第10話 切ない気持ち―――――――愛しさと〜切なさと〜♪ゴニョゴニョ

「という事で、強い赤の珠は作られなくなったので、現在、真紅の魔力を感知するなど有り得ないことなのですよ」


 真剣な話になると先生は間延びした話し方をしないんだな……と、全然関係ないことを考えつつ、アレクサンダーはエドワードの話を聞く。


「実は火龍が復活してるとか?」


「それはあり得ません」


 適当に言った事だったが、キッパリと即答で否定するエドワードに、アレクサンダーは不信感を抱く。


「先生はどうしてそんなにハッキリ言えるんです? 何か知ってるんですか?」


 その問いに、サッと顔色を変えるエドワード。


「知ってることがあるなら教えてください。クリスタを取り戻すために必要な情報なら尚更です」


「命令はしないんですね…………わかりました、お話します」



§★§★§★§



何時いつになったら目覚めるのかな?」


 レイモンドはクリスタが眠っているカプセルに向かってそう呟いた。


(初めて見つけた時は、これでやっと願いが叶うと思って嬉しかったんだけどな)


 レイモンドは8年ほど前の事を思い出す。




 クリスタが王城で生活をして2年ほど経った頃、その日もクリスタは新しい珠を探しに森へ来ていた。

 アレクサンダーと出会ったタニアの森だ。


 その日はエドワードと、アレクサンダーも一緒に付いてきていた。途中までアレクサンダーと一緒に歩いていたのだが、アレクサンダーが少し目を離した隙に、珠を見つけたクリスタが走り出しはぐれてしまったのだ。

 とりあえず珠の元へは辿り着いたものの、それは高い枝の上にあり、どう見てもクリスタの身長では届かない。でも、近くにアレクサンダーは居ない。どうしたものかとクリスタが困っていた時、誰かが後ろから、珠が取れる高さまで抱き上げてくれたのだ。これ幸いとクリスタは珠を掴んだ。

 無事新しい魔法を覚えて、抱き上げてくれたのがアレクサンダーだと思い込んでいたクリスタは、素直に感謝の言葉を伝える。


「アレクお兄様ありがとうござい……ます?」


 振り向くとそこにはアレクサンダーではなく、白い髪に赤い瞳で、真紅のオーラを纏ったとても美しい男が立っていた。


「アレクお兄様ではなくてごめんね。いつか迎えに来るから待っていて」


 そう言ってその男はスッと消えてしまった。




(あれが初めての出会いだったんだよね)


 その男がレイモンドだったのだ。

 レイモンドはクリスタを一目見て、とても可愛らしい少女だと思った。氷の王子と呼ばれる人物が、別人かと思うほど溺愛しているのにも頷けたが、力が弱すぎて本当にこの子が伝承の龍の巫女なのか信じられなかった。


 しかし何年も見守っていると気付くことがあった。自分の存在が異質だと気付き、不安にしているクリスタ。

 そんなクリスタを自分と重ね合わせてしまい、同情なのか愛情なのかわからない感情が芽生えてしまった。


 自分がルーファスだったら良かったのにと何度も思ったが、そんな事は無理だとわかっている。

 数年前には諦め、クリスタをさらうタイミングを計ってやっと手に入れた。

 実際手に入れてしまうと、諦めていた心がぶり返してくる。


 でも、駄目なんだ、僕では駄目。湧き上がりそうな気持ちを殺して、レイモンドはその場を立ち去った。






*―*―*―ちょっと独り言―*―*―*


おや? クリスタの恋の相手はレイモンドか? それともルーファスなのか? どっちだ?!


やばい、真面目過ぎてマッチョを入れる隙がなかった(←禁断症状でてきた人)


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