第8話 転職『ジョブチェンジ』の勧め

営業終了時間は、午後5時。

売り切れたら閉店する事にはなっているものの、日持ちのする菓子や委託で置かせてもらっている煎餅などもあるから余程の事が無い限り閉めることは無いけど。


去年から、週一で定休日を設けるようになった。

というよりは、僕が提案して採用された。

色々と試算した結果、売上が減ったとしても利益は減らなかったから提案してみたんだけど。

提案した一番の理由は、職人の勤務シフトを組むのが困難になってきたから。

働き方改革とでも言うのだろうか?職人を目指す新人の確保には絶対に必要だと強く主張した。

勿論、盆正月とお彼岸等の稼ぎ時は開けるけど、その分連休取って店閉めるるように改善してある。


結果、売上は減らなかった。

粗利は微増。でも、利益は三倍増して父と兄は何故か月次決算書を見て頭を抱えていたけど。

数字の意味が、理解できなかったらしい。

月に四〜五日店を閉めれば、固定費は変わらないけど諸経費が二割近く減ることがどうしても理解の範囲外だったようだ。

材料のロスが減ったのも大きかったし。

直近では、委託販売の分が全額近く利益上乗せされて業績好調。

外部への委託販売も職人を中心に反対意見が大多数だったけど、父の後押しもあり押し切って実施した。

外部からの委託受入品も最初は猛反発くらったけど、ついで買いしてくれる常連様に好評だったので次第に受け入れられたけど。廃棄リスクが無い分、粗利が全額利益になったしね。


職人と従業員は、定休日実施に不安を抱えていた。漠然とした不安だけど。

それを払拭する為に、目標粗利を上回ったら全員に特別ボーナスをお彼岸の時期に支給する事も提案して採用され実施された。


交代制で完全週休二日しても月収は変わらず、むしろ特別ボーナス2回の分だけ年収増。

同業からの転職も含めて新人の採用事情が大幅に改善して、職場環境が更に良くなった。





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桐山を泣かせてしまって、逃げるように立ち去って、全力疾走で帰り着き、ふらつきながら片付けを始めようとしていると、兄から呼ばれた。


「明慶、社長が呼んでるぞ。今日はもう上がって行ってこい。」


父から呼ばれるなんて、嫌〜な予感しかしないんだけど。

先輩達に断りを入れて、手だけ洗って社長室と言う名の倉庫のような部屋へ。

ドアなんか無いので、「入ります」とだけ声掛けして入っていく。


「おう、来たな!早速だか話がある。明慶、お前、職人になるの辞めて経営に参加しないか?」

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