レミス村のアンデットと少女

 エリカ

日本人にありそうな名前

そう呼ばれた人物が後ろにいる

勇はもしかしたら日本人かもしれない

と思い驚いて後ろを振り返った


目の前には

かわいらいし少女が立っていた

歳は勇より少し若いくらいだろうか

勇は少女を上から下まで凝視したが

エリカと呼ばれた彼女の見た目は

日本人のその容貌とは違った


 日本人・・・・

 

 『じゃなかった・・・・』


勇は落胆した

異世界で同郷に会えたと思ったが

早とちりだった

違う世界で1人

マリーを始め友達も出来た

しかし、やっぱりさびしい

勇はため息をつき凹む

 

 日本の人だと勝手に思っちゃった

 

エリカは勇の態度が気に食わない様子で

 

 『ちょっと何よ、人の顔じろじろ見て

 勝手にため息ついでんじゃないわよ』


勇は怒られて顔を上げ

自分が悪いという事を悟った


 初対面の人にじろじろ見られて

 ため息つかれたら誰だった不愉快だよね

 

 『ご・・ごめ・・ごめんなさい』


勇は深く頭を下げて謝る

エリカはそんあ勇を横目で見ながら

ラシエルと話の続きを始める


 『姫様来られないのですか?』


エリカの質問にラシエルは王国からの

手紙の内容を伝えた

エリカは頭を下げたままの勇を見て


 『で、その代わりにこの子・・・

 とても神官には見えないし

 しばらく現状維持になるのでしょうか?』


エリカは勇の見た目や装備から神官や

それに準ずる物ではないと判断したようだった

ラシエルは少し考えた後


 『とりあえず勇殿に現状を見てもらおうか

 姫様の遣いとして来られたのだ

 何か打開策など生まれるかもしれん

 申し訳ないが勇殿、こちらへ

 勇殿、この子はエリカ=ライラックだ

 こう見えてうちで最強と名高い天才魔法使いだ

 エリカ、あなたも着いてきなさい』


勇はエリカにペコっと頭を下げて

挨拶をするがエリカはチラッと見るだけで

すぐ目を逸らされた


ラシエルに連れられて

作戦本部のテントを出て隣に

建てられた物見やぐらの階段で登る

展望台からレミス村が見渡せて

状況を把握しやすそうだった

ラシエルが勇に説明を始める


 『この先に見えるのがレミス村です

 アンデットが徘徊しているのが見えると思う

 その奥に黒いマントに覆われ杖を持った骸骨姿の

 怪しいやつがリッチです』


勇はそこまでの説明を聞いて

驚きの声を上げる


 『え?アンデットってゾンビの事なんですか???

 ゾンビぃ〜・・・はさすがにちょっと苦手というか・・

 怖いっていうか・・・』


その言葉を発した瞬間エリカがキレた


 『苦手?怖いですって・・・

 いいかげんにして!!!

 お遊びのつもりで来たのなら帰って!!!

 あなたのような子供が役に立つなんて

 これっぽっちも思ってないのよ!!!

 今いったいどれだけの人が苦しんでると

 思ってんのよ!!!!』


と叫びエリカはどこかへ行ってしまった

勇は急に怒られてしまってアタフタしていたが

謝ろうと思っても言葉が出ず

戸惑ってる間にエリカの姿は見えなくなってしまった

それを見ていたラシエルは


 『すまないね、許してあげておくれ

 あの子、この村の出身なんだ

 ここは故郷で、アンデットの中には

 あの子の知った顔もいるんだよ

 死してなおリッチの好きなように

 操られているのが見てられなくてね

 救ってあげたい気持ちが抑えられなくて

 焦っているんだ』


勇はやってしまったと言わんばかりに

またしても落ち込む

 

 『すいませんでした・・・ 

 何も知らないのにゾンビとか

 嫌だとか言ってしまって・・・』


ラシエルは首を横に振って


 『いやいやまぁあの子には後で

 ちゃんと説明しておくよ

 それじゃ説明が途中だったね

 アンデットを使役しているリッチを

 なんとかしたいんだが

 奴に攻撃する手段がない・・・・

 腐敗の範囲魔法っての使っていてね

 半径50メートルくらいだろうか

 近づく物全て腐られてしまうんだよ

 実際見てもらった方がいいかもね』


ラシエルは物見やぐらの上から

下で作業をしていた騎士団員数名に

呼びかける


 『おぉ〜い

 すいませーん!

 特大ロングボウのセット頼めますかぁ〜?』


すると騎士団員達が了解という合図の後

物凄く大きな弓と矢を持ってきた

数名で矢をセットする

セットされた矢を引っ張り弦をしならせる

限界まで引っ張った

ラシエルの合図で矢が放たれた

矢は猛スピードでリッチへ向けて飛んでいく

しかしリッチに近づくにつれ矢がボロボロになって

朽ち果てていき最後は粉々になってしまった

勇はなんかのマジックなのかと驚いていると

ラシエルは先程の説明を続ける


 『今、見てもらった通り

 奴の範囲魔法の領域半径50メートルの中に

 入ると全ての物は腐ってしまうんだよ

 ちなみに範囲魔法のギリギリの所から

 矢を射てみたんだが結果は同じだった

 魔法による攻撃も同様に奴には届かない

 もちろん人が直接近づくなんてのは

 もってのほか・・・

 お手上げ状態って訳だ

 そこで神官による浄化魔法で

 奴の範囲魔法をなんとかしようと

 思ったんだが、奴の膨大な魔力に

 並の神官では太刀打ちできない

 姫様なら、あるいわ、と思って

 お願いしてみたという訳だよ』


ラシエルの説明を受け

勇は何やら考えこむ

そんな勇を見てラシエルは

諦めてない勇のような人が来た事で

新たな策が生まれるかもしれないと

少し期待をしてみた


 『勇殿

 今日はもう遅くなってきました

 夜はアンデットの動きも活発になりますので

 一度休んで明日また出直しましょうか』


勇は魔術師団のテントで休ませてもらう事にした


深夜

勇はこっそりテントを抜け出した


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る