第9話 真紅の魔力――――――――なんかカッコイイ! えっ? 厨二病じゃないよ!

「レイモンド、本当にこの娘なのか?」


「相変わらずルーファスは疑い深いね。伝承にあるのはこの子、クリスタで間違いないよ」


 共に、濃い真紅しんくのオーラをまとった2人が、クリスタが眠るカプセルの前で話をしている。


「しかしこの娘が伝承の……龍の巫女みこだとして、どうしてこんなに生命力が減ってるんだ?」


 ルーファスが、不思議そうにレイモンドに尋ねる。


「あー、それはね、ちょっとタイミング悪くてさ。クリスタは、重症だった氷の王子……アレクサンダーの傷を、生命力まで使って治しちゃったんだ」


「生命力まで使わないと治せないとは、そんな力で大丈夫なのか?」


「今はまだ力も眠ってるだけだよ。このカプセルから起きれば徐々に力も目覚める」


 レイモンドは、愛しい人を見るような視線で、眠っているクリスタを見つめている。


「そんなに大事そうにするなら、やはり俺ではなくレイモンドが……」


「僕じゃ駄目なんだよ。ルーファスじゃないと駄目なんだ」


 少し寂しそうな表情でそう言うレイモンドを見て、ルーファスはため息をつく。


「とりあえず、目覚めないことにはどうしようもないな」


「そうだね。ルーファスが早くクリスタと共に火龍を復活させる事ができるように、早く目覚めてくれる事を祈るよ」


 そう言うレイモンドに、そこまで乗り気ではないルーファスは、どうしてクリスタをこんなに大事そうにしているのに、レイモンドがそれをやらないのかを疑問に思うのだった。



§★§★§★§



「真紅の魔力とは何ですか?」


 エドワードが、魔力の痕跡こんせきを辿り出てきた真紅の魔力。アレクサンダーは、そんな魔力を聞いたことがなかったので、素直にエドワードに質問をした。


「話せば長くなりますが……」


 そう言ってエドワードは、真紅の魔力について説明を始める。


 400年ほど昔、珠使いが今よりも沢山いた頃、好戦的な火龍と黒龍が、ちょっとした口論から争いを起こしてしまう。珠使い達もそれぞれ赤い珠使いと黒い珠使いで対立し、戦争が始まってしまったのだ。

 

 そして、戦争が長引くに連れ、それぞれの珠使いの中に強大な力を持つものが現れた。

 赤い珠使いには【真紅のオーラ】を纏った者、黒い珠使いには【漆黒のオーラ】を纏った者。

 それらが現れた為、争いは苛烈を極めた。


 そんな中、他の龍や珠使い達はどちらに付くこともなく、戦いを止めるよう訴え続けていた。

 しかし、2匹の龍も2つの色の珠使い達も聞く耳を持たず、とうとう黒龍が火龍に重症を負わせてしまったのだ。


 他の龍達は焦った。龍は神の下僕しもべであり、この孤島である国を維持する存在。1匹でも居なくなると、この国が崩壊する恐れがある。この国が崩壊すると、我々の居場所が無くなってしまう――と。


 龍は神の下僕だが生き物として存在していた為、長寿とはいえいずれ生命は尽きてしまう。しかし、身体の寿命が近づくと自分の意志で新しい身体を用意し、そこへ力の源である心の珠(人間で言う心臓)と記憶の珠(人間でいう脳)を、移し替えて長い時を生きるのだ。


 しかし、火龍は重症を負いすぎて、次の身体の用意が出来ない状態だった。

 黒龍以外の龍は考えた。火龍の身体をどうにかして作れないかと。心の珠と記憶の珠をその仮の身体に収め、国が崩壊しないようにできないかと。


 黒龍は火龍が居なくなっても、まだ5匹龍が居るのだから大丈夫だと思い込んでいた。

 しかし、1匹でも居なくなれば魔力のバランスが崩れてしまい国が崩壊してしまう。

 それを知り、黒龍も他の龍と共に火龍の身体を作ることになった。


 5匹の龍の力を合わせ、何とか火龍の仮の身体を作ることに成功したが、自分とは違う属性の龍の身体を作るのは大変だった。そして龍達は力を使いすぎてしまい、新しい珠がなかなか作られず、珠使いも激減してしまったのだ。

 さらに、本物の火龍が居なくなったせいで、強い力を持つ赤い珠は全く作られなくなってしまい、真紅のオーラを纏うものは事実上存在しなくなってしまったのだ。






*―*―*―ちょっと独り言―*―*―*


やっと恋のお相手が出てきたけど、クリスタは眠ってるから進展が無かった! 容姿もわからん! なんてこった!

そして大事に思ってる子に魔法の矢を放つなんて! と思われたと思いますが、あれはクリスタ以外だと普通にダメージを受けますが、クリスタだけ、当たっても気絶しかしない特殊な魔法の矢だったのです〜。


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