星の慈悲もなく

「あ、あなたは……!」


 新月の夜が目前となった日。

 月明かりさえ届かない、厚い窓掛けが下りた寝室で。

 長老巫女セドリアーヌは、侵入者に狼狽うろたえる。


「これまでの犯行は……」


 暗闇に浮かぶ人影から距離を取るように後退あとじさるセドリアーヌ。

 セドリアーヌの邸宅に侵入した者は、闇の奥に無言でたたずむ。


「な、何故、このような凶行を……」

「───。」

「なっ!」


 侵入者の言葉に、絶句するセドリアーヌ。

 狼狽ろうばいが深まり、震える足で侵入者から更に距離を取ろうと下がる。


「────。」


 侵入者は、一歩前に進んだ。

 セドリアーヌは驚愕に目を見開き、侵入者を見る。


「な、何を馬鹿なことを!」

「──、─────。」


 セドリアーヌは震え、倒れ込む。

 逃げようと足掻あがこうとして、全身が金縛りにあったように動かないことを知る。


「────。」


 暗闇に潜む侵入者は、身動きの取れないセドリアーヌに近付く。

 そして、躊躇いなく凶刃を振り下ろした。

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