第9話side陛下と殿下
ティアが城下町で護衛達とはぐれたと聞いた時はどうなる事かと思ったもんじゃわい。
なにしろ…男として生まれたのに王妃は勿論の事、側室も含めて妊娠させる事が出来なかったのじゃから…。不甲斐ないものじゃな。それなのに側室の数だけは増え続けた。
歳を重ねる度、不能になっていくのは勿論感じていた。五十代になってからは反応すらしなくなった…。王族としての血筋はわしの代で潰える事も視野にいれ、新しい王族に相応しい者も捜してはいた。
それなのに…あの日、突然70歳を迎えた日に奇跡的に1度だけ機能した。すぐに側室と体を重ね、奇跡が奇跡を呼んだ様にティアを授かる事が出来た…。
まあ、とにかくそんな事もあってようやく出来た子は本当に可愛い!そして甘やかしてしまう。宰相には内緒じゃがな…。アイツは口うるさいからの…。
「へ、陛下…只今戻りました」
「よい、いつもの口調でいつもの様に呼んでおくれ」
「…ですが…」
「この時間は父娘の時間じゃ…じゃから、なっ?」
「…はい、お父様!ティア只今帰りました!」
「無事でよかったわい」
「ごめんなさいお父様…色んな物があったので夢中になって…それに人も多かったので」
「気を付けるのじゃぞ?ティアはたった一人、王家の血を受け継いでいるし…何よりもわしのたった一人の娘なのじゃから」
「はい、お父様」
「─して、初めての城下町はどうじゃった?」
「楽しかったです。凄く楽しかったですお父様♪」
「ほうかほうか…」
ずっと城の中では退屈じゃろうて…。わしも若い頃はよく抜け出しておったもんじゃ…。あの頃は治安も悪く、よく女性に連れ込まれそうになったもんじゃわい…。
「─で、私と同じ歳の迷子の女の子に出会って、お母さんを一緒に捜してあげました…」
「偉いのぅ~ティアは…さすティアじゃな」
「それで、その時にもう一人…迷子の子に声を掛けた子が居て…」
「ほぅ~ティア以外に優しい女の子が居たというのか…」
「いえ、お父様。その子は男の子で…」
「そうかそうか…男…………………………
……男ぉぉぉ!?男じゃとおぉぉぉー!?
わしのティアに色目を使った男は誰じゃい!?引っ立てて吊るして魚のエサに…」
パカン!
「落ち着かんか~い!愚王!!!」
「痛い…」
「正気に戻られましたか、王様?」
「…宰相か」
「ティア様が怯えておいでです…」
「…わしとした事が」
「ティア様はいずれお嫁になられてあんな事やこんな事をされるのですぞ!」
「そ、そんなのわしが…許すわけ…」
「許すも何も娘は父の手を離れるもの…」
「ぐぬっ…」
「今から心の準備はされていて下さい…面倒なので…」
「面倒!?面倒と言った!?」
「気のせいです…」
王は重度の親バカになっていた…。
***
あとがき
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