第21話 話し合い②――――――――ちゃんと話し合おうね!

(今あの人、白龍って言ったよね……)


 そう、レイモンドは、エドワードの発言に、冷や汗をかくほど恐怖を感じていたのだ。


(アレクサンダーだけなら、本気を出せば全然大丈夫だけど、龍なんて相手にできるわけがない……ここは話し合いに乗ったふりをして逃げようか?)


 つつっと背中に汗が流れる。


「どうしましたか? 顔色が悪いですよ?」


 突然エドワードに話しかけられ、レイモンドの身体はビクッとなった。


(駄目だ、何をしてもどうやっても、負ける結果しか浮かんでこない。ここはもう素直に話して流れに任せるしか無さそうだね)


「いや、何ともないよ。ええと、先ほどあなたは自分を白龍だと言ったよね? 龍なら知ってると思うけど、火龍の子供を火龍にする為には龍の巫女が必要なんだ。だから僕達はクリスタを攫ったんだよ」


 レイモンドは嘘はつかず、真実だけを話した。


「やはりそうでしたか……しかし、火龍の子供を火龍にしてどうするつもりだったんですか?」


「黒龍への復讐だよ」


「……え? えーと……黒龍に復讐? 何故でしょうか?」


「あいつは火龍に卑怯な手を使ってきた。そのせいで火龍は重症を負ったんだ……」


 レイモンドの憎しみを込めた言葉に、エドワードはキョトンとする。


「戦争では、卑怯も正攻もありません。それに、復讐だと簡単に言いますが、同じ事を繰り返すおつもりですか?」


 エドワードの言葉にレイモンドは何も返せなかった。


(戦争では卑怯も正攻もない……確かにそうだ。卑怯も1つの策だといえばそうなる。そして同じ事を繰り返す……そうか、たとえ黒龍に重症を負わせたとして、今度は黒の珠使い達が、自分と同じ思いをしてしまうという事か。確かに復讐の連鎖だ……)


 冷静に頭ではそう考えるのだが、やはり長年培われたこの復讐心は消えてくれない。


 是も否もいえず、レイモンドは固まってしまった。


「……わかりました。あなた達を黒龍に会わせましょう。そこでどうするか決めてください」


(えっ? 黒龍に合わせる? 復讐……は、まだできないな。ルーファスがまだ火龍じゃないし。しかし何故僕達と黒龍を会わせるんだろ?)


 不思議に思いながら、ルーファスにも意見を聞こうかとそちらを見ると、クリスタがルーファスに見惚れていた。


(クリスタ……この子はちゃんと話を聞いてるんだろうか? 頬まで上気させて、そんなにルーファスの顔が好きなの?!)


「……ルーファスはどう思う? 黒龍に会ってみる?」


 クリスタにガン見されても、無表情で見つめ返していたルーファスに声を掛ける。


「俺は、レイモンドがやりたいことを手伝うだけだ」


(えーと、起きてからずっとこんな感じだけど……まさかインプリンティング?! 卵だったし、孵ってすぐ僕に懐いちゃった、雛みたいな感じなのかっ?!)


 冗談で思った事だが、あり得るかもしれないと気付いたレイモンドだった。が、とりあえず今は冷静に返事をする。


「わかった黒龍と会うよ」


「はい、それが良いと思います。きっと考えも変わると思いますよ。さて、とはいえ、今すぐ行くのは無理なのと、黒龍の元へは私の塔からでないと行けないので、お2人も一旦王城へ来てもらいます」


 確定かよ! と思いながらも、力の差があり過ぎるので黙って頷くレイモンド。


「という事は、今日は皆で一緒に過ごせるんですね!」


 クリスタが嬉しそうにそう言った。

 勿論ルーファスを見ながら……だ。


(嬉しいやら悲しいやらだね。まぁいいや、とりあえず白龍が怖いから、ルーファスを火龍にするのは保留にするしか……あ、そっか保留になるんだ……)


「そうだね、向こうに着いたら、僕とルーファスにあてがわれる部屋に遊びに来れば良いよ」


 ルーファスは、自分に向けられて言っているとは思っておらず、クリスタに返事をしなかったので、代わりにレイモンドがそう言った。


「え、それは駄目だろ! 可愛いクリスタを狼の群れになんて向かわせないぞ!」


 いち早くアレクサンダーが反応した。


「狼の群れ? ですか? アレクお兄様何を言ってるんです??」


 クリスタは本当に分からないのか、首をかしげながらアレクサンダーに問いかけた。


(可愛すぎるでしょ。なにキョトン顔で首傾げてるの? こんなの狼になっちゃうよね? 悔しいけどアレクサンダーの言う通りかも……それにしても、ルーファスは全然反応がないな……)


 レイモンドがルーファスを見ると、ルーファスはクリスタとアレクサンダーのやり取りを無表情で眺めていた。


(ほんと、何考えてるのかわかんないよ!)






*―*―*―ちょっと独り言―*―*―*


ややゴリマッチョなひなとは……。

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