第14話ティア5歳の誕生祭当日
「ねぇねぇ…ランス!」
「どうしたのティア?」
「もう一回確かめるけど…エルが来たら駆け寄ってエルの手を取り上目遣いでエルの顔を見つめながら『会いたかった…エル…』―って、言えばいいのよね?間違いない?」
「そのまま…ギュッと抱き着いてエルの胸に顔を埋めたらベストだね…」
これは母様から聞いたから間違いないと思う。男性に人気の仕草だそうだ。
「なるほど…勉強になるわ」
「それにしても…エル遅いね?」
「本当なら昨日到着してたんだよね?」
「そう聞いてたけど…」
「まさか…忘れてる?やはり監禁して…ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ―」
「いや…そんな事は…………無いと思うけど…」
「ランス…その間は何?」
「何でもない、何でもないよ!」
早く来て、エル!たまにティアの瞳がドス黒い真っ黒に染まる瞬間があるんだよ!!!これ書物で見たヤンデレじゃないのっ!?い、今の所、黒ティアはたまにしか顔を出さないから良いけど…。(※黒ティア、命名byランス)
***
ティアの5歳の誕生祭が始まった…。まだエルの姿はない…。どうしたのエル?ティアも待ってるんだよ?それなのに…エルが居ないから無理してあんな風に笑顔を作って…。傍から見ていて痛々し過ぎるよ…。せっかくのティアの誕生祭なのに…。
エル…忘れてないよね?まさかまた…何か作ったりしてるんじゃないよね?
『陛下ぁぁー!陛下ぁ!』
城内に誰かが慌てて入って来た…。女性の兵士の人っぽいね…。よく見ると彼女は怪我をしているっ!?本来なら代わりの人が陛下の耳に話を入れる筈なのに…。余程火急の事なのだとこの場に居る者が次々とそう口にしているのが聞こえてくる…。
「…何があった?」
『し、至急…陛下のお耳においれしたい事がっ…はぁはぁ…』
「怪我もしておるなっ…よい、そのまま申せっ!」
『し、しかし…』
「よいと言った!」
『は…はっ!エル殿が…エル殿がティア殿下の誕生祭を祝われる為に王都に向かっていた所…何者かの手により…攫われました…昨日の事です…』
―パリーン!
ティアが持っていたグラスが床へと落ちていき…割れて静かになったこの空間に音が鳴り響く。僕だって危うく落とす所だった…。
「う…嘘っ…」
「そんな…エルが」
「陛下っ!横から口を挟む事をお許し下さい!」
母様!?母様のあんな怒った様な顔見た事ない…。陛下は母様の言葉に静かに首を縦に振る…。
「マリアは!?マリアやミーニャが居た筈!?あの2人が負ける筈…」
『マリア様はおりませんでした!』
「ミーニャは居たって事でしょう!?彼女一人でもっ…!?」
『敵の数が多く…もとより…敵の何者かが紛れ込んでいたみたいで…食事にっ…毒がっ…それにより多くの兵士が倒れましたが、エリン団長とミーニャ様の手により敵の数は半数近く迄減らされたのですがっ…』
「…それで…2人共…死んだと?」
『…いえっ…エル様がっ…エル様がっ、その場に生きている者の命と無事を引き換えに自ら…』
エル…君は…
「馬鹿っ!馬鹿っなんだから!エルっ…ううっ…」
泣き崩れるティアに宰相が駆け寄っていった。ホントは声を掛けてあげたいのに…掛ける言葉が見つからない…。
「陛下!私に騎士団をお貸し下さい!」
「母様!?」
「私がその者達の後を追いかけてみます!昨日の事ならそんなに遠く迄は行ってない筈です!」
「よかろう!テレサに早馬の準備をっ!テレサよ!騎士団の一つをそなたに預ける!」
「ありがとうございます!では…」
母様に駆け寄る。母様が強いのは知ってるけど…心配になる。
「心配ないわ!必ず…連れ帰ってみせるからっ!」
「母様…無事に帰って来て?」
「勿論!それに…今頃報せをマリアも間違いなく聞いていて向かっている筈だから…。私達に倒せない敵はいないわ!」
「…うん…母様、エルをお願い!」
「任せて!時間が惜しいから行くわっ!使用人と共に宿から出ない様に…良いわね?」
「うん」
本当は僕も行きたい…。でも足手まといなのは言われなくても分かる…。母様もエルも…とにかく無事で……。
***
あとがき
★1000達成!
これも皆様のお陰です!本当にありがとうございます!本日ラスト!この話で1位を!どうか宜しくお願いします!
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