第2話一方…王城では…

 もうすぐエルの誕生日。私も当然エルを祝いに行くつもりなんだけど…近頃意識し過ぎて上手く喋れない。どうすれば昔みたいに色々と話したり…手を握ったり出来るかな?キスだって…あの偶然に交わした一回だけ…。エルは忘れちゃったのかな?私の唇はあの時の熱を今でも鮮明に思い出せるのに…。


 部屋でそんな事を考えていると王の間に来る様にと言われた。嫌な予感しかしないけど私は渋々王の間へと向かった。



***


「来たか…ティア」


「はい…お父様」


「今日そなたを呼んだのは他でもない…エルの事じゃっ…」


「!? エ、エルに…エルに何かあったのですかっ!?」


「そうではない…わしももう齢85になった…。いつわしは王の座を明け渡せるのじゃっ?エルとはどうなのじゃっ?いつ孫の顔を拝めるのじゃっ?」


「ちょっ…お、お父様!?そんなに…いっぺんに言われても…」


「そなたがエルに恋心を抱いていて、尚且つ、エルが一時行方が分からなくなり見つかってから約十年の月日が流れた…。そのかん…進展は何もなしなのかっ!?奥手過ぎるじゃろっ!?」


「だ、だって…エルを前にすると…緊張して…す、全ては…か、格好良すぎるエルが悪いと思うんです…」


「はぁ〜…そんな事じゃいつまでも進展はないわい…」


「うっ…」


 わ、私だって…もっとイチャイチャしたいけど…


「ティア殿下」


 クララ宰相さんが口を開いた。


「は、はい」


「陛下の言う事は今回は正論です…もうエル君も十五歳。婚約、結婚、筆下ろし…全てあっという間に進んでいきますよ?ティア殿下とは別の女性と…」

「そ、それは…」


 嫌だ…。最初は私と…


「…その通りですよ、ティア?」


 いつからいたのか気付かなかったけどドレスに身を包んだ大きな胸を持つ綺麗な女性がそう言った。


「…何です、その顔は…。お母さんの顔を忘れたの?」


「「…えっ?」」


「えっ…って、陛下迄!?マジっ!?マジで忘れてたとでも言うのっ!?」


「だ、だって…」

「一回も出てきてないじゃろ?」


「出てきてないって何ですっ!?ずっと…ずっと居ましたけど!?確かに喋ってはいませんでしたがずっと居ましたけどそれが何かっ!?」


「ご、ごめんなさいお母様」

「…すまん…第十王妃よ」


「いいんです…どうせ…どうせわたくしなんて…モブだもん…シクシクシクシクシク―」


「2人共…反省して下さい…王妃様を泣かせるのは止めて下さいね?」

(普段から全く喋らないから私も忘れておりました…。突然しゃしゃり出て来て何言ってんのコイツと思ってしまい…申し訳ありませんでした…)


「クララ宰相だけですわ!私の事を覚えてくれていたのは…」

「当然でしょう…。忘れる方がおかしいというもの…」


「クララ宰相!」


 お母様はクララさんに覚えて貰えていた嬉しさのあまり、駆け寄り抱きついて泣いている。くっ…あのブルンブルンした胸の持ち主が私のお母様とは…。何で私は…胸が……。さ、些細な事よね?わ、私だって…あるにはあるし…。


「そ、それで…あの…お母様?」


「…何?」


「そ、そんなに拗ねないで下さい…。冗談なんですから…お母様の顔を忘れる訳ないじゃあないですか?」


「…本当かしら?」


「話があったんですよね?」


「…まあ、我が娘ながら…奥手みたいなので、助け舟を出してあげようと思ったんだけど…」


「何かいい案があるのですかっ!?」


「勿論よ…」


「お、お母様!その案とは一体?」


「いいこと?まずはどんな手段を使ってもいいわ!エル君の誕生日に二人っきりになりなさい」


「さ、誘える…かな?」


「そんな弱気でどうするの?自分で言えないのなら私でも陛下でも使える物は全て使いなさい?あなたが本当に望むのなら協力は勿論するわよ?ですよね、陛下?」


「うむっ!その位してやるわい!孫の為じゃしの」


「そ、それで二人っきりになった後…どうすれば…?」


「飲み物とグラスを2つ用意しておくの」


「? それで?」


「これをエル君の飲み物に入れなさい」


 手渡されたのは三角に折り畳まれた紙…。中には何やら錠剤?―みたいな物が入ってるのが手触りで分かる。


「スーパーデンジャラスバイ◯グラMIXよ」


 聞いた事もない…。何かの薬…?


「なるほど…流石…おっぱい王妃じゃな」

「ふふふっ…そうでしょう?」

「…流石です、王妃様。その手がありましたね…」


「これは何なのです?」


「…漢方薬よ」


「そうなのですね」


「それの効能は…簡単に言うと…素直になる…感じみたいな?」


「そうじゃな…間違いなく我慢出来まいて…」


「…ですね」


「ティア…子供の作り方は知ってるわね?」


「にゃ!?お、お母様!?ニャニをっ!?」(かぁ〜〜〜)


 一瞬で顔に熱が…


「取り乱してどうするのです?世継ぎを含めて今は大事な話をしてるのよ?付けていた女の先生に習わなかった?」


「そうじゃな…ある意味…教師ビ◯ビン物語じゃな…」


「絶対に違うと思いますよ、陛下?」


 ど、どうして私は親と性の話をしないといけないのだろうか?


「早く答えなさい?」


「い、一応は…」


「男性を受け入れる体勢は?」


「ふぁっ!?あっ…せ、正常位…です」


「宜しい…その際…エル君のモノを受け入れた後、足をエル君の腰に絡ませて密着させた体を決して離してはいけませんよ?」


「……ふぇっ!?」(ぼっ…)


 想像するだけで…鼻血を出して倒れそうになる。


「その体勢こそ大しゅきホールドと呼ばれる我がレインローズの王家の至宝です…」


「ふぁっ!?ふぇっ!?あわわっ!?」


 至宝!?そんなのがうちの国の至宝なの!?


「今からそんなに動揺してどうするのです?エル君を取られてもいいのですか?」


「!? い、嫌です…。私はエルと…添い遂げたい…」


「ならば頑張りなさい?私が見た限り…エル君は鈍いですが…ティアに気がないわけではありません…。それこそあなたに惹かれているといっても過言ではないでしょう…」


「!? ほ、本当に!?」

「まじかっ!?王妃よっ!?」


「私もそう思ってはいました。彼はその気持ちを…そうですね…妹とか家族に向ける愛と思っている様に…いえ、そう思おうとしている様に見えますね…」


「クララ宰相の言う通りね…」


「ならばようやく…ようやく…孫の顔が?」


「…エル…私…」


 こ、今度こそ…私…勇気を出して頑張るから…。お願い…? だから…私の気持ちに応えて?


 


***

あとがき

初登場の第十王妃…。

ティアの母親生きてたんですね(笑)

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