決着!!
勇は大きく深呼吸をして
足を肩幅に開き
爪先は平行、少し内側に力を入れるように立ち
拳は腰の位置あたりに
目を閉じ、深く息をすって深く深く吐く
それを2回繰り返した
私はこの世界の人を救うって決めた
たくさんは無理かも
でもできるだけ多く・・・
せっかくここに呼んでくれたんだもん
一度死んで 下御陵 勇 としての人生が終わって
ほんとなら天国、あ〜地獄かもしれないな・・・
でも、またこの世界で私を続けていいって言われた
家族も友達もいなくてちょっと寂しいけど
終わった私を救ってくれたこの世界に
せめて恩返しが出来たら・・・
誰かを守る為に拳を奮う
それが私の武士道ならぬ勇者道
ゆっくり目を開ける
周りの景色が消えていく
勇の目には魔人しか見えてない
距離は約5メートル
少し膝を曲げ
腰を落とし右足を少し後ろに
右拳を腰あたりに左手は前に
腰を捻り
力を溜める
勇がボソっと呟く
いくよ
直後魔人の胸元に勇が入り込む
音速、いやその一瞬だけなら
光速だったかもしれない
魔人も勇が消えたようにしか見えなかった
目の前に勇がいる事に気がついたのは
勇が動いた後に訪れた
だが気づいた瞬間、時すでに遅し
勇の右拳が魔人のボディに突き刺さる
魔人の全身に衝撃が広がる
その衝撃はお腹から背中を突き抜ける
腹を抱えて言葉にならない呻き声を上げる魔人
体がくの字に曲がって頭の位置が下がる
勇は体を起こし左足を軸にして
下がった頭に右回し蹴りを叩きつける
振り抜くのではなく下に打ち下ろす
膝から下の動きは目に見えない速度
魔人は頭が地面に叩きつけられ
そのまま逆立ち状態で気を失う
そして直後に
ドォンっ!!!
という衝撃音が鳴り響き
魔人を中心に地面に亀裂が入る
勇は残心を取る
しかし魔人は起き上がる気配がなかった
それを遠巻きに見ていた
騎士団や冒険者達が
物陰から顔を出して
安全を確認し歓喜を上げる
ガモンドが驚きながら近づいてくる
魔人の状態を確認し
反撃はなさそうだと判断し
勇を見て改めて驚き
『すげーな嬢ちゃん
なんていう術なんだ?
静から動への一瞬が全く見えなかったぞ
魔人を1撃、いや2撃っていうのか
いや〜言葉にならんな
ともかく
何度もすまなかった
ありがとな』
ガモンドが勇の肩をポンっと叩く
勇は笑顔で答える
周りから人がたくさん集まってくる
みんな喜んでいるようだった
その時魔人の下に黒い闇が広がった
そして魔人が吸い込まれていく
ガモンドは警戒して
『離れろ!!』
思わず叫んだ
しかし魔人はそのまま闇に飲まれていった
そしてどこからともなく声が聞こえた
『うふふふ、この坊やは回収させてもらうわね
そのうち会いましょう、ゆ・う・しゃ・さ・ま、フフフ』
女性の声だった
しかし姿は見えず
魔人も声も消えてしまった
勇は周りに怪しい気配や殺気がない事を
確認し
『もう大丈夫そうです
けど魔人いなくなっちゃいましたね
変な声の主も気になりますけど・・・
気にしても分からない事は分からないですし
気のせいって事にしときましょ』
勇はガモンドを見ながら
魔人が吸い込まれていった場所を
足でつついてみたが
何もなさそうだった
いろいろ調べてみたが
特に異変は起きなかった
仕方なくこの日は引き上げた
勇は一旦お城に案内され
レイとガモンドと一緒に姫様に報告をした
それを聞いた姫様は涙を流しながら喜び
勇に抱きついてきた
勇をブンブン振り回し
ほっぺに何度もチューをしていた
周りに神官や騎士団達は驚いていた
どうやらあまり表に感情を出す事はないらしい
それを聞いた勇は
やっぱ苦労してんだな〜
そんな事を思いながら姫様に振り回されていた
その後姫様は引っ張り剥がされて
勇は城内の部屋に案内される
『うわ〜落ち着かないくらい大きなベッド
でかいベッドとトイレの室内が大きいのは落ち着かないのだ』
騎士団で使用してる部屋着を貸してもらい
道着を脱いで着替えようとした時に気がついた
自身は頑丈になったけど
道着はそうでもなかったらしい
お尻の辺りが少し破れていて
パンツが見えていた
『めっちゃ恥ずかしいやん・・・・』
道着を手に持って眺めながら
たくさんの人前にこの姿でいた事を
思い出し四つん這いになって凹んだ
続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます