雪国オステオへ

 モネフィラに平和が訪れて2日後

モネフィラの事件の全貌を王国に報告をした鳩が

マリエル姫様ことマリーからの手紙を持って帰って来た

半分くらいは勇へのラブレターだったが

とある村から王国へ救援依頼があったそうだ

その内容は


 勇、エリカ

 モネフィラから北にあるオステオの村で

 異変が起きているの

 もう春を迎えてもいいはずなのに

 いつまで経っても冬のまま

 冬というよりも極寒

 今までにないくらいの気温の低下

 寒さのあまり人の生活に影響が出ているそうです

 元々豪雪地帯ではあるけど

 歴史上ここまで寒かった事はなく

 このままでは村そのものが凍ってしまう

 そんな状況らしいのです

 状況を把握する為に

 こちらからも騎士を派遣したのですが

 その後報告がありません

 そちらの事件が解決してすぐで申し訳ないのだけど

 勇の女神様のお仕事も兼ねて

 オステオの村に向かってもらえないでしょうか

 お手紙でこんな事を依頼して

 本当にごめんなさい

 でもあなた方が頼りなのです

 よろしくお願い致します


という事だった


 『エリカ、一緒に来てくれる?』


勇はマリーのお願いを断るつもりはなかった

命を繋いでくれた人、そういう認識でいたし

大好きだったからだ


 『寒いとこ苦手なんだけどな〜

 まっあんた1人だと凍ってしまうだろうし

 一緒に行ってあげるわよ』

 

そんな訳で身支度をして

港町モネフィラを後にした

超絶危険な聖剣、もとい魔剣は

ギルドから王国へ持っていってもらうようにした

馬車に穴が開くので宙ぶらりんにして固定するように

と指示だけしておいた


2人は北に峠を超え

山岳地帯をさらに北に進んだ

旅に出て3日目辺りには

冬の寒さを感じるようになった

2人は防寒具を纏い

体温の低下を防ぐ魔法をエリカがかけた


 『おお〜あったか〜〜い

 便利ね!魔法って!!』


勇はエリカの魔法で寒さを感じなくなって

感動していた

エリカも褒められてまんざらでもなかったので

少し調子にのってきた

道中魔法の理解を深める意味で

でエリカの魔法講座が始まった


 『精霊の話は前にしたよね

 私は炎を雷、光、そして土の属性を

 好んで使うの

 一番は炎なんだけど

 好んで何度も使うと炎の精霊さんとの相性が

 良くなっていくのね

 相性が良くなると、当然魔法の威力なんかも

 上がっていくわけ

 もちろん自身の魔力が必要になるんだけどね

 で、炎の精霊さんと真逆の水の精霊さんは

 反発しあってしまうの

 なので、私は水魔法があまり得意ではない

 というか使わないようにしている

 生活魔法レベルなら使うんだけど

 高レベルな魔法は精霊さんが

 まだ力を貸してくれないの

 私の天才的な魔法知識を要すれば

 水の魔法も極めちゃうのは簡単なんだけど

 そうすると今度は炎の精霊さんとの

 相性が下がってしまって

 炎の力が弱くなってしまう

 属性が正反対の魔法は

 どちらか一方の力が強くなると

 もう片方の力は弱くなるってわけ

 もちろん両方使う人もいてるわよ

 でも割りに合わないっていうか

 使用する魔力ほど高度な魔法には

 ならないのよ

 光と闇、土と風って感じ

 どの属性を好んでも

 結局はその人の腕次第なんだけどね

 この私のようにね!!!』


こういう話をする時のエリカは

とても楽しそうだと勇は思った


オステオの村に近くなると

どんどん雪深くなって来た

馬にも魔法をかけ凍死しないようにして

なんとか雪道を進んでいたが

そのうち吹雪になり

馬車の移動が困難になってきた

荷台を馬から外して置いて行こうかと

エリカが言ったが

しかし勇は


 『じゃっ、私持つよ』


そう言って馬車をひょいと持ち上げて


 『もうすぐなんでしょ?さっ急ご!』


馬はエリカが引いて歩いたが

馬車を持ち上げて平気な顔してる勇を見て


 『ねぇ勇、あなた

 なんでもありね・・・』


エリカはちょっと引いていた


そうこうしているとオステオの村が見えて来た

元々豪雪地帯であった為

雪の対策はしていたが

それでも対応が追いつかない雪と寒さに

村はひっそりとしているように見えた

村の入り口まで来た時

王国から派遣された騎士団が倒れていた

誰かと争ったような後が見られたが

勇は馬車を不用意に駆け寄った


 『ちょっ、ちょっと!!大丈夫ですか!』


何人かは意識が混濁しており

返事がなかった

寒さと雪のせいもあったのだろうが

明らかに攻撃を受けていた

勇がそれを認識した直後

吹雪の中から大きな人型の魔物が突然現れた

倒れた人を介抱していた勇に

拳を振り下ろしてきた

勇は虚をつかれ立ち上がる事ができず

腰を下ろした状態だった

勇の顔よりも大きい拳がせまってきたが

間一髪、ギリギリの所で両腕をクロスして受け止めた

ずしりを重みのある拳だった

勇の体が雪に少し沈む

あまりの一撃に周りの雪が風圧で飛び散った

拳を受け止められた事に

人型の魔物は驚いていた

その態度は知識がある事を物語った


 『ファイヤーランス!!』


少し離れた場所にいたエリカが勇を助けるべく

雪をも溶かす炎の魔法を人型の魔物に向かって放った

魔物は後方にジャンプしてエリカの魔法をかわす


 『チっ!?』


エリカが驚いていると

人型の魔物が勇とエリカに


 『コノムラ

 ホロボス

 オマエ

 カンケイナイ

 カエレ』


そう言い残して吹雪の中へ消えていった


続く

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