに目覚めると、”魔導の力Ⅰ”が自動的についてくる。


 最初からこんなスキルを持っているわけだから、ジョブ持ちがギルドに優遇されるのも頷けるというもの。


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>雷魔法Ⅰ

以下の魔法が使用可能になる。

【エレキライン】

【エレキネット】

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 それぞれの説明はこうだ。


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>エレキライン

一条の電撃を放つ。

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>エレキネット

網目状の電撃を放つ。

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 俺が”雷魔法Ⅰ”を選んだのは別にカッコいいからとかそういうわけではなく、敵が弱いうちは使い勝手のいい魔法だからだ。


 雷魔法は、敵に攻撃が届くまでが速い。だから命中率が高く、他の魔法よりも敵に当たりやすいのだ。


(まあ、他の魔法でも命中率を上げる方法はあるけど……あれは魔力の消費が増えるからなあ。魔力の少ない今の俺には、ちょっと厳しい)


 そんなわけで、俺は”雷魔法Ⅰ”を購入する。


 そして手に入れた魔法を早速試すべく、ゴブリンを探した。


「……お」


 5分ほど歩いて、俺はゴブリンと遭遇する。


 前方の茂みが揺れ、三体のゴブリンが現れた。


「「「ギャギャッ!!!」」」


 ゴブリンどもが俺に向かってくる。


(エレキネット)


 俺は前方に手をかざし、魔法を放った。


 電撃の網が、ゴブリンたちを捕らえる。


(……倒した、のか?)


 電撃を喰らって倒れ、そのまま動かないゴブリンたち。


 しばらくすると、それが塵になって消えていく。


 どうやら倒せたようだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――

村上祐希 レベル:1


魔力     59/66

筋力     33

防御力    9

魔法攻撃   35

魔法防御   8

敏捷     31


武器攻撃力  24


ジョブ:ダンジョン生活者


スキル

ショップ

休息

身体強化Ⅰ

魔導の力Ⅰ

雷魔法Ⅰ


ダンジョンポイント:39P

――――――――――――――――――――――――――――――――


 魔力の消費は7か。


 ってことは、あの魔法はあと8回使えるわけか。

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