急募?和菓子職人の嫁!『リアル』と『ネット』で始めるイチャラブ新婚生活

じん いちろう

第1話 プロローグ

「ん〜、微妙?」


「そうだな、大分良くはなっているんだが。」


今日は月に一度の『品質試験』の日。

これに合格しないと、店頭に商品として並べさせてもらえない。

職人になると決意してから、もう何度目の試験だろうか?


「見た目は良いんだよな、見た目だけは。」


「ん〜、何で同じ材料でこうも違いが出るんですかねえ?」


父と兄からのダメ出しに、心が折れる。


「……………………これを使って仕上げてみろ。」


父から渡された仕掛り中の材料を使って、試験品目と同じ物を仕上げ始める。

指先で形を整え、ヘラで細工をして再び二人の前の盆の上に、そっと置いた。

兄が手にとって二つに割って片割れを父に渡してポンと口に放り込み、二人共目を見張りながら唸り始めた。


「……………………お前にこの味が出せればなあ。次回に期待しているぞ。」


顔を見合わせながら作業場を立ち去る二人を見送りながら、朝早くから頑張って仕上げた材料をひとつまみ取って口に放り込んでみた。


………………………………ゲロマズだった。


試しに試験と同じヒヨコに細工した菓子を造って味見してみると、まあ食べられなくはないお味だったのが不思議ではある。

料理もデザートも味覚と視覚で味わうとは良く言われるけど、こんな体感の仕方はあまりしたくはないぞ。


あと1年余りで高校卒業。和菓子職人になると表明はしたものの、後継ぎは兄に決まり、支店を出す計画は有るが他店で修行中の姉婿に任せることが内定している。

せめて『品質試験』に合格してからでないと他店での修業は認められないと父から言い渡されてしまっている以上は、下働きを続けるか諦めるかの二択に為りつつある。


「はぁ〜、なんとかしないとな〜?」


諦める気は全く無いものの、解決策が全く見当たらないのが悲しい。



※※※※※※※※※※



「ん〜、微妙?」


「そうね、大分良くはなってはいるのよね。」


今日は月に一度の『試作発表』の日。

これに合格しないと、店頭に商品として並べさせてもらえない。

パティシエになると決意してから、もう何度目の試作だろうか?


「味は良いのよね、味だけは。」


「ん〜、何で同じ材料と同じ仕上げでこうも違いが出るのかしら?」


母と姉からのダメ出しに、心が折れる。


「……………………これを使って仕上げてみて。」


母が姉に、私が作った材料を使って仕上げるように指示出しして、姉が手早く仕上げていき完成品を母の前に差し出した。


一匙ずつ掬って口にした二人は、目を見張りながら唸り始めた。


もう一つのタッパーの中身を掬い味見をした姉が、


「ん〜、なんでアンコなのかな?美味しいけど。」


「………………………………ティラミスです。」


悲しくて、小声で答えた私に母は、


「………………………………見かけがアンコに見えるとその味になってしまうのね?あなたにこの造形が出来ればねえ?次回に期待してるわね。」


顔を見合わせながら作業場を立ち去る二人を見送りながら、姉が仕上げたケーキを一匙口に入れて涙が溢れそうになった。

仕上がりの造形で、ここまで味に差が出るなんて。


あと1年余りで高校卒業。パティシエになると表明はしたものの、後継ぎは姉に決まり、支店を出す計画は有るが他店で修行中の兄嫁に任せることが内定している。

せめて『試作発表』に合格してからでないと他店での修業は認められないと母から言い渡されてしまっている以上は、下働きを続けるか諦めるかの二択に為りつつある。


「はぁ〜、なんとかしないとな〜?」


諦める気は全く無いものの、解決策が全く見当たらないのが悲しい。

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