第25話 レイモンド落ち込む――――そりゃぁねぇ……
慌てて魔法陣を作動させ、白い塔へ戻ってきたエドワード。
突然戻されたクリスタとアレクサンダーは、呆気にとられた様子で佇んでいる。一方レイモンドは一生懸命怒りを収めようとしていて、ルーファスは……相変わらず無表情だ。
「話をするより、実際会ったほうが嘘ではないと分かると思ったのです。私としては、龍同士の争いはもう懲り懲りなので、諦めて頂けると嬉しいのですが……」
エドワードがレイモンドに話しかける。
このまま復讐などは考えず、大人しくしてほしいと思いながらも、そう簡単には行かないかなぁとも考える。
(復讐の為に、自分が生きていた時代からタイムリープまでして来たのだから、そんな簡単に、はいそうですか、とはなりませんよねぇ……。しかし、そうなってもらわないと困るんですよね。また龍同士の戦いなんて起こってしまったら、次は本当に、この国が崩壊してしまうかもしれません……)
「うん……そうだね……。猫を倒しても何にもならないもんね。しかもあんなの弱体化しすぎでしょ……はぁ」
レイモンドの感情が、怒りから呆れ&諦めに変わったので、とりあえず様子を見ることにしようと決めたエドワード。
「とりあえず落ち着いたら、今後についてお話しましょうか?」
「そうだね……はぁ……」
レイモンドは力なく返事をした。
エドワードは、2人が黒龍に対して復讐心が無ければ、ルーファスが火龍になる事に問題は無いと思っている。というか、火龍が仮の身体になって数百年、赤の珠も徐々に作られなくなってしまい、赤の珠使いもほぼ居なくなってきた現状、バランスを整える為にも、ルーファスには火龍になってもらったほうが好都合なのだった。
「えっと……こんな事を言うのは不謹慎なのかもしれないですが、私は黒龍が猫ちゃんで良かったです! 何故なら、ルーファスさんとレイモンドさんと、仲良くなることができるからです!」
クリスタはレイモンドを励まそうとしたのか、自分の欲望に忠実なのかは分からないが、そんな事を言い出した。
「僕はついででしょ? あーっ、もうっ、はぁ……ちょっと1人になりたいな、この間のルーファスの気持ちが何となく分かったよ……ルーファスごめんね、ちょっと僕、今は色々駄目だ」
「そうか……俺は元々、黒龍への復讐に関しては何も思っていなかった。レイモンドがそうしたいなら一緒にやると考えていただけだから、黒龍だろうが黒猫だろうが、相手が何であろうが何も思わなかったんだが……レイモンドはショックだったんだな」
ルーファスが自分の気持ちをそう話すと、レイモンドは申し訳無さそうな顔で、もう一度ごめんねと言ってから、部屋へ戻って行った。
「レイモンドさんはそっとしておきましょう。ルーファスさんは少しここで話をしてから、新しい部屋へ案内しましょうねぇ」
エドワードがそう言うと、ルーファスは肯定の意味で頷き目の前にあったソファーに座る。
すかさず、クリスタがルーファスの隣に座ろうとしたので、それを制しながら、アレクサンダーがルーファスに問いかけた。
「お前は火龍の子供なんだよな? なのにどうしてそんなに無関心なんだ?」
「それは……」
ルーファスが言いづらそうにしたので、クリスタが代わりに話しだした。
「ルーファスさんは卵の中でずっと眠っていたそうです。記憶はレイモンドさんとお母様に、魔法で植え付けられたと言ってました。そして、ルーファスさんは自分が火龍の子供だと知らされていなかったそうです」
「そうだったのか……」
アレクサンダーが気の毒そうな表情で返事をする。
「そうだったのですね。だから表情も乏しく、何事にも無関心に見えるのですねぇ」
エドワードは確信を持ってそう言った。
「えっ? 先程の話と、無表情に関係があるんですか?」
クリスタが不思議そうに問う。
「記憶を植え付けられたと言いましたが、所詮それはただの記憶です。何も経験できてはいないのですから、表情も作れませんし、自分で考える事も慣れていないのでしょう」
エドワードがそう答える。
当のルーファスは、無表情ながらも、少し悲しそうな様子で聞いていた。
「そう……なのか。やはり俺は人間として不足だらけなんだな。記憶が嘘だと分かった時、さっさと火龍になった方が良いと思っていたのだが、火龍になって欲しいと言っていたレイモンドがあの様な事になってしまった今、俺はどうすれば良いんだろうか?」
ルーファスは真剣に悩んでいるのだが、それとは対象的に、クリスタは瞳をキラキラさせながら明るい声でこう言った。
「良いことを思いつきました! ルーファスさん! 面倒くさい事はおいといて、とりあえず私と恋愛しませんか?」
「「は??」」
突拍子もない言葉に、ルーファスとアレクサンダーの声がハモった。
「クリスタ? どういう事ですか?」
1人冷静だったエドワードがクリスタに問いかける。
「だって、私はルーファスさんの為に生まれてきたそうですし、ルーファスさんの見た目は好きなので、今度は中身も知りたいんです! 無表情な理由が経験不足というのなら、私と一緒に色々経験すればいいだけです! それなら恋愛をするのが一番良いですよね? どうすれば良いのか悩んでいるなら、火龍になるならないなんてことは置いといて、私と恋愛すれば良いと思います!」
クリスタは頬を赤らめながらも、自分の意志(というか欲望)をハッキリと言った。
「え?……えっ?」
ルーファスは突然のクリスタの発言に混乱していた。
*―*―*―ちょっと独り言―*―*―*
もうすぐ1章が終わりという所で、やっとキャッチコピー回収でけたー。
ところでマッチョは居るのに、
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