法の家.3
「
家の代表だという男の手の内で、うすっぺらな円盤状の物体がひらめきをはなっている。
同心円が五つ、
円と不可解な文字の
セレグレーシュは、それを知っているとも知らないとも言わなかった。
ただ首を左右に振ることで興味がないことを示し、案内された室内に視線をもどす。
そこでは、彼の半分ほどの年代の子からおなじ年頃の子まで。
三〇人ほどが、
「我々が多用するのは、これら――《
特質を
語られている
先刻しめされた
「《
いうなればこれは、
物体としてある限られた
「ここにはいない」
「そうか。では、次へ行こう」
セレグレーシュに耳を
続いて案内された円形の講堂では、十五人ほどの子供が思い思いにちらばって
「なにをしているのか
年齢層は、ばらばらだ。
成人といってもいいような者もあるので平均をとれば、はじめに見た子達より上になるが、なかには十歳くらいの子もまじっている。
彼らのまわりには、ぷかぷか空中を
大小球体。三角や正方形の
光る糸。
それが突然消えてしまったり、高速で飛び
案内している男の問いかけと、目の前でくりひろげられている不可解な現象は思考の外におき、セレグレーシュはその場立ちに室内にいる人間の
そうする
非常識にも重力を無視して
ちょっと手をそえるようなしぐさだったり、持っていたずんぐりしたにぎり棒や
なにかしらの思惑を感じさせる動きの中に肉眼では見えない要素……威力のような気配、
浮いていた物体が突然浮力をなくして床に落ちた時には、決まって
入口付近にいる少女――セレグレーシュと同年代くらいの
その
少女の手から離れ、ふわりと床におりたところでそれは倍ほどの大きさになり――。
その
その対象物が
…――それは、その少女が
理論的に理解しているわけではなかったが、セレグレーシュは肉眼ではなく
そのへんで飛びかっている物体も、意識して見れば、どれがどの人間に属し支配されているのかが識別できる。
けれども。なにを目的として、そうしているのかはわからない。
作業を楽しんでいる者もあったが、遊びではなさそうだということは場の空気から感じとれた。
「……まあ、
――
よく使われるのは、あのような立体的な
セレグレーシュのかたわら。
自発的に話しだした男の腕が、自身の胸の前でゆるく組みあわされた。
「…――
その口から繰り出されるのは、抑揚あるなかにも短い単語の羅列。
視界の先にある
「――
フロー
その耐久性は、築く者の
にわかに言いよどむ場面もあったが、頼んだわけでもないのに連れの男は、そのへんに
「印が持ちうる効果、性状は、
《
無数の法印を兼ね合わせ調和させる――その技術に優れた者のみが《
その
「《
「オレは、ヴェルダを
セレグレーシュがぼそっと主張したが、その男はほけっとしたもので、他人事に耳を貸しているような態度を保持していた。
特別、熱心になることも軽くあつかうこともせず、やたら涼しい目をして
「その彼は、いたかい?」
「……。まだ見てないところがあるから」
セレグレーシュが
その男が案内してくれるか、足を
相手の
「彼がここにいると誰かが言ったのかい?」
「……ヴェルダが…。…ヴェルダが、ここ、行かないのかって……。もう、ずっと会ってない。ここにいると思ったんだ」
「ひとりで来たのか?」
セレグレーシュはその問いに答えなかったが、男は
ともに
一定の
少し、いっしょに歩いてみただけなのに警戒心の強さがうかがえた。
もともとの性格・教育にもよるだろうが、ようやく大人になろうかという子供が、ここまでギスギスした姿勢をみせるのは、そうならざるおえない経験をしてきた
そのおもしろい
「苦労したようだが……」
差しだされた男の右手がいっぷう変わった色彩の頭に
「っ!
一瞬で、三歩も
馴れない野生動物のような反応だったが、その男は動じなかった。
「やはり、なにが出るか
そんな対象のようすに気づいているのかいないのか……。
「ジュジュが(この場に)いたら、なにを見ただろう?
……。…ゆらぐ水、大気の奥底にあるような無いような……あるとしたら、それはきっと見たことのない法具――(作用を備えた物体……または
……そうだな。それはどちらかといえば効力が読めない
それでいて、鉱物……(神秘的な)生きものにも似た…――」
視界にある少年を通りこし、そのさらに先の
「お、オレがどうでも、おまっ…、あんたには関係な……」
「この館は小さな街ほどもある。
一日で
思ってもいなかった
不可解なものを見るように、自分の四倍は長く生きていそうな男を凝視している。
「それでもみつからないのなら待てばいい――いずれ訪れるかもしれない……。
ここは御飯に部屋つき、課題つきだぞ?
事情が事情だから望むなら、特別に個室をやろう。浴場もシャワーもある。実力がつけば夜の
必要におまけがつくていどには衣類も
むろん、そのへんを
ここには
男は、
してやったり……、という表情に見えなくもない。
「ただし、
ここにいるならここの知識を
「オレ、なにも持ってない。親なんていないし…――字もそこそこ読めるだけ。ちょっと、書いてみたことあるだけで、ほとんど……」
「文字など
そういった種類の障害があるなら大きな課題となるが、言葉を理解し、覚えられるのなら手段がないわけでもない。
真に受けていいものか、事態を危ぶみ眉を寄せているセレグレーシュの視界で一歩、二歩と、間合いがつめられた。
「この家が学ぶ子らに求めるのは、
そうして
青磁色の頭に乗せられた手は温かく、豊かな思いやりを秘めていて…――
および腰になりながらも、
▽▽ 場外です ▽▽
※ 《
《理族》という熟語はありません。当初
《天藍》と呼ばれる種族(単語)にかぎられた修飾になりますが、一族と同義と受けとめていただければと💦
《天藍》は《天藍石》より。瞳孔が群青色であることに由来します。
青い石は数あれど、稀少なようですし、石言葉的にも、これが良いかなと。
インベンターにして、クラフトワーカー。クリエーター一派です。
一族のイメージとしては、道具を動作する方向へ組みあげる(内部改造する)ことから
とはいえ、動作させるのは彼らではなく《心力持ち》になります。
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