今日から勇者ですか?私?

勇が飛び出た先は空気が重かった

たくさんの人が勇を驚愕の目で見つめ

ボソボソと話し始める


 『おい、本当に出てきたぞ』

 『大丈夫なのか?女の子じゃないか!?』

 『やはり時期が早かったのでは?』

 『姫様は焦りすぎたんだと思う』

 『いや魔力が足りなかったんだよ』

 『失敗だろう・・・これは』

 『新たな手段を考えないとダメだろう』

 『はぁ〜どこの馬の骨が出てきたんだ』

 『ふざけるのも大概にしてほしいな』


どうもあまりいい雰囲気ではなさそうだ

勇の耳にも聞こえてくる不満の声

 

 これきっと私の事言ってるよね


勇は自分がこの場所に現れた事が

ここの人達にとっては望ましい状況では

ないのだろうと聞こえてる声で判断した

だがあまりにもストレートにぶつけられる声に

少しイラッとしてしまう

 

 『いや〜聞こえてるんだけどなぁ〜アハハ』


苦笑いしつつボソっと呟く

好奇の目と疑心の声を向けられる勇


 せめて聞こえない声で言えよ


心の中で呟きため息を吐く勇

肩を落としてどうしたものかと考えていると

勇に近づいてくる1人の女性に気がついた

その女性は周りの愚痴ってる人達とは身なりが違い

綺麗なドレスを纏い

立ち姿、歩く姿に貴賓(きひん)があった


 『あの、失礼ですが勇者様でしょうか?』


目の前の綺麗な女性が勇に尋ねる


 綺麗な人だけど

 私と同じくらいの歳かな

 なんだか悲しそうに見える

 あ、私が来ちゃったせいなのかな・・・


そんな事を考えてぼーっとしてる勇


 『あの?』


と女性が勇に再び声をかける

勇はハッとして


 『はぃ!私勇者です!今日から勇者です!!!

 初めてですがよろしくお願いします!!!』


お辞儀は90度

シュタッと頭を下げて挨拶をする勇


 『よかったぁ〜』


と安堵した優しい声が女性からもれる

勇はその声に癒されそうになったが

お辞儀した状態の勇は目線は見ていた

彼女が小さく拳を握ってガッツポーズしていた事を


続く

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