レミス村 芽吹く大地

 『はわぁぁ〜〜〜怖かった〜〜』


勇はそう言って地べたに座り込む

躊躇なく突っ込んでリッチを

一撃で葬ったが

後になって恐怖心がこみ上げてきた

やはり、アンデット、ゾンビ

リアル世界での恐怖映画などは

苦手な勇

異世界で見慣れないモンスターよりも

恐怖対象としては馴染みやすかった


座り込んでいる勇にエリカが近寄る


 『アンデット、苦手だったんじゃないの?』


そう言いながら意地悪な笑みを浮かべるエリカ

勇はそんなエリカを見て


 『あなたこそ、アンデットの中には

 村人の犠牲者がいるかもしれないから

 攻撃できないんじゃなかったの?』


勇はそう言って意地悪な笑みでかえす

エリカは少し笑って座り込んでいる勇に

手を差し伸べる

その手を取って立ち上がる勇


勇はアンデットへの恐怖心を断ち切って

エリカはアンデットとはいえ元住民を

傷つけてしまったらという恐怖心を

乗り超えて

お互い守りたい物の為に

一歩踏み込んでの共闘だった


その場にいた全ての人が勇とエリカと神官達の

周りに集まる感嘆の声を上げる

ラシエルが神官から封印石を受け取る


 『王都の教会に預けて一件落着だな

 皆ぁ!!、ごくろうだった』


ラシエルが封印石を掲げて

大声で全員の労をねぎらう

それを受けて一層大きな歓声があがる


そして一夜明けて・・・

レミス村は廃墟のような村となってしまった

そこへ避難していた村人が戻ってきた

ショックを受けていたが

すぐ復興に向けて立ち上がった

騎士団も手伝い早速作業が始まる

勇も手伝い自慢の怪力で

木材などを運んでいく


ボロボロになった廃屋は一旦燃やし

草木が育たなくなった土地は

近くの森林から養分を含んだ土を

持ってきて混ぜて耕す

魔法を駆使した復興作業は

建築機械がなくともサクサク進んでいく

しかし作物や花が育つ大地になるには

長い年月が必要となりそうだった


 『勇ちゃん、これ食べな〜』

 『勇ちゃん、これもどーぞ』

 『勇様、ありがとうございます』


村の人達は笑顔で作業を続ける

勇にも優しく接してくれている

皆、辛い事もあったけど

前を向いて行こうと決めたのだろう


勇は少し休憩しようとした時

村の外れに佇むエリカを見かけた

ソーっと近寄って驚かそうとしたら


 『なにかようなの?』


エリカの冷たい視線が刺さった

勇は頭をかきながら苦笑いをする

エリカは遠くを見つめ少しため息を漏らす

それを見た勇は


 『どうかしたの?疲れた?』


心配そうに声をかけた

エリカは勇の方に顔を向けずに

遠くを見たまま


 『この辺りね

 この辺り・・・綺麗な花畑だったのよ

 子供の頃よく両親とここに来て

 花を見ながらお弁当食べたり

 友達ともよく遊びにも来た

 暖かくなるとね

 一面黄色い花を咲かせるの

 そして真ん中に大きな桜の木があって

 それが満開になると

 桃源郷?っていうのかな

 すっごく綺麗な世界になるのよ

 もうあの景色を見る事はないのかな

 って思うとちょっと寂しいなぁって・・・ね』


勇は悲しげなエリカを見つめる

そして周りを見渡す


 きっと綺麗な景色が広がった村だったんだろうな


そう思った勇は

ふと思い立ったように

構えをとった

両足を肩幅より少し大きく開き

両手の拳を軽く握り腰の位置に

目を閉じ深呼吸

気力がみなぎってきたのを感じると

目を開けた瞬間


 『はぁっ!!!』


気合を入れて地面に向かって

正拳突きをした


 ドォンっ!!


という衝撃音と共に地響きが起きた

そしてさらに力を込めて


 『元気になっ!あっ!!れっ!!!』


そう言って勇は地面に突き刺した拳に

全ての力を収束させた


 『はあああああ!!!!』


勇が力を込めると

その拳を中心にして

地面に草が芽吹いていく

緑がどんどん広がって

村全体を一瞬にして緑色に染めた


 『くぅ〜〜〜〜〜!!!』


少し苦しそうになった勇はそこで

拳を離して仰向けに倒れ

ハァハァと肩で息をする

エリカは驚いて


 『ちょっ・・・な・・・何をしたの??』


周りをキョロキョロと見回しながら

何が起きたのかを理解できずにいた

勇は仰向けに転がった状態で


 『うん、ちょっとね 

 ちょっとだけ私の寿命を分け与えてみた

 地面にね

 成功してよかった〜

 できるかどうかわからなかったんだけど

 なんか出来そうな気がしてさっエヘヘ』


とエリカを見ると

真っ青な顔をして


 『じゅ・・・みょう・・・

 寿命って

 あなたの命よね?

 な、なにやってんの!!!

 2度とこんな事しないって

 誓いなさい!!!

 今度やったら本気で許さないからね!!

 自己犠牲も程々にしなさい!!』


エリカは涙ぐみながら

そう叫んで座り込んで勇の手を握った


 『お願いだから・・・・2度としないで・・・よね』


エリカは握った勇の手をギュッとして

頭をつけてお願いと言った

そして最後に


 『ありがとう・・・・』


とも言った


続く

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