第15話 計算外

「あ〜あ、まさかお前から寝起きにディープキスされるとは思わなかったぞ?」


「ウ〜ッ……………………………わんっ?」


「……………………………誤魔化すなよ?」


「っ、誤魔化したくもなるわよね?」


「……………………………お前が言うか?」


「……………………………………ゴメン?」


納品と引き継ぎが終わって、桐山のお母様から、


「娘が控室にいるから、声かけていってくれるかな?」


と言われて、断る理由が見つからなかったから文字通り声掛けしたら、この『状況』!

オマケに、フラフラと寝ぼけ眼な桐山の様子を見たお母様が、


「あっくん、ルーちゃんと一緒に登校してくれないかな?『責任』取って。」


何の責任かは良くわからなかったけど、フラフラしている桐山を放っておけなくて、今、何故か『手を繋いで』歩いている。


「………………………………おい、桐山?」


「ん、何かな?」


「お前、まだ、寝てるだろう!」


「………………………………何でそう思うのかな?」


トボけた事を言い出したので、繋がれた俺の右手と桐山の左手を持ち上げて、コイツの目の前にかざしてみた。

ご丁寧に、指を絡めた、いわゆる『恋人繋ぎ』だしな。


しばらく繋がれた手を見つめていた桐山は、


「うわっ、えっ、ななななな、ナンデっ?」


「俺が聞きたいわっ!お前が手を伸ばしてきて、いつの間にかこの状態だぞ。」


「どどどどど、どうしてっ!誰かに見られたらっ?」


「もう遅いぞ?クラスメイトに何人も見られた。今頃は噂されてるだろうな。」


「あばばばばっ、ふえっ?」


面白いやつだな。


「まあ、俺は儲けたけどな?『ディープキス』!良かったぞ?」


「何よっ、それじゃ私が損したみたいに聞こえるじゃないのよっ!」


少しだけ、腹が立ったので、近くの電柱に桐山を押し付けて、手を繋いだままアゴを左手で持ち上げて、いわゆる『壁ドン』状態にして無理矢理唇を奪った。


「おい、口開けて、舌出して。」


素直に舌を出してきたので、シッカリとディープキスを堪能してから唇を離した。


「これで、おあいこにしてやるよ!」


呆然とする桐山の手を引いて、再び歩き始める。


「……………………………………なんで?」


なんでだろう?俺にもわからないけど。


「嫌だったか?」


「………………………………そんな事、無いけど。」


学校に着く頃には、全部見ていたクラスメイトから全校に大ニュースとして伝わってしまったのは計算外だったけど。

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