第22話 残り香と、感触と

「………………………………………………なんで?」


首筋に残る、委員長に触れられた感触。

抱き寄せられた時に触れた、胸の柔らかさ。

唇に残る、委員長の残り香。

柔らかい唇に触れた瞬間の、戸惑いと多幸感。

不意打ちだっただけに、一瞬の事だけど、どうしても桐山と比べてしまう。

感触の記憶が薄れないうちに、比べてみたくなって、眠ったままの桐山に唇を重ねてみる。


柔らかさと、ぬめり具合と、女の子特有の良い香りと。

それぞれに違って、個性なのだろうか。

軽く口を開けていたので、舌を吸い出して絡めながら刺激する。

無意識のうちに桐山のブラウスのボタンを一つ外してブラをずらしながら手を入れ、胸に直に触れて感触を改めて確かめる。

反応が薄いのをいいことに、スカートの中に指を差し入れショーツの隙間から秘部の入口をなぞる。

少し力を入れた所で、ビクッと身体を震わせて薄目を開けた桐山に、焦って離れてブラウスのボタンを元に戻し毛布をかけ直してやる。

直接触れた指先に微かについた桐山の体液の感触に、思わず欲情してしまった。

この指の匂いを嗅いだりを口に含んだりしたら、変態だよなと思ってかろうじて堪えた。


委員長も、お願いすれば、同じ様に触らせて貰えるのだろうか?

あの時、離さずに抱き寄せれば、桐山と同じ様に、続けられたのだろうか。

桐山にした以上の事も、お願いすれば出来たのだろうか。

比べてみたい欲望が、湧き上がってくる。

寝息をたてて静かに眠る桐山に、もう一度だけ唇を重ねてから離れて授業終了の鐘が鳴るまで寝顔を見つめ続けた。


鐘が鳴り響き、廊下が騒がしくなると同時に委員長が扉を開けて入ってきた。


「どう?起きた?」


「この通りだ。」


「あらまあ、あの後、何もしてないでしょうね?」


「いや、比べてた。」


「はあ?何を比べたのよ!」


「委員長に抱き寄せられた時に当った胸の柔らかさとか、唇の感触とか、女の子特有の良い香りとか。」


「………………………………………えっ?」


「なあ、委員長、お願いだから、比べさせてくれないか?」


「………………………………………ふぇえ?それって、もしかして、私ともう一度抱き合ってキスして、それ以上な事もしてみたいって、事かな?」


「ああ、そうだ。我慢出来そうにない。」


「………………………………………はぁ、わかったわよ。私が火を付けたようなものよね。山田がこんなに大胆で積極的だなんて思わなかったわ。

桐山さんを襲われでもしたら困るからね。私も突然襲われるくらいなら心構え位はしたいしね。

今は無理だから後で連絡するわね。ライン交換しよ?」


「ああ、頼む。」


スマホを起動して、コードを読み取って登録を終えたら、すかさずスタンプが送られてきた。


「………………………………………ハートマーク三つか。」


「そうよ。今晩ね。期待して連絡待っててね。」


返事をする代わりに狼のスタンプを送ると、委員長は苦笑いしながら保健室を出ていった。


三つのハートマークに何か意味があるのだろうかと思いながら、桐山が起きるのを待ち続けた。

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