海の魔物

 勇達が港に着くと大勢の人だかりが出来ていた

みんな魔物の被害にあった船の様子が

気になっているようだった

怪我人が多数出ているようで医師や担架が

船内へと入っていく所だった

冒険者組合長のアディオも

船内に入り対応にあたる

勇とエリカも一緒についていく


 『おい!大丈夫か!?

 動ける奴はポーションの支給を受けてくれ

 重傷者の担架はすぐそこの仮設の診療所へ!

 船長、状況の報告を頼む!!』


アディオの呼びかけに船長が

人混みの中から現れ事件の報告をしている

勇は船内を見て回る

船の上で戦闘が行われたようで

あちこち破損している箇所が見られる

それに血痕も

勇は海を眺め、そして街に目をやる


 『海の上は女神様の結界はないんだ・・・』


モネフィラの湾内を街の中としても

結界は張られないようだった

陸地にのみ適用される結界という事がわかる

勇が一通り見て回って戻ってくると

アディオと船長との会話にエリカも加わっていた

エリカが勇に気が付き手招きをして勇を呼んだ

船長の話を聞けという事なのだろう


 『3rdの冒険者を5名と2nd1名の計6名

 雇っていました

 奴らマーマンは6体現れました

 海から飛び出てきて奇襲を仕掛けてきましたが

 こちらはずっと警戒を保っていた為

 不意打ちを受けずに一旦は退けたんですが

 すぐ8体のマーマンが現れて

 こちらもなんとか凌いでいたのですが

 今回奴らなかなか引かず

 そのうち数で押されてしまい

 荷物を奪われました

 冒険者の方々も頑張ってくれたのですが無念です

 ただ今回も死者が出なかった事だけは救いです』


船長の話を聞いたアディオは礼を言って

その場を立ち去った

勇とエリカも軽くお辞儀をしてアディオに

続いて船外へと出た

3人は冒険者組合の事務所に戻ってきた

アディオは頭を抱えていた


 『ねぇアディオさん

 少し聞きたいんですが

 今回も、死者はなかった

 という事は毎回死者は出ていないんですよね?』


勇が気になっていた事を聞いた

アディオは顔を上げて


 『はい、そうです

 被害は小さいとは言えませんが

 幸い毎回死者が出ておらず

 それだけは不幸中の幸いと申しますか・・・』


言葉に詰まるアディオ

その姿にエリカが


 『アディオさん

 何か気になる事があるんですよね

 私たちも関係者です

 全部話してもらえませんか?』


アディオは言葉に詰まったが

深呼吸をして話始めた


 『これはあくまでも想像の範囲なのですが

 おそらく、こちら側、人類側に内通者

 もしくは黒幕がいると私は考えています

 こちらのリストを見てください

 襲われた船の積荷なんですが

 高価な品が多い、金属や宝石、鉱石など

 割と食料関係などは被害がほぼありません

 ついでに、くらいです

 魔物が金になりやすい物を選んでる訳もないと

 思いますし、そもそもお金の必要はないでしょう

 ただ偶然が重なったとなれば別ですが・・・

 今回もなかなか引かなかったという話でした

 あの船の積荷は・・・ミスリル

 自然の鉱石でありながら自然の力だけでは

 生成される事がなく

 発掘される場所も特定されていないレアな金属

 それ故に非常に高価な物です

 マーマン達は一度襲撃に失敗すると

 何度も同じ船を襲った事はなかったのです

 今日は2度、しかも体勢を整えてきた

 明らかに積荷を知っている

 そしてそれが高価だと分かっている

 私はそう思えてならないのです

 以前から気になってはいましたが

 誰かを疑いたくないあまりに

 目をそらしていました

 ただ、今日の事はもうどうしようなく

 そうであるとしか・・・・』


エリカは話を聞いて驚いていた


 『そんな・・・魔物と意思を通わせる事なんて・・・

 ましてや魔物が人の言う事を聞く訳ない・・・』


勇はエリカの話の方が驚いた

それは魔物に対する理解の違いだった

勇は別世界の人間

知ってる物語には魔物を使役して

なんならボールになんか入れちゃったりして

戦うなんて事が誰しも知っている

意思疎通して仲良くなんて事も出来るファンタジーを

詳しくはなくてもよく聞く物語だったからだ


 『え?無理なの?』


勇は思わず声に出た

その声にアディオとエリカが


 『いや無理でしょ!!』


2人同時に突っ込まれた

当たり前やんって顔で見られた


 『そんな顔しなくてもぉ〜』


勇が悪い感じになってしまった

半泣き勇

少し暗い空気の中が漂う

そんな中エリカが


 『私に妙案があるわ!』


エリカのニヤッと笑う


続く

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