第11話久方振りの我が家

 王城でティアと唇が触れあってしまった翌日の朝早く、俺達は領地へと帰る事になった。後からランスに聞いた話なんだけどその日の午前中、ポ◯キーを持って俺が泊まっていた宿の前をティアが顔を赤くしながらウロウロしていたとかしていなかったとか…。藪をつついたら蛇が出てきそうな予感がしたので詳しい事は敢えて聞かない様にした。


 まあ、何でそんなに朝早く城下町の宿を後にしたのかというとハートネス女王が領地に来るのではと話が出たからだ。王都から俺達の領地迄距離があるからね。車とかあれば早いんだろうけど…。とにかく女王様を待たせる訳にはいかないというわけだ。俺を捜してくれたらしいしね…。



***


 俺が住む村に着くと領内の民達総出で俺達を迎えてくれた。当然ウーシェンとカイラの姿も…。2人共、母さんが領内に居ない間に領内の事をしてくれていたんだ…。


「「「「「おかえりなさい、エル様!」」」」」

「よくぞ…ご無事で…」

「エル様の帰りを皆…心待ちにしておりました」


 そして、その中には当然の様に…


「ダーリン!」


 ミリアの姿が…。こちらに駆け寄り飛びついて来る。なんか…デジャヴだな…。


「え〜と…ただいまとありがとうね、ミリア」


「おかえりダーリン…。もう…アタシの前から居なくならないでよね?」


「あらあらあら…ミリアったら見せつけてくれるわね?」


「ハートネス女王陛下…この度は…」


「将来の義息子…またはわたくしの伴侶になるのだから畏まった挨拶はいらないわ」


 え〜と…それは返答に困るのですが…


「と、とにかくありがとうございました」


「ふふっ…どういたしまして」

「お礼なんかいらないわよ、ダーリン!」


 ハートネス女王とミリアの2人は暫くはこの村で羽根を伸ばしていくみたいだ…。そして…ようやく俺は我が家へと辿り着いた。半年とちょっと位か?


「改めておかえり、私のエル」


「ただいま、母さん」


「「「「「おかえりなさいませ、エル様っ!!!!

!」」」」」


「ただいま、ミーニャ、リンリン、レーティ、カイラさん、レイラ」


「マリン」


「んっ?」


「今日からここはマリンの家でもあるからね?」


「っ!? そ、そういう所し!?だから…あ〜しは…」

(エルの馬鹿っ!…でも…ありがとうし…あ〜しはでも必ずエルの傍に居るし…)


「エル様…久しぶりに一緒にお風呂から入りましょう」


「いいわね、ミーニャ!」


 またか…。でも…今回はしょうがないよね?


「じゃあ…みんなで入ろうか」



 こうして…お風呂にみんなで入る事になった…。  そこまではまだ良かったんだけど…その後が大変だった…。


「あ〜しはエルと一緒に寝るし!」

「マリンさんは島でも一緒に寝ていたんですよね?却下です!久しぶりに私がっ!」

「今日はここを預かる侍女の長として私が!」

「それは駄目あるよ!」

「ん…それは駄目」

「ここは…間をとって領地を任されていた私が…」

「お母さんは話に入って来ないで!」

「レイラっ!?」

「みんな…何言ってるのかな?かな?ここは母親の私に決まってるでしょっ?」

「奥様…それは…」

「ん…奥様横暴」

「えっ、私、母親だし、立場も上なんだけどっ!?みんなが横暴よっ!」

「こればかりは譲れません」


「「「「「「ぐぬぬっ―――!」」」」」」


「み、みんな落ち着いて…僕は今日から一人で寝るから」


「「「「「「それは駄目!!!!!!」」」」」」


 そんな時だけみんな息ぴったり過ぎるわっ!?俺はもう5歳なんだよっ?一人で眠れるんだからねっ!?


「お困りの様ですね、エル様」


「エリン!?」


「まずはあの時の事を…」


「それは言いっこなしにしようよ、エリン」


「…はい、エル様。私は二度と誰にも負けませんから…」


「うん、頼りにしてる。―で、早速頼りにさせてもらってもいいかな?」


「勿論です!ではエル様こちらに…」


 言われるがままエリンの元に近付いていく。すると抱き上げられ強く抱き締められて…


「エル様…本当にご無事でなによりです…」


「エリン…」


 エリンもミーニャ同様責任を感じていたんだろう。俺も抱き締め返す。そして…


「皆さん…エル様は今日は私と寝てくれるみたいです。なので、その辺で止めましょうね?」


「寝言は寝て言いなさい、エリン?」

「エリン…私の怖さを忘れたようね?」


「すいません…生意気言いました…冗談です、冗談ですからっ!すいません、エル様…。私には無理でした…」


 えっ…自信満々だったのにっ!?エリンどういう事よ!?さっき誰にも負けないと言ったよね!?


 結局その日はリビングでみんなで寝る事になった。はじめからこうすれば良かったと思ったのは言うまでもない…。まあ、その際誰が俺の傍に寝るかを言い合ったのもこれもまた言うまでもない事だろう…。

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