勇vsリッチ

 まるでマシンガン

勇が連続で鉱石を投げる

その勢いがまさにマシンガンの如く

リッチに次々とヒットしダメージを与えていく


騎士団、魔術師団、神官その場にいた全員が

たくさんの石、鉱石を集めて勇の近くに

積み上げていく

リッチ討伐に一筋の希望が見えた

それだけで皆の顔に笑顔が

期待の笑みがこぼれていく

勇は投げながら横目で見つつ

自らも笑顔なっていく


30分後・・・


勇もさすがに肩で息をしている

石を運んできた美少女神官が

勇の足元にかがんで石をそっと置いた

その時下から上目使いで


 『勇様、大丈夫ですか?』


美女からのエールをもらい

勇に活力がみなぎってきた!


 『大丈夫です

 私、勇者だから頑張ります!!』


そう言うと美少女神官は最高の笑みをうかべ

お辞儀をして走って行った

彼女が置いて行った少し大きめの鉱石

勇はそれを手に持ち大きく息を深呼吸をした

そしてこれが最後だ!と言わんばかりに

全力で投げた

フラフラになっていたリッチの頭に石があたり

リッチは後方に吹っ飛ばされた


その場にいる全員がその様子に釘付けになる

ラシエルがリッチの範囲魔法圏内に石を放り投げる

フワッと投げられた石は腐敗せず

そのまま地面に落ちた

ラシエルは今がチャンスと判断し


 『よし!!!奴の範囲魔法が解除されたぞ!!!

 神官諸君!今のうちに浄化魔法で奴に封印を!!!』


後方にいた神官達が騎士団の護衛の元

リッチの周りに陣取り複数人で詠唱を始める

魔法陣がリッチを中心に広がっていく

光に包まれたリッチが苦しみ始める

勇はその様子を不思議そうに見ていた

そこにエリカが近寄る


 『あなた知らなさそうだから説明するけど

 リッチ、奴は元高名な神官だった

 俗世に嫌気をさしたとか、悟りを開いた結果だとか

 いろいろ言われているけど

 元神官の奴を聖属性の浄化魔法で

 穢れを払い、その魂を封印するの

 元々魂だけの存在だから

 肉体の討伐だけでは、いつかまた復活してしまう

 だから封印石に閉じ込めて教会に保管し

 祈りを捧げて2度と復活しないようにするわけ』


勇はよく分からなかった

が、うんうんと頷いておく事にした

エリカの視線が痛い

 

 『あなたほんとに理解してるの?

 はぁ、まぁいいわ

 ってか勇者って

 こんなに脳筋だと思わなかったわ

 でも・・・助かった』


エリカはそう言い残しラシエルの所へ向かった


神官達による詠唱が続く

魔法陣の光がより濃くなる

勇は神秘的な光景に目を奪われていた

その時だった

リッチが動き出した

苦しみながらも起き上がり始めた

神官達が押さえ込もうと詠唱を早める

しかしリッチがブチ切れて

光の輪を押し除け黒い闇が

炎のように広がり始めた


 『きさまらぁぁぁぁ!!!!

 我に・・・この高位なる我に!!!

 貴様らごとぉきがぁぁぁ!!!

 下劣な術をぉぉぉぉ!!!』


叫び声が頭に響く

声を出しているわけではなく

直接頭に響く声

全員が頭を押さえ痛みを覚える

リッチの黒炎が増して

ついに立ち上がった

光の輪が押し戻され始めて

神官達も負けじと詠唱の声を

早めるが闇の広がりを止められない

このままでは範囲魔法の餌食になってしまう

そう考えたラシエルが叫ぶ

 

 『全員退避だぁぁ!!!』


とその声を聞いた神官以外の

全員が後退りを始めた

神官達はまだ抑えようと

詠唱を続けている

1人2人とその場から離れようとした

その瞬間

膝まずき詠唱してる神官達の頭上をジャンプして

超えていく人物がいた


勇だ

ジャンプした状態で体を捻る

しかしリッチがアンデットを大量に

召喚し自身の盾にした

それを見たエリカが

片手を上げて掌を広げ


 『ファイアーアロォォ!!!』


エリカが無数の火の矢を

頭上に展開させ

そして手をアンデットに向ける

無数の炎の矢がアンデット達を

なぎ払っていく

アンデットの盾を失ったリッチは

勇の目の前にその姿を無防備にさらけ出した

そこへ体を半回転させ

後ろ回し蹴りをリッチの頭に叩きつける

リッチの体は高速で何周かした後

地面に転がった

意識を刈り取る一撃だった

黒炎が収束し消えていく

逃げ始めていた全員の動きが止まり

リッチが倒れたのを見て

安堵の声があがり

今度こそ、と神官達による詠唱が

続けられた

その後リッチの魂が封印石に

封じられ、その肉体が粉々になって

消えていく

リッチの討伐が完了した

皆が抱き合いながら

泣きながら歓声を上げる

心の底から笑える瞬間だった


勇とエリカの目が合う

どちらからともなく笑顔がこぼれた


続く

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