青いカナリア




 赤色と黄色が退色するので、赤カナリアとレモンカナリアには、きれいな色を保つために換羽期前に増色用フードというエサを与えるのだという。


 けれど、青いカナリアには、毎日毎日欠かさず、青染用フードというエサを与えるのだという。

 そうしなければ、退色するのではなく、青色そのものが消えるばかりか、存在さえもなくなるのだそうだ。




「あなたもきっと、私の血を吸えなくなれば、消えてなくなるのでしょうね」


 うっとりと。

 吸血鬼は自身の血を吸って、肉体がそれはそれはとてもきれいな青色に染まるゾンビを見つめた。

 ゾンビは意思疎通できる言葉は発さない。

 ただただ、吸血鬼の血を吸うか、虚空を見つめるか、耳障りな音を発しながら屋敷を徘徊するか、だ。

 青いカナリアは美しい青色と、美しい歌声と、愛らしい表情で楽しませるというのに、ゾンビと一緒に居て何が楽しいのか。

 仲間の一人がぶつけた疑問に、吸血鬼はゆったりと答えた。


 自分の生きた血とゾンビの死んだ血が混ざり合って誕生し、ゾンビの身体に表される青色を見ているのが楽しいのだ。

 毎日毎日、異なる青を見せてくれるゾンビが愛おしいのだ。

 だから。




「毎日毎日、欠かさず私の血だけ、吸ってくださいよ」




 私だけの、青いカナリア。











(2023.10.14)



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