法の家.4


 …――それを可能にするのは……、


 《天藍てんらん理族りぞく》と呼ばれる異能いのうの血統が製造する道具……《法具ほうぐ》に秘められた可能性。


 《法具ほうぐ》をかし、空間をみあげるのは…――

 いにしえよりうけ継がれてきた知識の発展形を理解し、なおかつ、それを現実にする資質――《心力》に恵まれたひとにぎりの人間。


 空間をむ《しずめ手》を補助ほじょし守護するのは、おのおのの目的や都合・理想や思い入れなどから、不自由も少なくない契約けいやくに縛られることを望むという闇人やみひと……もしくは、それに準ずる者たち。


 三種さんしゅの知恵と才能は、淡紅色あわこういろの館で、どれが欠けてもなりたたないどもえの調和をみせ、平穏を維持する力となる。


 北の小さな村に生まれ、そのすべを確立したはじめの《神鎮かみしずめ》がきょをかまえたのは、深い森と清水をたたえたここのつの湖に囲まれて存在する《千魔封せんまふうじの丘》。


 その中央にあって、とどまる者、住む者がえる都度、土をり、増改築ぞうかいちくをくり返してきた敷地と淡紅色あわこういろ建物群たてものぐんはいま、《神鎮かみしずめ》の技を正式につた無二むにの学びとしてあり、国や自治都市の権謀術数けんぼうじゅつすう、利害人道が飛びう中も、どの権力にびることなく中立をたもっている。


 彼らが活動する比較的安全な領域りょういきにおいて、文化的繁栄はんえいをとげた人々は、人里ひとざと離れた土地をめ、余人よじんをよせつけないようでもあるその勢力拠点せいりょくきょてんを思い思いの表現で呼ぶ。


 《法の家》《天守てんしゅやかた》とたたえるその陰で、

 《治外法権ちがいほうけん》《闇人やみびと古巣ふるす》《かくみの》《異人館いじんかん》《異邦人のさと》……


 てには《背徳はいとくの城》《金の亡者の巣窟そうくつ》《伏魔殿ふくまでん》とまでうわさする。


 尊敬そんけい憧憬どうけいを集め、依存いぞんされる一方で、ねたみ、そねみ、時には恨みも買う異端的組織いたんてきそしき


 その大陸の西側をなか平定へいていした力と知恵は、多大ただいな影響力をおよぼしつつも、広く普及ふきゅうするにはいたらぬまま、頑固がんこな法の番人のように存在していたのだ。 

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