仮面被りの世界で……

Mr.Six

第1話 仮面を被らないと生きられない

 人は仮面を被って生活をするようになった。


その理由は数年前のとある事件が原因だ。


とある、


動画配信者がいつものように動画を投稿、


その動画内でちょっとした発言が世間から非難を浴びて大炎上。


コメント欄には避難や誹謗中傷が数多く寄せられた。


『動画投稿をするのを止めろ』


『人間の屑だろ』


『常識ない奴は人間を止めていただきたい』


などの、


心無い避難のせいで、


動画配信者は自らの命に幕を下ろした。


残された遺族が、


コメントした人たちを提訴しようとしたが、


あまりにも数が多すぎて警察も対処しきれず、


結局、遺族は泣き寝入りをする羽目となったのだ。


しかし、


この事件がきっかけで、


警察と政府が本格的に動き出して、


政府はある法案を設立した。


【誹謗中傷禁止案】


これは、


コメントの内容が誹謗中傷に当たると判断された場合、


その内容に応じて、


罰則金や懲役を科すというもの。


また、


当事者が死亡した場合は、


これを殺人事件として処理するといった内容のものだった。


これによって、


動画やショートムービーへの批判は減少した。


政府の法案は見事に成功を収めたのだ。


はずだった……


数年後、


日本での自殺者は2倍に増えていた。


それまでは2万人程度だったのが、


なぜ、このようになったのか?


日本政府は原因を追究するため、


あらゆる政策を講じた。


日本での幸福指数は世界を見てもトップクラスに高い。


つまり、国民は幸せなのだ。


どのようなアンケートをとっても、


本当か? と疑問に思う程に誰もが満足している回答している。


小中高のあらゆる学校へのアンケートでも、


イジメはない、


学校に満足しているといった回答が返ってくる。


子供同士の仲もよく、


親同士のいざこざも以前に比べ、


圧倒的に少なくなってきている。


問題に着手している間も、


増え続ける一方で、


更に数年後が経過した。


犯罪は減少したものの、


自殺者はついに10万人に到達した。


政府は生活に問題があるのではないかと結論づけ、


国民の生活を豊かにする方針にシフトした。


ガソリンの二重課税の撤廃、


消費税を5%に減税、


最低賃金の底上げに伴い、


手取りの底上げをして、


初任給35万円を実現。


働き方改革を見事に成功させ、


少子化も少しずつだが解消されていく。


国民が望むであろう、


すべての政策を政府は軒並み実施し、


今の日本政府は、


史上最高の内閣と評されるようになった。


これだけのことをしてもなお、


自殺者は減らなかった。


いや、


減らせなかった。


政府がありとあらゆる法案、


政策を講じても、


日本の自殺者の勢いを止めることはできなかったのだ。


しばらくしてから、


世界の20か国が参加をして、


意見交換をする、


世界会議が日本で開催された。


おもてなしの国である日本は、


各国の首相を全力でおもてなしをする。


礼儀や作法を目の当たりにした各国の首相は、


日本の文化に感動していたが、


世界会議が始まると、


議題は日本の自殺者に焦点が向けられた。


世界でも日本の自殺者の増加は問題視されていたのだ。


『なぜ、日本は国民が幸福なのに自殺するのか?』


『世界は日本の政策の政策を見習うべきはずなのに』


世界の各国が日本の現状を理解できないでいた。


日本の経済は自殺者が増えているのにも関わらず、


国民の頑張りのおかげで、


経済力は世界でもトップクラス。


外国人雇用なども積極的に行い、


まさにジャパンドリームを実現させている。


そんな中、


ただ1つの国だけは違う見解をしていた。


『幸福って言うしかないだけじゃないの?』


この言葉にすべての国が疑問を持った。


どういうことだ?


幸福と感じているのに、


幸福というしかないのは当然じゃないか!


違う見解を示した国は、


他の国から


批判を受けた。


ただ一つの国を除いて。


人は仮面を被って生活をするようになっていた……

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