第6話



「……ふぅ」


 やはりなかなか心に来るものがあるな。


 だけど考えないようにしないと。


(そういえば、ダンジョンポイントはどうなってるかな?)


 俺はステータスを出現させる。


――――――――――――――――――――――――――――――――

村上祐希 レベル:1


魔力     26/26

筋力     13

防御力    9

魔法攻撃   10

魔法防御   8

敏捷     11


武器攻撃力  24


ジョブ:ダンジョン生活者


スキル

ショップ

休息


ダンジョンポイント:11P

――――――――――――――――――――――――――――――――


 周囲を警戒するため、必要な箇所を見てすぐにステータスを消した。


(さっきまでは10Pだったのに、11Pになってるな)


 今までに俺が倒したモンスターは、スライムが105匹にホーンラビットが一匹。


 スライムを10匹倒して初めて1Pを手に入れたわけだから、スライムは10匹で1P。


 つまり1匹あたりは0.1P。


 ってことは105匹で10.5Pになるはずなんだけど、そのときは10Pとしか表示されてなかったんだよな。


(つまり小数点以下は表示されないってことか)


 で、そこからホーンラビットを一匹倒して11Pになったってことは――。


(ホーンラビットは一匹につき0.5P貰えるんだな)


 やっぱりスライムの効率の悪さは相当なものだな。


 さすがに最弱のモンスターと言われているだけはある。


 モンスターの強さはランクで表され、下からF、E、D、C、B、A、A+、Sとなっている。


 スライムは当然Fランクであり、さらにそのFランクの中でも最も弱いと言われているモンスターだった。


 ちなみにホーンラビットもFランクだ。


「さて。さっさと続きいきますか」


 俺はホーンラビットを探して歩き回る。


 2~3分探して、二匹のホーンラビットに遭遇した。


 向こうは俺に気づくなり、すぐに襲いかかってくる。


(見た目に似合わず、ほんと好戦的だな。まあ角はついてるけれども)


 一匹目がジャンプしてきたのでそれを躱す。


 続いて突進してきた二匹目は、バットで殴打した。


 急いで振り返ると、背後でホーンラビットがジャンプしようとしていた。


 バットを構える。


 角を突き出しながらジャンプしてきたそのホーンラビットを、バットで殴りつけた。


 俺の前後で、二匹のホーンラビットが塵になって消えていく。


 どうやら今回も一撃で仕留められたらしい。


「ん……?」


 ホーンラビットの死体が消えた場所に、何か落ちていた。


「これは……」


 ”2”という数字が刻まれた、白い石。


(転移石か)


 転移石は、ダンジョンの第1階層にある安全地帯で使える。


 あそこに一つ青い魔法陣があるのだが、その中に入って石に魔力を込めると、刻まれた数字の階層に転移できるのだ。


 入手条件は第1階層以外の場所でモンスターを倒すこと。約一割の確率でドロップすると言われている。


 つまり第2階層でモンスターを倒すと、10匹倒せば一つの転移石が手に入るってことだな。あくまで確率的には、だけど。


 実際こうして三匹目でドロップすることもあるし、10匹以上倒してもなかなかドロップしない、なんてこともあるかもしれない。


(まあなんにせよ、これを手に入れられたのはよかった。これで次来るときは、第1階層を経由しなくて済む)


 安全地帯から第2階層へ降りる転移魔法陣までは、結構遠いからな。


 あれだけでだいぶ時間を無駄にしてしまう。


(時間の無駄といえば、脱出石も欲しいな。あれがないと、ダンジョンから出るにはまた第1層まで戻らなきゃいけなくなる)


 ダンジョンの各階層には、第1層を除いて、一つ上の階層に戻るための転移魔法陣がある。色は緑色。


 だが、ハンターはこの魔法陣をあまり使わない。


 その理由は、単純にこの魔法陣を使って戻ると時間がかかりすぎるからだ。


 その代わりに、ハンターは脱出石というアイテムを使用する。


 脱出石とはその名の通り、使えば第1階層の安全地帯まで転移できるアイテムのことだ。


 これも転移石と同じように、第1階層以外の場所でモンスターを倒すと約一割の確率でドロップすると言われている。


(少しでも長くここにいるために、早く脱出石を手に入れないとな)


 結局、再びホーンラビットを倒し始めてから四匹目――通算七匹目で、俺は脱出石を入手した。


 時間に余裕ができた俺は、ホーンラビットを狩りまくった。


 最終的にホーンラビットを38匹倒して、俺はダンジョンを出た。


 そしてポイントが30貯まったので、スキル”身体強化Ⅰ”を購入した。


――――――――――――――――――――――――――――――――

>身体強化Ⅰ 

筋力と敏捷をそれぞれ20上昇させる。

――――――――――――――――――――――――――――――――


 本当はスキルの効果を実戦で試したかったのだが、時間が遅かったので諦めた。


 明日は学校もあるし、よりによって明日は日直だから、早めに登校しなきゃいけないんだよな。

 

(もう11時か)


 スキルをゲットするためギリギリまで粘っていたら、こんな時間になってしまった。


 早く寝よう。


 そう考え、俺が電気を消そうとしたそのときだった。


 インターホンが鳴った。


(……誰かの嫌がらせか?)


 滅多にないことだが、学校以外でも俺は嫌がらせを受けることがあった。


 その一つが、夜遅い時間に行われるピンポンダッシュだ。


 いつもはそれがあると耳栓をしてさっさと寝るのだが、どうにも今日は様子が違う感じがする。


 というのも、いつもならしつこく鳴らされるインターホンが、今日は一回で終わっているのだ。


 興味を持った俺は、誰が鳴らしたのかモニターで確認してみることにする。


「っ!?」


 そこに映っていた人物を見て、俺は息を呑んだ。


 女の子が一人、立っていた。

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