第5話 挨拶かと思ったのに

「…………………………………ねえっ!」


「……………………………………………」


「ねえってばっ!」


「っ?てっえなっ!危ねえだろっ、もう少しで落とすところだぞっ?」


「あっ、ごめん、つい…………………」


つい、後ろから蹴ってしまった。

だって、一人でサッサと歩いてくんだもん!


「お届け、何処かわかってるのかな?」


「裏の鈴木さんてことは、幸男じいさんと雪ばあさんのとこだろ?」


「………………………そうだけど、なんで知ってるのよ?」


「ご贔屓にしてもらってるからな。足を悪くして、うちまで来られなくなって相談受けてたんだ。配達もしてたんだけど、やっぱり自分で品物は選びたいと言われてな?新作とかもあるしな。」


「……………………まさか、それでうちに委託販売を?」


「それだけじゃ無いけどな。続きを聞きたいか?」


「……………………アンタには興味無いけど、ここまで聞いたらチョットだけ続きが気になるじゃないのよっ!」


「じゃ、続きは後でな。」


両手が塞がってる山田の代わりに呼び鈴を鳴らして、


「こんにちは〜、桐山で〜す、お届けに上がりました〜。」


「は〜い、開いてるわよ〜、どうぞ〜!」


迎え入れてくれた雪さんにご挨拶を。


「お久しぶりです。お元気でしたか?」


「ええ、あら〜、今日はあっくんとご一緒なの?」


「雪さん、あっくんはやめてくださいますか?」


「あら、私達にとってはいつまでもあっくんはあっくんよ。ルーちゃんもね?」


「雪さん、私もルーちゃんはやめてほしいですっ!」


「いいじやないのよ〜、ところで二人で来たってことは、結婚報告の挨拶かしら?」


「違いますっ!」

「違うからっ!」



※※※※※※※※※※



何年ぶりかしらね?

二人揃って来るなんて。

やっと決まって挨拶かと思って喜んだのに、残念だわ。

もう少し長生きしないといけないわね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る