初めての盗賊

 『お嬢ちゃんたちぃ〜

 ここから先、女の子2人じゃ

 とっっっってもあぶねーから

 俺たち

 盗賊団 漆黒の月

 が護衛してやるよ〜〜』


勇とエリカの前に現れた男達は

ニヤニヤと笑いながら

馬車に近づいてくる

エリカはため息をついて

ヤレヤレって感じでボソっと呟く


 『はぁ〜バカじゃないの・・・

 月が漆黒なら見えないじゃない・・』


手前にいた盗賊団の雑魚が

エリカの声が聞こえたようで


 『お頭〜こいつバカにしてますぜぇ〜』


と一番奥で偉そうにしている男に

笑いながら伝えた

勇は一番奥にいる男を見て何か考えている

エリカは勇が気になり


 『勇、どうしたの?』  


エリカに話かけられてハッとする勇


 『あ、うん

 あの一番後ろの人が持ってる剣なんだけど

 たぶんあれ・・・』


とそこまで言って考え込む勇

エリカは周りの男達がうるさいので

勇の声が聞こえづらくなって

イライラし始めていた


 『お〜〜い、ビビって何も言えないのかな〜?』

 『ほらお前が大声出すからだろ〜ギャハハ』

 『かわいいね〜売る前にちょっと遊ぼうかぁ?』

 『荷物は貰うし女は売るんだよ!!』

 

盗賊はワイワイと嬉しそうに騒いでいる

エリカは無視していたが

どうやって燃やしてやろうかと考えていた

勇は何かを思い出したようで


 『やっぱそうだ!!』


そう言って勇は馬車を降りた

エリカがびっくりして


 『ちょっ、勇どうしたの?』


勇は一番奥の男を指差して


 『あの人が持ってる剣 

 あれ聖剣だよ!!

 私あれに切られそうになったから

 よく覚えてる

 たしか無くしたって言ってたんだよ』


エリカは勇の言う事が自身の理解を

越えていた為

疑心の顔つきで目を細め


 『え〜何それ??聖剣って??

 たしか王都にあるって聞いた事はあるけど

 本当の話なの?

 勇者しか使えないって話じゃ?

 勇者認定の勇が持ってなくて

 なんで盗賊が持ってるのよ?

 そもそも切られそうになったって・・・』


勇に幾つかの質問をしたエリカだったが

勇はそこには触れずに


 『ちょっと見てくる』


と言った瞬間消えた

一番奥にいた男は

偉そうに指示を出していた

盗賊団の雑魚達は

目の前の少女が1人消えた事に

盗賊達がざわつく


 『おぉい!!お前ら食いもんは一旦集めろよ!

 金目のもんは売ってから山分けだかんな!

 ネコババすんじゃねーぞ!!

 おいきーてんのか・・・・』


と言った時だった


 『ごめん、ちょっと見せて』


お頭と言われた男が剣を振り上げて

指示を出している時に

目の前に急に勇が現れて

すれ違い様に何かを言われたかと思ったら

自身の手に持っていた剣が消えていた

両手を見て唖然としていると

自身の背後に気配を感じ振り向くと

勇が剣を持ってジロジロ見ていた

何が起こっているのか理解できず

困惑して声が出ず戸惑っていた


勇は王都で魔人と戦っている時に

飛んで来た剣をギリでかわした事があった

その時目の前を通った聖剣を見た事で

模様まで覚えていた


 『あ〜やっぱそうだよ

 エリカ〜やっぱ聖剣だこれ

 無くしたやつだけどぉ〜

 レイさんに返していいかな〜』


勇は盗賊団を挟んだ向こうにの馬車にいるエリカに

大声で聖剣を王都に返したいという事を伝えた

エリカは真顔で両手を上に上げて丸を作って

意思表示した

それを見た勇は


 『とっ言う訳なので〜

 これ、返してもらいますね』


といまだ理解できずに

キョトンとしている盗賊団に

笑顔でかわいく伝えた

ハッとしたお頭が冷や汗をかき


 『お前・・・なにもんだ

 俺たちを捕まえに来たのか?』


少し焦り気味だった

盗賊全員が振り向き

自分たちの目の前にいた少女が

急に背後にいた事に驚き

勇の方を見ていた

勇は


 『私ですか?私勇者です

 よろしくお願いします!

 あとぉ

 私は何もしないよ

 わ・た・し・は・ね、フフ』


勇はそう言って反対側

エリカがいる馬車の方を笑顔で指差す

勇の方に気を取られていた盗賊団が

全員反対側にいるエリカの方を向くと

エリカは右手の掌を上に掲げ

その上に炎の大きな槍を生成していた

炎の槍はゴオゴオと燃えている

ギョッとした盗賊団だったが

気がついた時には時すでに遅し

エリカはニヤッと笑って


 『爆ぜろバカども!

 ファイヤーランス!!』


そう言って炎で生成された

大きな槍を盗賊団に向けて投げた

炎の槍は地面に激突し爆発した

盗賊団は数名吹っ飛んで

数名爆発に巻き込まれて

ほぼ全滅と言っていい状態に陥った

勇は大きく後方にジャンプして

木の枝に捕まってブラブラしていた

お頭と言われていた男は

少し離れた場所にいた為

後ろに飛ばされただけで

ほぼ無傷だったが

尻餅をついた状態で

ガクガクと震えている


 『あっぶないな〜

 私まで巻き込まれちちゃったら

 どうするのよ〜』


勇は枝に捕まった状態で

エリカに文句を言ってみた

エリカは少しも悪ぶれる様子もなく


 『勇なら避けるっていう信頼の元よ』


勇はも〜っと言って頬を膨らませて木から降りる

盗賊団のお頭と言われた男の姿が

見えなくなっていた

エリカがそれに気が付き


 『しまった〜1人逃げちゃったか』


勇もキョロキョロして

逃げた男の姿を探したが

見つからなかった


 『いないね〜

 ってかこの人達

 いったいなんなの?』


勇の質問にエリカが即答する


 『ただのバカよ』


転がっている盗賊団を横目に

馬車に乗るエリカ

勇も馬車に乗るが


 『この人達

 ほっといていいの?』


とエリカに尋ねる

エリカは少し考えたが


 『今日は討伐に来たわけじゃないし

 連れていくのも大変だし

 いいんじゃないかな?

 まぁ運が良ければモンスターに襲われずに

 助かるんじゃない?

 まっいろいろ自業自得よ』


そう言って馬車を走らせるエリカだったが

勇は少し心配だったので

こっそり数名にポーションを持たせておいた

聖剣を馬車の荷台に乗せたのだが

滑った勢いだけで荷台を突き破ってしまった


 『おっそろしい切れ味ね・・・』


勇とエリカが驚く

街に着くまで数回

聖剣が荷台を突き破るというのを

繰り返した結果

モネフィラの街の入り口で

門番の人に盗賊にでも襲われたのか?と

心配されてしまった


続く

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