第2話 下働きの下っ端
和菓子職人の朝は早い。下働きの下っ端ともなれば、尚更だろう。
3時起床。作業場を開け、掃除をし、湯を沸かし、昨日のうちに練り上げられた餡を大きなタッパーに移し今日の作業人数分並べていく。
夜のうちに運び入れられた材料を伝票通りにあるか確認出来てから作業手順に合わせて並べていくんだが、加工は厳禁と言われてしまっているから、悲しい。
ここまで終わる頃には職人達が出勤してくるので賄の朝食の準備に取り掛かる。
ここまでで、賄の準備入れて約3時間ほど。
朝食準備は、切る、焼く、温めるのみと厳命されている。僕が味付けや加工をすると、見た目とは全く違う物が出来上がってしまうからと。
直近では、具が玉葱の味噌汁をつくったら、
『ん〜、オニオングラタンスープ味の味噌汁か〜?斬新だな〜!』
と言われるほど酷かったりする。
ある意味、別の才能があるかも知れない。
レシピ、全部残しておこうかな?
賄の準備が終わる頃には配達品が出来上がっているので、中身が伝票通りかをを確認して直ぐに持ち出せるようにしておく。
一人でサッサと朝食を済ませたら、制服に着替えて配達品を抱えて、
「行ってきま〜す!」
と皆の返事も聞かずに飛び出していくのが日課になっている。
まあ、雨の日だけは配達は免除されているけど。
配達先は、商店街の食品店と街外れの洋菓子屋さん。よろずやさんとケーキ屋さんとも言う。
運ぶのはパッケージ出来て持ち運んでも型崩れしたりしない商品のみになるけど。
両店とも客層が被るので僕の提案で委託で置いてもらったら、必ず売り切れるほど評判は良かったりする。
その分店の売上が減るかと思っていたら、そんな事は全く無かったので正直ホッとしている。
もし減ったらやるだけ損じゃないかと文句言われたかもだし。
食品店に卸して、洋菓子屋さんに向かう。卸売を始めるまで知らなかったんだけど、同級生、それも隣の席のギャルがその洋菓子屋さんの末娘だったんだ。
世間話程度しか会話は無いし、正直ギャルは苦手なのでお互いお店の話はしたことが全く無いし。
でも今日だけはいつもと違って、まるで待ち構えていたように勢いよく話しかけられてしまって、文字通り捕まってしまったんだ。
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