第23話 全力クリスタ―――――――恋する乙女は全力疾走!

 エドワードにより、自分の気持ちを理解したクリスタ。


(私はルーファスさんの為に生まれて来たみたいだし……って、これって運命?! ルーファスさんは運命の王子様?!)


 クリスタは実は、恋愛本の『運命の恋』とか『王子様』とか、そういう話が大好きだったので(本物の王子は身近に居るのだが、シスコンになっているので除外されている)、脳内がお花畑になってしまった。そして色々妄想しそうになった時、突然エドワードに話しかけられた。


「クリスタ。ルーファスさんに好意をもっているならば、ちゃんと殿下ともお話をしてくださいねぇ」


「えっ? アレクお兄様とお話? 何をですか?」


「何をって……ルーファスさんは現時点では敵対関係の人ですよ〜? 私達に攻撃をしてきてクリスタを攫った方々です。クリスタがルーファスさんを好きになってしまったのなら、この関係を改善しなくてはなりませんよねぇ。……わかりますか?」


 エドワードに言われるまで、全く何にも考えていなかったクリスタ。そういえば、襲われて攫われたんだと、さっき先生に言われたじゃないと、心の中で自分に突っ込む。


「分かりました! 皆さんとお話をして、仲良くなってルーファスさんとお付き合いをします!!」


 それ全然分かってないですよ! とエドワードは思いながら、クリスタに現実を伝えようとする。


「えーと、クリスタ、ルーファスさんの気持ちとか、レイモンドさんの敵対心とか、殿下の心配とか、そんな簡単には――――」


「善は急げですっ! 今すぐ話してきますねっっ!」


「ちょっ……」


 しかし、クリスタはエドワードの話も聞かず、どたばたと駆け出して行ったのだった。



§★§★§★§



「ここの部屋を使うといい。食事は使用人が知らせてくれるし、必要な物も使用人に伝えれば全てやってくれる。だから、黒龍に会うまでは外出は控えてもらいたい」


 アレクサンダーは、2人を客室へ通してそう伝えた。


「分かったよ。とりあえず黒龍に会うまでは、暴れたり逃げ出したりはしないから安心して」


 レイモンドがそう答えた。


「そうしてくれ」


 そう言って、アレクサンダーは踵を返すと、遠くの方からドタバタと走る音が聞こえてきた。


(この足音はクリスタか? 何故走ってるんだ?)


 足音でクリスタだとわかる、(ちょっと気持ちの悪い)シスコンっぷりを発揮しながらも、何だか嫌な予感がしたので、さっさと扉を締めて音の方へと歩いていく。 すると、やはりクリスタが走ってやって来た


「あっ! アレクお兄様!」


「(やっぱり)クリスタ。そんなに慌ててどうしたんだ?」


「かくかくしかじかで、皆さんとお話をしに来ました!」


 かくかくしかじかと、便利な言葉で状況を説明するクリスタ。その内容に、アレクサンダーは頭を抱えたくなった。


「クリスタ、今後敵対するかどうかなんて、現時点で話し合ってもどうすることも出来ない。この後、レイモンドの復讐相手である黒龍と会って、どうなるかが決まるんだ」


「えっ? そうなんですか? うーん、困りました。今すぐにでもルーファスさんと仲良くなりたかったのに」


 ギリッ!


「あれ?? アレクお兄様? 今、変な音がしませんでした?」


「ん? そうか? とりあえず、今は諦めて部屋へ戻って休んでおいたほうが良い」


 アレクサンダーは、ルーファスへの怒りのせいで歯を噛み締めすぎたのだが、そこは誤魔化してクリスタの自室へと誘導する。


(今すぐにでも仲良くなりたいだと! おのれルーファスめ! クリスタをたぶらかしやがって、許さんぞ!)


 ルーファスに対して怒りを抱くアレクサンダー……シスコンは、娘を溺愛するパパ並みに面倒くさいのである。


「うー、分かりました。黒龍と会った後は、すぐに話し合いをしてくださいね!!」


「わかっている」


 アレクサンダーもクリスタには、微塵も嫌われたくはないので、話し合いなどしたくはないのだが、返事だけはしておく。


(……どうにかできないものか……)


 アレクサンダーは、良いアイデアが浮かばないまま、エドワードの元へ向かうのだった。






*―*―*―ちょっと独り言―*―*―*


クリスタは妄想少女??

そして明日からお昼に1話ずつ更新になります!

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