第9話感極まって…
レインローズの城下町に着いた俺達は宿をとって直ぐ様レインローズ城へと向かう事になった。
そして王の間へと案内されたんだ…。
「よく…無事に戻ってくれた…エルよ」
「勿体無き御言葉…ありがとうございます」
「そう畏まらずともよい…最早、わしは形だけの王じゃしの…」
「その通りですよ、エル君。最早、使い物にならぬ王の細巻き…ゴホン…エル君の将来の太巻き…ゴホンゴホン…とにかく将来性のあるエル君の体の方が大事なのですよ…」
「…宰相よ…ディスり過ぎではないかの?」
「事実です」
えっ…宰相さんてこんな人だったっけ?
「まあ、とにかく無事で良かった良かった!のう、マリアにミーニャよ?」
「「はい、陛下」」
「テレサもご苦労であった。エルよ、この場で構わん。テレサにもお礼を言っておくがよい…」
「テレサさん、それにランス。僕の為に色々ありがとうございました」
「いいのよ…本当に無事で良かったわ」
「本当に良かったよ、エル。君は僕のかけがえのない友達だから…」
「ランス…」
くっ…ランス。そんな風に俺の事を思ってくれてるなんて…。俺も同じ気持ちだよ…。親友と抱き合ってるとそんな俺達の姿を見てみんな微笑ましいものを見るかの様に優しい笑顔で王の間が溢れかえる。
『―バタン!』
王の間への扉が勢いよく開いた…。
「はぁはぁ……エル…なの?」
俺が王城へと来ている報せを受けて慌てて来てくれたんだろう…。そこにはティアの姿が…。
「…そうだよ、ティア」
「エルッ!エルぅぅぅー!」
駆け寄り飛びついて来るティアを受け止め…
「ただいま…ティア…。それと約束守れなくてごめんね?」
「そんな事…いいの…エルが無事なら…無事だと信じてはいたけど…こうして…こうしてまた逢えたから……おかえり、エル…」
ハグしたままティアの頭を優しく撫でながら、陛下に視線を向ける。殿下とこんな事してると親バカだし怒られるかなと気になったからだ。すると、陛下は座ったままぐったりとしていた…。まるで気絶しているかの様だ…。いや…完全に気絶しているぅぅ!?何があったんだ!?
宰相さんが親指を立てて大丈夫、問題ないとアピールしてくる。―が、いいのだろうか?
「…エル」
「んっ…?」
「嬉しいから…キス…していい?」
今…なんとっ?
「えっ…と、よく聞こえなかったんだけど…」
「…だ、だから…キス…していい?…って言ったの…」
冗談を言ってる様に見えない…。ティアは頬を染めながらも真っ直ぐに俺を見ている…。ランスに視線を向けると…お前も何で親指立ててるんだよっ?
ランスってティアの事好きじゃなかったの!?
一体全体どうなってるわけぇ!?
「ほ、頬だから…駄目かな?」
頬ね…。頬…。挨拶みたいな…モノだよね?周りを見渡すとみんな興味津津で止める気配が誰一人ない…。良いのかよ…相手は頬とはいえお姫様なんだがっ!?
「…だ、駄目じゃ…ないけど…」
「じゃ、じゃあ…」
ティアがつま先を立て…俺の右肩に両手を添え…
ティアの顔がゆっくりと近付いてきて…
「うぉーい!何をしとるんじゃあー!」
陛下の声に慌ててしまい、声の方に顔を向けると…視界いっぱいにティアの顔が…
唇に柔らかい感触…
一度大きく目を見開いたティア…
でも…ティアは静かに目を閉じて…
永遠を感じるかの様な時間が流れる…。
やがて…重なっていた唇が離れると…
「えへへっ…キス…しちゃったね?」
太陽の様に眩しくティアが
―トクン…トクン…何だ、これっ…?
「わしのぉぉおー!わしのぉぉー!ティアがぁぁぁぁぁぁぁあーーーーーー!?」
うおっ!?ビックリしたぁ!?
「チッ…もう少し寝ておけっ!」
ドッ!
「うぬっ…これしき…」
ゴッ!ドッ!ドッ!ドン!
「ぐふぅ……―」
「今…いいとこなんです…もう少し寝ておけば痛い思いをせずに済んだものを…」
宰相さん…マジパねぇ…。
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