【R35】ゴロリ
定職にもつかず、「ブキ・ティマ」の山奥でふらふらとプー太郎生活を送っていたゴロリはある日、小腹が空いていたので、沢で魚取りに勤しんでいた。
そんな矢先、魚を追いかけてたどり着いた川のほとりに、見たこともない大きな枝葉が積もった箱が置かれていたのを見つけた。ゴロリは変わり映えのしない生活変えたいと思っていたので喜んだ。見つけた新しい我が家の候補はこの上なく好立地、新しい生活にふさわしいとゴロリは思った。
しかし箱の中へ入ったと同時に耳を
──Oh my god. i can't get out of here.
(まいった、閉じ込められてしまった)
ゴロリは焦る。
ご丁寧に枝葉でうまく覆われて箱のように見えたそれは中へ入ってみると鉄の檻だったのだ。そのまま、半日が過ぎ、夜を超えてついに朝になった。ゴロリは閉塞感を感じながら、そのストレスと喉の渇きから檻の中で威勢を無くし、半目で虚になりながら木漏れ日から覗く朝日を見ていた。
「おい!マレーグマが罠にかかっているぞ!」
かすかに聞こえる人間の遠い声でゴロリは我に返る。
H&G-G36を抱えた男が3人、銃口をゴロリに向けながら檻を囲っていた。
──Why don't you fxxk off?
(失せろ!)
できるだけ大きな声でゴロリは威嚇した。
「こいつ、喋るぞ!」
男たちは口々に言って驚嘆した。
ゴロリの英語は映画や音楽で学んだものだった。
お気に入りの映画は007。
そして毎日エミネムからリリックを盗んでは真似をした。
父からは「もっと熊としての威厳を持て」と度々叱られたが、
ゴロリは人間の作ったものに惹かれる気質を持っていた。
ちなみにそんな父も2年前から姿を消している。
次にゴロリが覚醒した時、
ガラスで覆われた狭い部屋の中にいた。
そこでモンドという男と仲良くなった。
彼は闇の研究機関の博士だった。
モンドはテストを重ねるうちに露わになるゴロリの熊並み外れた知力に毎日驚かされた。あまりの知力の高さからゴロリにはレオナルド・ダ・ヴィンチにあやかって研究機関の中で「レオナルド熊」というコードネームが付けられた。
機関に金になると判断されたゴロリは
日本の芸能プロダクション企業に秘密裏に落札され、
日本でタレントになった。
初めての仕事は子供向けのテレビ番組。
収録中、共演者の男がハサミを振り上げた時、
野生の防衛本能が働き男の肩口にガブリと噛み付いた。男は「ああああぁぁぁ!痛ッ!」と叫び、ざっくりと裂けたシャツと大量に血の滲んだ肩に手を当てながら、
「大丈夫…、大丈夫だから」
と優しく収録現場をなだめた。
「すみません…、つい」
片言の日本語でゴロリは謝った。
その日が生涯の友との運命的な出会いであった。
つづく
英雄の休息 三年 @imaalljinsei
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。英雄の休息の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
近況完全網羅備忘録/詩川
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 60話
京この頃/於人
★10 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます