魔人との邂逅
屋根の上からふわっと降り立つ悪魔
その見た目は黒く大きな羽を持ち
短いツノが2本、爬虫類のような目
人のような姿だが、するどい牙に爪
身長は2メートルくらいに見え
身には革製の鎧を纏う
片方の手には身長より大きな武器を持ち
その見た目は剣でもオノでも槍でもない
勇の認識には存在しない生物
ゆえに悪魔としか例えようがなかったが
騎士団の誰かがボソッと呟いた
『ま・・・・魔人だ・・・・』
その言葉と共にその場にいた
全員の空気が重くなる
魔人という言葉の重さが
全員の緊張感から伝わってくるが
勇はその意味を理解できない
無知ゆえに相手に、空気に飲まれないでいた
勇達の目の前の魔人と呼ばれる悪魔は
ニヤニヤと笑っている
『紹介どーも
楽しそうにしてるとこ悪いんだけどよぉ
俺も混ぜてくんない?
俺にもさぁ殺させてくれよ〜
俺はさぁ〜人間の断末魔を聞くのが
大好きなんだよ〜
その為にわざわざこんな切れ味の悪い
ノコギリを用意してんだからよ〜
剣とかで切っちゃうと
お前ら人間はスパスパ切れちまって
あっという間に死んじまうだろ?
だからさぁ切れ味の悪い
このでっけーノコギリをあえて作ってきてんだよ
こいつでザクって削ってやるとさぁ
人間ってのはよく鳴くんだよ
その断末魔ってゆーの?
たまんね〜んだよなぁ〜
んでな、このギザギザのとこに
お前らの血肉がついてくるんだよ
殺した奴を見ながら
それを食べるのがまた格別なんだわ
今日はたくさん食べれそうで
楽しくて笑っちまうな!!!!ウハハハハハハ!!!』
そこ場にいる騎士団全員が
動けないくらいの恐怖にかられている
恐怖とは相手に対して畏怖を覚えてなお
増幅されるものである
足元から黒いモヤがまとわりつき
全身を覆い尽くし、口から体内に入り
呼吸困難すら起こしてしまう
恐怖とはそんなイメージ
遠くから見ていたレイでさえ恐怖していた
レイは魔人の巨大なノコギリを見て
すぐさま城に向かって馬を走らせた
『あれに対抗するには
先代勇者の残したといわれる
鞘(さや)を持たない聖剣しかない!
切れすぎて鞘すら切ってしまう聖剣
勇者のみが使えるという伝承の剣
勇様ならうまく使ってくれるはず!!!』
そう言いながら馬を走らせ城へと入っていく
勇は恐怖し動けない騎士団を見て
やばい
このままでは犠牲者が増えちゃう
恐怖が伝染していく
と思った
勇は大きく息を吸って
『大丈夫!!!私がいるよ!!!
ここは私に任せて!!!』
大きな声でその場にいる全員の
金縛りを解けるように叫んだ
勇の声に騎士団全員から
少し恐怖という黒いモヤがはれていく
先ほどのオーガを圧倒する戦いをした勇なら
魔人にも勝てるのではないか?という期待と希望
少しの希望でも騎士団員の顔色がよくなっていく
恐怖から抜け出したの確信した勇は
『ガモンドさん撤退命令を!
ここにいては犠牲者が増えます!』
隣にいたガモンドに騎士団員の撤退を促す
ハッとしたガモンドは
『嬢ちゃんはどうする?って聞くのは野暮か・・・・
すまん・・・またしても嬢ちゃんに任せてしまうが
頼む・・・すまない』
勇を申し訳なさそうに見るガモンドに対して勇は
ニコニコして
『えへへ、わたしぃ勇者だよ
大丈夫、がんばる!』
勇は本音ではなかった
自身が勇者といえば
周りもガモンドも納得し
安心すると思ったのだ
それを聞いたガモンドは団員に命令する
『騎士団、撤退だ!一旦退くぞ!!!
元気なやつは負傷者をつれていけ!』
騎士団が撤退を始めようとした時
魔人は舌打ちをして
『おいおい〜逃げんなよ〜
つっまんね〜事してんじゃね〜よ!』
と言った瞬間に勇の目の前から消えた
その直後、背後から叫び声が聞こえた
『ぎゃあ〜〜
うわ〜〜〜〜』
ハッと振り返る勇
逃げようとしていた騎士団員が数名
魔人による攻撃をうけた
勇は驚きながらも
『やめて〜〜〜!!!』
そう叫んで魔人に攻撃をしかける
団員達から自分に意識を移させる
魔人は勇の攻撃をサッとかわす
勇は魔人の気を引くために
あえて挑発する
『ちょっと〜やめなさいよ
私が怖いわけ?
わかるわ〜さっきのオーガとの戦いみたら
私を避けちゃうの、わっかるな〜〜』
と言って魔人をチラっと見る
魔人はヤレヤレと言った顔つきで
『ハンッ!分かりやすい挑発だな
イラッとするぜ!
オーガってなんだ?
さっきのあれはトロルだ、人形だぜ
あれがオーガって言ったら
ほんとのオーガ族が怒っぞ!
まぁどっちでもいいけどよぉ
しゃーない、先にお前から鳴いてもらおう・・・
かな!!!!』
そう言って勇に向かって飛んでくる魔人
ノコギリを右から左から上、下と振り回してくる
技とかではなく単純に力任せにブンブン振り回してくる
勇は間一髪交わしながら騎士団が撤退する時間をかせぐ
魔人の猛攻が続く
そこにレイが城から聖剣を持って現れた
そして防戦一方の勇に向かって
『勇様、こちらの剣をお使いください!!!』
レイは聖剣を勇目掛けて思い切り投げる
聖剣はグルグル周りながら
勇目掛けて飛んでいく
魔人の攻撃を交わした勇は
視線の端っこに剣が飛んでくるのが見えた
勇に当たるかと思った瞬間
のけぞって間一髪スッと剣を交わし
そして聖剣は
クルクル周りながら
民家数件をブッた切ってどこかへ飛んで行った
続く
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