豚とレミス村

 『ふわぁ〜〜あ〜あ〜』


伸びをして馬車から出てくる勇

ふと横を見たら2頭の豚がその視界に入ってきた


 『ん〜〜〜んんっ!!!!!!?

 ぶっ・・・・ぶたぁーーーーーー!?』


この世界の豚は

勇が知ってる豚の数倍でかく

象くらいの大きさがあった

勇がポカーンとしていると

横にいた騎士団のおじさんが


 『そうです、豚ですね』


特に驚いた様子もなさそうだった

勇は開いた口が開いたまんまだったが

この世界の普通に突っ込んでも仕方ないと

諦めて自分の中でこれは豚!

として改めて認識をした

少し落ち着いたら横にいた騎士団員のおじさんが


 『こいつ大して強くはないんですが

 タフなんですよ〜

 豚だけにね!!!』


ニヤッと笑ってこっちを見る騎士団員のおじさん

勇は少し焦った

なぜなら意味が理解できなかったからだ


 え?今笑うとこなの?

 ジョークって事?豚がタフ?


 『アハ・・・ハハハ・・・アハハ』


勇はとりあえず愛想すらない笑いを返した


ご満悦のおじさんを見た1頭の豚が

ブヒィィィ〜という奇声を上げて

おじさん目掛けて猛烈に突っ込んできた

勇はおじさんを蹴っ飛ばして

豚の突進から遠ざける

決してイラッとしたからではない

断じてイラッとしたからではない


 『ほらぁおかしな事言うから豚も怒ってんじゃん!』


おじさんがいなくなり豚は標的を勇に変えた

猪突猛進、豚突猛進(とんとつもうしん)が正解か

と言わんばかりの速度で突っ込んでくる

勇は腰を落として右拳を構えて

豚が勇を鼻先で吹っ飛ばそうとした瞬間

ぶん殴った


 『はぁぁぁぁぁ!!!あぁい!!!』


ドォン!!!豚に正拳突きをしたのは

生まれて初めてな勇

豚は10メートルは飛んでいき

そこで白目剥いて泡吹いて気絶、死んだかも?

残心を取ったまま、もう1頭の豚を睨む

睨まれた豚はガクブルして涙目

勇はそれを見て豚に恐怖心がある事が分かった

という事は現状を理解できるという事だ


 豚って結構賢いってなんかで聞いた事ある


どっかで得た雑学を思い出した勇は


 『お座り!!!』


キツ目に豚に叫ぶ

豚はシュタッと訓練がされていたかのように

微動だにせずにお座りをした

勇はにっこりして


 『いい子だね〜』


と豚を褒める

そして周りにいた団員さん達に


 『すいませ〜〜ん

 レミス村への行き方わかる人いますか?』


と聞いた

勇の近くにいた神官、神兵の2人が


 『勇様、失礼します

 分かりやすい道なので

 おそらく全員が知っていると思います』


神官のプリア=エルという人が答えてくれた

神兵のマルキ=ディとい人もうんうんと頷く

勇は2人に対して


 『と、言う事はお二人とも分かるって

 事ですよね?』


と言うと神官、神兵の2人は


 『もちろんです、が

 それがどうかなさいましたか?』


と勇に質問で返す

勇はにっこりと笑顔で


 『豚(コレ)で行きましょう

 さっきの突進速度を見ても

 なかなかの速さですよ〜

 大幅な時間削減になるよ〜きっと

 という訳でお二人ともちょっとごめんね〜』


そう言って驚愕してる2人を

反論する時間さえ与えず

強引に拉致し、豚の背中に放り投げる

そして自分も豚にのって


 『騎士団の皆さ〜〜〜ん

 先に行ってますね!!

 後であちらでお会いしましょー!

 行け!!豚さん!!!』


ブゥヒィィィ〜〜〜〜と鳴きながらダッシュをする

勇達を乗せた豚はあっと言う間に見えなくなる

残された騎士団員さん達もあっけに取られていた


そして騎士団員さん達の耳には

神官神兵さんがあまりのスピードに驚き

絶叫している声がしばらく聞こえていた


 4時間後 

レミス村 魔術師、騎士団合同対策本部


 『勇殿、先ほどは大変申し訳ありませんでした

 まさかあんな物に乗って来られるとは

 思いもしませんで・・・

 わたくし、魔術師組合のマスターの

 ラシエル=リュフトと申します』


そう言ってペコっと頭を下げたのは

スラッと背が高く、気品漂う綺麗な女性

とても仕事が出来そうに見える

勇も頭を下げて


 『いや〜こちらこそなんか

 すいませんでした、アハハハ

 あっ、下御陵 勇 って言います

 よろしくです』


豚に乗ってレミス村に着いた途端

魔法による総攻撃を受けた

神官神兵の説得と

王国から隼が到着しレイからの手紙のおかげで

なんとか誤解が解けた

ラシエルはレイからの手紙を見ながら

勇を値踏みするように見ている


 この方が勇者様・・・

 王都では魔族を退けたとか

 とてもそう見えないが

 姫様がおっしゃるのだから

 嘘ではないのだろう

 しかし今回の任においては

 適任者の姫様がこれないとなると・・・

 折角勇者様に来て頂いた訳だが

 どうしたものか・・・


ラシエルは王国からの支援を期待していた

姫、マリーが来られない変わりに来た

少女がとても戦力になるとは思えず

扱いに困っていた

その時後ろから


 『マスターちょっとよろしいですか?』


ラシエルは声の主の問いかけに


 『どうかしたのか?エリカ』


その名前に勇は驚いて後ろを振り返る


 日本名?日本人!?


続く


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