第6話 サキュバスの集落【ルクスリア】
でもよくよく考えたらこの二人は単なるオレの我儘に付き合ってるって事になるよな?
もしかするとルリエラはそれに腹が立って、あんなぶっきらぼうな態度を取ったのかも。
……いや流石にその線はないか。
相変わらず無言のまま外の景色を眺めるルリエラを眺めながらそんな事を考えていると、その彼女が唐突に口を開いた。
「……出発の時間……急がないと日没までに到着しない……」
ルリエラはマントをはためかせながらふわりと宙へと浮かび、門の外へと飛び立ってゆく。
あいつ、飛べるのか。
そういえばサキュバスだったな、サキュバスは大体飛んでいるイメージだし違和感はないか。
……って今はそんな場合じゃなかった!このままじゃ置いて行かれる!
「ちょ、おい待てよ!」
オレは急いで翼を広げ、覚えたてほやほやの飛翔でルリエラの背中を必死に追いかける。
「あらまぁ、空を飛べる種族は羨ましいですわね」
門の中に残っていたミュスカは外へと飛び立った二人を視界に収めつつ呟いた。
「そうかい?魔導に長けたエルフはいつも浮遊しているイメージがあるのだけどね」
近くにいたサリエルがミュスカの呟きに対して反応を返す。
「ふふっそれは私とは全く異なるクラスのエルフの話ですわ、大魔王様」
「ははは……そうだろうね。さて話は変わるがミュスカ、ルクスリアではくれぐれも
「勿論承知しておりますわ大魔王様。それでは私も急がねばなりませんので、お話もこれ位で失礼させてもらいますわ……【
【
「さて、ヒロムート様がルクスリアでどのように動かれるのか、とても楽しみだねメアリー」
「……御意にございます」
▽ ▽ ▽
――オレ達が空を飛び続けてどれ位経っただろうか?
休憩も取らずにぶっ続けで空を飛んでいるはずなのに疲労感が無いのが不思議で仕方ない。
その尽きぬスタミナはオレが完全に人外の存在になってしまっているのだという事を改めて実感させられる。
というかまぁ翼使って空飛んでる時点で人外なんだけど。
「……ストップ」
「うおおっ、急に止まるな!」
ルリエラによる突然の停止命令にバランスを崩し一瞬墜落しかけたが何とか立て直す。
空に目を向けてみると太陽は西の空に沈み、三つの赤い月が顔を出し始めていた。
たしか出発したのは昼食前だった筈、だとすれば少なくとも5~6時間以上飛んでいた事になるのか。
「……あそこに降りる」
鬱蒼とした森林地帯の上空でルリエラが指差した場所には複数のオレンジの灯かりが木々の隙間からポツポツと顔を出し、周囲を明るく照らしていた。
こんな深い森の中で灯かりの灯る場所が一発で分かるなんて、空が飛べるって素晴らし過ぎだろ。
「やれやれ、やっと到着だな。それじゃお先に失礼するぜ」
「……あっ」
正直、はやる気持ちが抑えらなかっただけだ。
オレは己の中の衝動に導かれるまま、地上の灯かりに向かって一直線に降下する。
だってあの灯かりの先には全男子の憧れ(オレ調べ)伝説のドラゴンぺぇぺぇのサキュバスがいるんだぞ?
そりゃあオレの
木々の隙間を抜け、地上へと降り立ったオレの瞳に初めて映り込んだ人物はというと……分厚い鎧を全身に装備した強面スキンヘッドの体格の良い屈強そうなオッサンであった。
「なんだァ?てめェ……」
「それはこっちのセリフなんですけど!?」
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