第17話 龍の巫女の役割――――――えーっとそれは……ゴニョゴニョ……
ここまでの話を聞いてクリスタは、少し不思議に思った。
「質問良いですか?……どうしてアレクお兄様がいることに不安があったんですか?」
「それは、アレクサンダーが、クリスタによからぬことをしないかと心配だったんだよ」
「よからぬこと? アレクお兄様は優しくて、意地悪とか嫌がらせとか、そんな事をするような人ではないですよ?」
「……そうだね」
クリスタとレイモンドでは、心配の種類が違うのだがクリスタは気付かない。
「?? 分かってるのに心配してたんですね? とりあえず、レイモンドさんとルーファスさんは、数百年も昔からここへ来たという事なんですね。そして私はルーファスさんの為に生まれたという事ですか?」
「そうなるね」
大まかではあるが、話の内容を理解したクリスタは複雑な心境だった。
顔が好みのルーファスの為に生まれてきたのは別に良いのだが……(好みじゃない人よりは全然良い)、生まれた時から自分の役割が決まっていて、ここに来た時点で、自分の意志ではどうする事も出来なくなってしまっていると、分かってしまったからだ。
(龍の巫女として、ルーファスさんに協力し、彼を火龍にしないといけない……という事だよね。その後の黒龍への復讐は、私は関係ないしそれは考えなくても良いよね)
「あの……」
「ん? 何か他に質問があるのかな?」
「ルーファスさんを火龍にしたら、私はお城へ戻れるんですか?」
クリスタは一番気になっていたことを尋ねた。
§★§★§★§
クリスタの、用が済んだら帰れますか? という質問に、レイモンドは少し考えてから答えた。
「勿論、その時にクリスタが帰りたいと思っていたら帰ってもいいよ?」
「良かったです。お城はずっと過ごしていた場所なので、もし帰れないと言われたら悲しかったので……」
(多分帰れないと思うんだけど……それを今言うべきではないよね……)
騙しているわけではない、これからやる事を考えると、クリスタは帰りたいとは思わなくなるだろう――とレイモンドは考えていた。
何故なら、龍の子供を龍にする為には、龍の子供と龍の巫女が、愛し合わないといけないからだ。
基本的に龍の子供は男しか生まれない。龍の巫女は女。つまり、そういう事である。
(クリスタはルーファスに好意を持っているみたいだから、ルーファスが押せば大丈夫だよね。ただ、ルーファスにそんな気持ちがあるかが問題なんだけど……まぁ心がなくても、最悪やることさえやれば良いみたいだから、そこはルーファスを説得すれば何とかなる……かなぁ?)
自分の気持ちはあえて考えないで、ルーファスの反応を心配するレイモンド。
どうしてこういう事に、男女の営みが関係してくるのか……せめて違う方法があれば、レイモンドも諦めなくて良かったのに……と思いかけて我に返る。
(はぁ、僕は本当に未練がましいな。さっきのクリスタの様子を見て
「レイモンドさん?」
考え込んだせいで黙ったレイモンドに、クリスタは不安そうな様子で声を掛けてきた。
(不安そうな顔も可愛いなぁ……)
無意識に、手をクリスタの頬へ添える。
突然の事にクリスタはビクッと驚いた。その反応にレイモンドは我に返り、サッと手を引く。
「ごめんね、ちょっと考え込んでた。あと、今のはここに糸くずが付いていたんだ、突然びっくりしたよね?」
自分のほっぺを指しながら、クリスタの頬を触ったのは糸くずがついてたと言い訳をするレイモンド。
「えっ、そうなんですか! すみません、ありがとうございます」
(素直すぎて心配になるなぁ)
そんなクリスタを微笑ましく思いながら、やはり自分は諦めきれて無いんだと自覚してしまうレイモンド。
「どういたしまして」
(あー、ホント、僕がルーファスだったらここで押し倒して食べちゃうのになぁ)
見た目とは違い、実は肉食なレイモンドは、物騒なことを考えながらも、爽やかな笑顔でそう返したのだった。
*―*―*―ちょっと独り言―*―*―*
巫女の役割がそっち系でした。まぁ昔から、こういうのって生娘を捧げよとか、なんかそういの多いですよねーって感じで……。いやいや、そんな生々しい事よりも、胸キュンストーリーは一体いつなんだYO!
筋肉が絡まないと、胸キュンをスムーズに書けないことに気づきつつある私であった……。
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