第5話 ネスターの狙い
仲間たちのところに戻ると、真っ先にプラムが声を上げた。
「ネスターさん、どういうことか説明してくれませんか?見ていてハラハラしてしまいましたよ」
「それは悪いことをしたな。だが、成果はあった」
プラムは心配げな眼差しを送っているが、同時に眉間に皺を寄せてもいた。
「決闘することが成果だとおっしゃるのですか?」
「ああ。最初からそうするつもりだったからな」
ネスターは一仕事したとばかりに
「理解しかねます。なぜ彼らとの関係を荒立ててまで決闘しようとしたのですか?」
プラムはあまり納得がいっていないようすだ。
ネスターは考えをまとめるように視線をいったん天井に向けてからおろした。
「戦利品を要求するためだよ。連中のプライドと魔王軍の情報を天秤にかけたのはそのためだ」
「あのような敵対のしかたをしては、
プラムは熱心に持論を述べる。
「プラムの考えも分かる。だが、目的のためなら時には卑劣な手段を使わねばならないこともある。もちろん、報いはすべて俺が引き受ける」
頑固なネスターの言葉を聞いて、プラムが複雑な表情でつぶやく。
「すんでしまったことは仕方ありませんし、情報に一歩近づけたのは良いことです。ただ、ネスターさんがたった一人で決闘だなんて!護衛である私たちに相談していただけなかったことは正直怒っています」
珍しく声を荒げたプラムの主張に、ネスターは一瞬固まった。
「……そうか。たしかに、俺が一人で突っ走っていたら護衛なんてできないか。すまない。それについては
「分かっていただけたのならいいです」
プラムは盃を両手で持ってグイっと飲み干した。
ネスターの謝罪で妙に重くなった空気に耐えられなかったのか、唐突にライカが大声を出す。
「まあ、アタシは分かりやすくていいと思ったけどね。要するに、戦って勝てば情報ゲットってことだろ?」
それに合わせて、ずっと食べ物に夢中だったミミも身を乗り出して来た。
「勝てばいいんだよね。ぼくがみんなやっつけてあげようか?」
プラムは少し拍子抜けした表情になった。
「あら?皆さん、決闘自体には乗り気なのですか?」
ライカはプラムの盃に酒をつぎに体を寄せた。
「プラムはちょっとまじめすぎるよな。とりあえず、酒飲んで気持ちを楽にしようぜ!まあ、なるようになるって」
ライカの音頭でひとまず空気が和らぎ、その夜はあっという間に更けていった。
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一夜明け、決闘当日。
「ヤベー、ちょっと飲み過ぎたかも」
前日の酒盛りが響いたのか、ライカは少し気分が悪そうだった。
「おかげさまで昨日は楽しかったですが、少々はしゃぎ過ぎてしまいましたね」
プラムもやや眠たげに目をこすっている。
「戦うの楽しみ!わくわく!」
半面、ミミは決闘そのものを心待ちにしているようだ。
「ミミ、戦うのは俺だけだからな?なにかあっても『アレ』は使っちゃダメだぞ」
ネスターはそうミミに言い聞かせている。
ミミは不満そうにしながらもコクコクと頷いた。
宿の外に出ると、眩しい太陽が4人を出迎えてくれる。
ネスターは顔を叩いて気合いを入れなおした。
「さて、やってやるとするか」
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