第10話sideティア

「キキキキキ、キスしちゃった…」


 あの場に居るのが恥ずかしくなり私は自室へ戻るとはしたないけどベッドへとダイブ。枕に顔を埋めて、意味もなく足はバタバタ…。だって…思い出すだけでも顔が熱くなるんだもん…。


 私は唇に人差し指を重ね、初めてのキスの感触を忘れない様にするかの様に余韻に浸る…。


 ホントは頬にキスするつもりだったのに、エルが急にこっちに振り向くから…。でも…これで…わ、私の気持ちは伝わったよね?もう付き合ってると思っていいんだよね!?それとも婚約!?結婚!?私はもうエルの彼女だよね!?


 ―トントン…。そんな風に妄想に浸っていたら部屋をノックする音が…。慌てて体勢を整え…


 ―どうぞと言うと部屋に入って来たのはクララさん。この国の宰相さんなんだけど、私のお姉さんみたいな存在、兼頼りにしている女性。この国の実質女王だとも思っている。


「ようやくですね…ティア殿下」


「2人の時はいつもみたいに呼んで欲しいです…」


「ティアちゃん…本当に良かったわね…。エル君が帰って来てくれて」


「…うん…本当に良かった」


「まさか…あそこでキスするとは思っていなかったけど…」


「っ!?あ、あれは…」


「エル君の事…好きなのは自覚しているのよね?」


「…うん、私はエルが好き…」


「ちょっと、順番が違いますが…ティアちゃんから気持ちを伝えて…」


「…えっ?」


「…えっ?―ってまだ気持ちも伝えていませんよね?」


「…えっ?えっ?」


「あれは…正直に言うと事故みたいなもんです…」


「キ、キスしたから…もう結婚したも同然なんじゃ…」


「何を言ってるんです!?確かにキスしましたが結婚もまして、婚約もしていないのですよっ!?先に告白はしないと!エル君は正直に言うと鈍いです!しかも…私が見る限りエル君に惚れてる女性は多いと思われます!」


「そうなのっ!?」


 た、確かに…。言われてみると、レイラちゃんも…それに侍女のお姉さん達も含めてエルを見る目が私と同じ…?た、大変だっ!?こ、これはエルの近況報告の回数も更にあげて…。でも、私一人離れているし…


「気付いたみたいですね?」


「で、でも…どうすれば…」


「交流を増やし…尚且つティアちゃんからエル君に告白しないといけません!」


「こ、告白かぁ…もう付き合ってる感じだったのに…」


「寝惚けてはいけません!狙った獲物は獲らえないとっ!」


「なるほど…」


「逃がしてはいけません!」


「分かりました、恋愛マスター!」


「フッフッフッ…久しぶりですね…そんな呼ばれ方をしたのは…」


「呼ばれてたのっ!?」


「な〜に…昔の話です…。ちなみにですが私の恋愛を戦闘力に換算すると53万です…」


「ごくっ…」


 思わず息を飲んだけど…53万って…凄いのよね?


「まずはエル君が帰る前にポ◯キーゲームをしようと持ち掛けるのが良いでしょう…」


「ポ◯キーゲームって…巷で話題のっ!?」


 ポ◯キーゲーム…それは一本のポ◯キーと言うチョコ菓子を2人で端と端を咥え食べていき…最期は唇が触れるというあの、伝説のゲーム!?


「補足として…ポ◯キーはエル君が作り…ゲームもエル君が広めております…」


「そ、そうなんだ…(ピクッ…ピクピクッ…こんなエッチで卑猥な事を…)」


「エル君が実践したかは不明ですが…」


 実践してたら許さないんだからね、エル?


「とにかく行動あるのみよ、ティアちゃん?」


「う、うん、私…頑張ってみる…」


「その意気です!」


 エル…待ってて…必ず…私を意識させてみせるから…。



 2人の声が大きかった為にこの話が廊下迄聞こえていたのだが…その時聞こえていた侍女は思った。


(告白した方が早くね!?ポ◯キーゲームってカップルでするもんじゃねっ!?) 


 ―と…。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る