第1部
第1話俺の名は…
「…んぐっ…んぐっんぐっ……けぷっ…」
「いっぱい飲めて偉いでちゅねぇ~?」
母さんは俺がいっぱい母乳を飲むと毎回の様に赤ちゃん言葉で褒めながらゲップが出やすくなる様に背中を優しくトントンしてくれた…。優しそうな人で本当に良かったと思う。可愛いしね…。こんな女性が嫁さんになってくれたらどんなに幸せなのだろうか?
そんな事を考えると当然、この女性を嫁さんにしたのはどんな男なのか気になるところではあるんだけど…。
そういえば生まれてから一度も父親の姿を見ていない…。どこか出掛けているのだろうか?それとも……まあ、そのうち分かると思う。
***
俺の首はまだ据わっていない為、手を添えてもらっていないとカクンカクンになる…。
だから辺りを見て様子を確認するにはこうやって母さんに抱き抱えて手を添えていて貰わないと見えないのだ。解せぬ…って、生まれたばかりの赤ちゃんだから仕方ないんだけどな…。
そんな状態の見える範囲で分かった事といえば金持ちって事位だろうか…。でも…電気がないんだよな…。電気って言っても照明の事だぜ?夜の灯りと言えばこの家は蝋燭の灯りなんだ…。不思議だろ?
それに不思議な事はまだあるんだ。メイドさん?お手伝いさん?召し使いさん?呼び方は分からないけど、この家に居るんだよね。─で、そんな人間を雇える様な金持ちがオムツを買わないなんてあるのだろうか?てっきりムー○ーマンやマミー○コなんかを使うと思ってたんだけど布オムツなんだ…。まあ、布オムツも使う人は使うと親戚の姉ちゃんが子供のオムツを替える時に言っていたので一概には言えないんだけどさ…。まあ、これはふと俺が気になっただけの事なんだけどね…。布オムツを否定してる訳ではないので誤解しないでくれよな?
***
「決めたわミーニャ」
「何をですか、奥様?」
声が聞こえた…。どうやら母さんの腕の中で眠っていたらしい…。まあ、赤ちゃんの仕事は寝るか泣くかなので仕方ないんだけど。状況から察するに母さんとメイドさんが何やら話をしていると思われる…。俺は声を出さないように静かに聞き耳を立てる…。
「この子の名前よ」
俺の名前?
「本当ですか!?」
何か異様に驚いてる?
「この子の名前はエル…エル・フォン・アルタイル」
待て!母さんは今…何と言った?ここは外国なのか!?でも、話してる言葉は分かるし、どう考えても日本語だよな?訳が分からない。
「…奥様、素敵な御名前です」
「そうでしょ?考えに考え抜いたんだから…ねっ、エル?」
これは赤ちゃんとしての責務を果たさねばなるまい!
「きゃっきゃっ♪」
「あら…エルは起きてたのね?」
「しかも奥様…御名前を気に入ってる様に見えます…」
「ホントね」
「はい、奥様」
「きゃっ♪きゃっ♪」
「また笑ったわ」
ふぅ~…母さんの期待には応えられたか?
母さんが嬉そうでなによりだっ!
それにしてもエルが俺の新しい名前か…。本当にここは何処なんだろうな?イギリス?フランス?言葉が解るのはアレか?小説とかで出てくる転生特典とか言う奴か?もしかしたら異世界だったり!?
─な~んてなっ。そんな訳ないよな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます