港町 モネフィラ

 勇とエリカの馬車が山を越え

モネフィラの街門にたどり着いた


 『エリカ〜やっと着いたよ〜』


到着時間が想定していた時間よりも

遅くなってしまった

その原因は盗賊から回収した聖剣だった

なんでも抵抗なく切ってしまう

切れ味抜群の聖剣

うかつに持ってると馬を切ってしまうと

いけないので

馬車の荷台に置いていたのだが

馬車が揺れると幌を突き破って外にで行く・・・

布で巻いたり、木箱に入れたりして対応していたのだが

何をしても素晴らしい切れ味でなんでも切ってしまう

勇は聖剣が馬車の幌を突き破って外に出てしまう度に

毎度森に探しに行っていたので

ちょっと疲れ気味


結局聖剣は柄の部分を紐で結んで

幌の中に宙吊りにして

動かないように四方八方から紐で固定した

蜘蛛の巣に絡まった虫のようだった

エリカはそんな聖剣を見て


 『聖剣っていうか

 もう封印されし魔剣・・・ね、これ』


街門の前まで来た時、門番の衛兵2人が

勇達の馬車に近寄ってきた

街に入る為のちょっとした検問だったのだが

2人の馬車に剣で切られたような傷がある為

心配されてしまった


 『お嬢ちゃん達、大丈夫か?

 馬車がボロボロじゃないか?』


 『盗賊でも出たのか?』


襲われたのかと勘違いされてしまった


 『盗賊・・・たしかに出たけどぉ・・・

 それは大した問題ではなくて・・・

 とりあえず馬車を停めたいんだけど

 どこに行けば?』


エリカは門番の人達に馬車の停める場所を聞く

ついでに街の事を少し聞いた

教会、宿、冒険者組合所などなど


 『ありがと〜〜』


勇とエリカは衛兵達にお礼を言って

街の中に入る


 港町モネフィラ

勇は王都以外に初めての大きな街

物珍しいのか何やらキョロキョロしている

エリカはそんな勇を見て

 

 『どうしたの?なんか気になる?』


勇は周りを見渡しながら


 『なんか視線を感じない?

 気のせいなのかもしれないけど・・・

 うーん・・・まっいっか

 それよりもさ最初にどこ行く?

 私お腹すいちゃった〜』


勇はお腹をさすりながら

エリカに尋ねた


 『あなたね〜最初に教会じゃないの?

 女神様の遣いなんでしょ?』


エリカはヤレヤレという顔で勇に指摘をする

勇はすっかり忘れてたと言い

2人は教会に向かった

街の真ん中にそこそこ大きな教会があり

すでにマリーが派遣した神官と新兵が

教会の整備にあたっていた


勇が教会に入り女神象の前で祈りを捧げる

その時暖かい空気がフワッと

広がったように感じた

エリカは何かを感じたようだった


 『今のが女神様の結界なの?

 一瞬暖かい空気に包まれた

 気がしたんだけど・・・

 魔法とは違う別の力・・・・

 勇にはわかるの?』


エリカが勇に尋ねる


 『私は街全体が何かに覆われているのが

 見えるけど、それが何かって言われると

 ちょっとわかんないなー』


と勇が答える


 『へぇ〜見えるんだ・・・眷属だからかな・・・』


エリカがボソッとつぶやいた

勇とエリカは神官達に挨拶をして

教会を出た

しばらく歩いた所で勇が


 『やっぱり気のせいだったのかな〜』


勇は首をかしげ少し悩むも

特に害があったわけでもないので

気のせいで済ませた

次に2人は冒険者登録のため

組合に向かった


 『ここが冒険者組合の事務所よ』


エリカ扉を開けて勇を中へ案内する

2人は受付カウンターまで行き

登録の為に受付のお姉さんに話しかけると

丁寧に教えてくれた


 『初めてのご登録ですね

 では、こちらの用紙に名前

 職業、得意な武装、魔法など

 わかる範囲でお書きください』


勇が名前を書いた時だった

受付のお姉さんが


 『もしかして王国からの使者って

 あなた達の事なの?』


勇とエリカは顔を見合わせ


 『あっ、はぃ!そうです』


2人して答えた

受付のお姉さんは小声で


 『マリエル様からの隼で

 お二人が来て船舶が襲われる件について

 調査に来られる事が記載されておりましたので

 お待ちしておりました』


と言って頭を下げる受け付けのお姉さん

そして早々に勇の登録をすませ

冒険者の証(あかし)であるカードを発行した


 『ご存知かもしれませんが

 最初の説明だけはさせてください

 一応規則ですので

 初期登録の勇様はランク5th(フィフス)からなります

 ランクというのは実績ですね

 最初は5th(フィフス)から4th(フォース)

 3rd(サード)、2nd(セカンド)、1st(ファースト)と

 5から1までのランクがあり

 1が一番上のランクになります

 ランクに応じた仕事内容となっており

 たくさんこなせばランクも上がり

 報酬も高くなるというわけです

 レジェンドと言われる方も一部おられますが

 そこまで到達する方はごくわずかな方ですので

 あまり気になされなくても大丈夫かと思います

 お仕事内容はそちらの掲示板にある用紙を

 こちらの受付カウンターまでお持ち頂き

 カードを確認し問題なければ

 ご依頼開始となります

 討伐や納品は対象の物をお持ち頂き達成とし

 お手伝い系のお仕事は御頼主様がお仕事内容を

 記した用紙を直接ご依頼主様にお持ち頂き

 お仕事依頼を受け、達成すればその場で報酬を

 頂く事になります

 問題が発生した場合は組合にご相談頂ければ

 できる限りの対応をさせて頂きます

 他に何かご質問はありますか?』


勇は他に質問はないと答えたが

わからない事がわからない状態で

エリカに聞けばいいかと思っていた

勇の返事を聞いて受付のお姉さんは

2人にしばらく待つように言って

受付の奥へ行った


 『あれ?エリカはしないの?』


勇はエリカに尋ねた


 『私は魔術師組合の方で登録してるんだけど

 仕組みは一緒で仕事も同じように受けれるから

 ここで登録する必要はないのよ』


勇はしばらく考えて

 

 『ふーん』


とだけ答えた

エリカは勇の適当な返事を聞いて

どうせ理解してないんだろうなと思ったが

そのうち理解していくだろうと思い

今は細かい説明をするのを諦めた

そうこうしていると受付のお姉さんが

戻ってきた


 『勇様、エリカ様、どうぞこちらへ』


案内されるまま扉の中へ入ると

1人のすらっと背の高い男性が待っていた


 『初めまして私はここの組合長の

 アディオ=サマリー 

 と言います』


勇とエリカも挨拶をし

勧められた椅子に座った

アディオが机に地図を広げた時だった

ドアの扉が勢いよくノックされ

ガタイの良い男性が入ってきて


 『アディオ!やられた!

 返り討ちにしてやるつもりで

 護衛に冒険者を乗せた船が

 やられちまった!! 

 なんとか港まで戻ってきているんだ!

 ちょっと来てくれ!!!』


アディオが立ち上がって

勇とエリカを見る


 『お二人も来てください!』


そう言って走って行くアディオ

勇とエリカもアディオの後を追った


続く

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