第8話泣いていたのは…
「ぐすっ……ぐすっ……ううっ…」
小さな女の子が泣いている。流石に見過ごせないよね。大人が一緒だと怖がって何があったのか教えてくれないかも知れない…。子供ってそういう時もあるからね。その辺は同じ子供の俺なら大丈夫だと思いたい。
ミーニャはすぐに俺が意図する事に気付いてくれたみたい。それに笑顔で応えてくれた後、後方へと下がりいつでも駆け付けられる距離で見守ってくれる様だ。それにしてもミーニャ察しが良すぎない?
とにかく俺は女の子に近付き、
「「どうしたの??」」
─俺と誰かの声が泣いている女の子に対して同時に全く同じ言葉で重なった…。声がした方に視線を一度だけチラッ─と向けるとそこには幼いながらも気品が溢れる感じがする俺と同じ歳位の紅い髪の女の子の姿…。多分、貴族とかそういう所のいいところの娘さんに見える。
─泣いてる女の子から何とかしないと…。
「ぐすっ…おかしゃんが…ひっく…いなくなたの…」
泣いている女の子がまだ拙い言葉で理由を教えてくれた。
「「お母さんが居なくなったの?」」
─またもや声が重なった。
俺は中身が高校生なんだけど彼女は違うだろう。なのにしっかりとした感じも伝わってくる。言葉もハキハキしているし、こうして迷子と思われる泣いてる女の子を心配して声を掛けてるしね。
「"う"ん」
「「一緒に捜そう」」
「…ぅん」
「僕はエルって言うんだ。良かったら名前を教えてくれる?」
「…ミミ」
「ミミちゃんだね。それで…君の名前も聞いても?」
「私?私はティ…エリエール」
エリエールと聞いてティッシュやトイレットペーパー等が頭に浮かんだのは俺だけじゃない筈!前世では有名だし、殆んどの家庭で使われているじゃないか?俺の家はそうだったし…。
「ど、どうかしたの?」
「ん~ん、何でもないよ、知り合いと同じ名前だったから…」
「…そ、そう?」
「じゃあ…ミミちゃんのお母さんを捜そうか」
「「うん」」
ようやくミミちゃんが泣き止んでくれた。はぐれない様にする為にミミちゃんの右手を俺が、左手をエリエールがそれぞれ握り3人並んで歩く。現世と違って車が無いし道も広いから出来る事だね。後方に控えるミーニャが、「はぅぅっ!?男女の手つなぎ…な、何て尊い光景なの!?」とか、言っているがスルー1択だな。
「ミミちゃんのお母さーん!いませんかぁー!」
「ミミ!ここだおー!」
「ミミちゃんここに居ます!」
そんな風にミミちゃんのお母さんを捜していると何分も経たないうちに、
「ミミッ!」
「お母しゃーん!」
走り回ってミミちゃんを捜していたのだろう。額には汗をかいている。ミミちゃんの姿をその目に入れるなり駆け寄って抱き締めている。こういう光景ってホントいいよね…。
***
お礼を言われてミミ達と別れた俺達は城下町にある広場へとやって来た。そこは現世でいう所の公園みたいになっている。流石に遊具や噴水なんかはないけどね。
簡素に作られた椅子にエリエールと並んで座り気になる事を聞いてみる事にした。
「見つかって良かったね」
「うん…」
「それで…エリエールちゃんはどこではぐれたの?」
「…へっ?」
「知り合いの人か護衛の人とはぐれたんでしょ?」
「それは…」
「今度はエリエールちゃんの方を捜さないとね?」
「…その心配はいりませんよエル様」
そう言ったのはさっきまで距離をとっていたミーニャだ。
「既にこちらに向けて護衛の人達は向かってきておりますので」
ミーニャの言葉から察するにエリエールの事を最初から知ってたって事だよね?しかも一体いつの間にエリエールの護衛の人達に連絡をとったんだよ…。
「エル様…。それは乙女の秘密でございますよ?」
しれっと心迄読まれたんだが?
「─なので何のご心配も要りませんよ、エル様、ティア殿下」
「殿下っ!?」
殿下って言ったら、王様の娘!?
「ご、ごめんなさいエルちゃん。何か合った時には偽名を使う様に言われてたから…」
確かにそれはその通りだと思うんだけど…ちゃん…って?
「え~と…ティア殿下」
「エルちゃんならティアでいいよ?」
不敬にならないかな?ミーニャは大丈夫だと合図してくれてるけど…
「じゃあ…え~と…ティア」
「な~に、エルちゃん?」
名前を呼ぶと笑顔で応えてくれるけど本当に大丈夫なんだよね、ミーニャ?
「僕…男なんで…ちゃんはちょっと…」
「・・・・・・・ふへっ?」
ティアの目が点になってるね…。
「ええっー!?」
広場にティアの驚き慌てた声が響き渡る…。そんなに驚かなくても…。見た目男の子って感じするでしょ?あわてふためくティアが落ち着いたのは護衛の人達が到着してからだった…。
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