第13話 VSアイアンゴーレム
「なんだったんだ?今の光。って、誰もいない。どうなってるんだ?」
魔法陣の光が収まり、ライカは辺りを見回した。近くにネスターたちの姿は見当たらない。
ライカが立っているのは、採掘現場の一角らしい。辺りは切り立った崖になっていて高低差が激しい。崖の下は水路になっているが轟音を立てて流れる水流は激しく、水際は垂直の岩肌が剥き出しになっている。足を踏み外して落ちたらただでは済まなそうだ。
「おや。キミは状況を理解していないようだね。ようこそ、お嬢さん。自己紹介から始めようか。私はゴーレムマスター。キミの敵だよ」
ネスターの時と同様に、どこからともなく男の声が響いて来た。
「なんだ、アンタ!どこにいる!敵だっていうなら正々堂々姿を見せな!」
ライカは視線を方々に飛ばして警戒しつつ、戦意を剥き出しにして吠える。
「おお、怖いね。でも、残念だが君の相手は私ではない。アイアンゴーレムだ」
男の声に合わせて、目の前の床に魔法陣が浮かび上がり、そこから大きな銀白色の箱のような物が姿を現した。
その箱は、ガシャガシャと機械音を立てて動き出し、角ばった人型に変形した。
「なんだコイツ?見るからに堅そうだな」
ライカは槍を水平に構えて身構える。
「その通り。そいつは、完璧な物理耐性を備えた私の自信作だ。緩慢で機械的な動きしかできない雑多なゴーレムと違って、完全自律行動が可能な優れモノさ。素早い槍使いであるキミを捉えるだけの機動性も確保できている。逃げようとは考えない方が良い」
「誰が逃げるかよ!」
ライカは先手必勝とばかりに、アイアンゴーレムに連打を叩き込んだ。しかし、ゴーレムの固いボディには傷1つつかない。
「くっ、アタシの攻撃が効かない!?」
「言っただろう。物理耐性は完璧だと。そのゴーレムにはいかなる物理攻撃も通用しない。しかもそれだけじゃない。相手の動きをトレースして、習得する機能もある。今のキミの動きもすでに学習済みだ」
先ほどまでじっとして動かなかったアイアンゴーレムの目が赤く輝くと、まるで瞬間移動したかのようにライカの目の前に踏み込んだ。
乱暴に放たれた拳をライカはなんとか槍で受け流し、その勢いを殺さず横薙ぎを繰り出した。ゴーレムの顔面に槍の切っ先が叩きつけられる。
「あぶねー。なんて速さだよ」
しかし、ゴーレムの滑らかなボディの表面で刃先はピタリと止まっている。ライカの武器がわずかに欠けた。明らかにダメージは通っていない。
「ふむ、見事なカウンターだな。遠心力を利用しているのか。さっきより威力が増しているようだが、その程度なら誤差の範囲だ。この調子ならすぐに決着がつきそうだな」
ゴーレムマスターは失望したように息を吐いた。
「これも効かないとか、どうなってんだよ!?」
ライカは槍を構えて警戒したまま、距離を取った。
――どうする?悔しいけどアイツの言う通りだ。コイツ固すぎる。槍だけじゃ歯が立たない。危なくなったら本気出せって言われちゃあいるが……。このイラつく声の奴、なんか黒幕っぽいし。擬態を解いて見せるのはまずそうだ。とりあえず、もうちょっと試してみるか。
迷いを振り払うように、ライカは渾身の力を込めて槍を振り下ろす。
ゴーレムはその一撃を左手の平でいなし、ライカの攻撃の勢いを利用して回転しつつ右腕の刃で横薙ぎを繰り出した。
ライカは面食らったが、上体を逸らしてギリギリでその攻撃を躱した。
「うっ、身のこなしが変わった!?今の動き、まさかアタシの技を真似したのか!」
「学習は順調に進んでいる。もう時間の問題だな」
声の主はすでにライカに対して興味をなくしているようだ。
ゴーレムは人が中に入っているかと見紛うような身のこなしで間合いをはかり、じりじりと距離を詰めてきている。
――やっぱこのままじゃ無理か。仕方ねぇ。まずは右脚で一発お見舞いしてやる!
衣服の下でライカの右脚が不気味に隆起する。履いていたブーツが膨れ上がり、側面が破けて義肢が露出した。
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