第15話王都に向けて

〜王都に向けて旅立つ前日〜



 現世をはじめ、漫画やアニメ、映画等も含めて悪い輩は必ず存在する。領内が賑わって来た事により、やはりというかそれに目を付ける悪い輩はやっぱりこの世界にも居るわけで……。



「母さん…ごめんなさい」


「どうしてエルが謝るの?」


「僕のせいで…盗賊というか山賊というか…とにかく悪い人が以前より増えているんだよね?」


 以前から荷馬車が襲われる事はたまにはあった。ここ最近、特にその数が増えた。村の中でも窃盗等色々あったしね。そのせいで母さんが領内の人達を守る為等に家を空ける事や母さんがする事が増えてしまった。これは明らかに僕のせいだ。この領地で作られてる味噌等。それに一番の原因はようやく出来た醤油と酢のせいだと思われる。大量生産なんてまだ出来ないからね。どこから嗅ぎ付けたのか、奪ってでも新しい物を手に入れるという人達が出て来てしまったんだ…。


「そんな顔しないで、エル。エルのお陰でみんな美味しい物を食べられるんだし、領内の人達も生活が潤っているのだから!だから、そうやって奪おうとする人達が悪いだけなんだからね?」


 それはそうなんですが…やっぱり母さんの手を煩わせてしまったのは反省すべきだと思ってるんだよね…。


「そうアル!私達も居るし、ハートネス王国から派遣された人達もいるアルから悪い奴等はすぐに捕まってるアルよ?」


 リンリンが言った様に醤油が出来る前からハートネス女王が兵士やら人材やらを派遣してくれた。試作品の段階で醤油が気に入ったとはいえ、本当にありがたい事だ。ティアとランスには明日直接渡す予定なんだ。王都にもその際、少しだけ納める予定だ。何故この国の陛下よりもハートネス女王の方が先に醤油を口にしたのかは察して欲しい…。あの人ちょくちょくここに来るんだもの…。


「ん…エル様が作った物は奪わせない…。特に醤油なんてまだ少ないのに…」


 そういえばレーティは刺し身を醤油とワサビで食べるのが気に入ったみたいだったね。


「エル様は今まで通りで構いません!後は大人の仕事ですから!ねっ?」


 ミーニャ…いつも本当にありがとうね?


「エル様は私が護りますから!」


 レイラも子供の割にはかなりの腕らしい。何でもカイラさんに鍛えあげられたみたい…。俺とあまり変わらないのに…。


「わたくしも微力ながらお力になりますから!」


 カイラさんは全然微力じゃないよね!?それこそミーニャと模擬試合だけど良い勝負してたよね!?

カイラさん曰く、ミーニャには敵わないとの事だったけど…。


「とにかく!エルは一足早く王都へと明日旅立つんだからそっちの心配をしていなさい!ちゃんとティア殿下を祝ってあげないと駄目よ?それから道中は気を付けてね?まあ、ミーニャが付いてるから心配はしてないけどね?」


 母さんが遅れて王都に来るのも僕の尻拭いみたいなものだし…。王都で宰相さんと話せる機会があればその辺の事を話してみよう。ティアの話では一番頼りになるらしいしね!




***


「エル…それじゃあ気を付けて行くのよ?」


「うん、母さん。行ってきます!王都で待ってるね?」


 母さんとハグを交わす。そういえば母さんと一日でも離れるなんて初めてだったっけ…。



 ―長めのハグを終え王都へ向けて俺は旅立ったんだ。先に向かうのは俺とミーニャ、エリン、レインローズ騎士団の人達20名。母さん、リンリン、レーティは後からやって来る。レイラとカイラさんは今回は留守番。村で何かあったらウーシェンと共に対応してもらう事になっている。レイラは何故か不満顔だったけどね…。最近はいつも一緒に居たからかな?



***


 旅は順調だった…。途中で荷馬車が壊れる迄は…。まあ、こればっかりはしょうがないよね。荷馬車の修理には少しだけ時間を要するみたいで取り敢えず先にみんな食事をする事になったんだ。


 ―そして…


「「っ!?」」


「口にしては駄目よっ!」

「口にした者は吐けっ!」


 ミーニャとエリンの声が辺りに響き渡った…。

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