行ってきます!!

自分以外の人が猛烈に熱くなっていると

 若干冷める事があるよね

 ちょっと客観的に見ちゃうというか

 同じくらい熱くなってる時は一緒に盛り上がれるけど

 

女神が熱弁してるのを

少し冷めた目で見つめる勇(ゆう)

 『はぁはぁはぁ

 わかってもらえたかしら?』


熱く語りおえた女神が息切れ気味に

勇に熱視線を送る


 『なんとなく・・・

 とりあえず私はこのまま死ぬ事よりも

 新しい世界で何者かになる

 という事ですよね

 まだまだやり残した事ばっかりだし

 死ぬよりかいいかな・・・と思うし

 なので出来るか出来ないか

 分からないけどお願いします』


ちょっと残念そうに勇が答える


 『ほんと!!!

 助かったわ〜

 それじゃこれからあなたが行く世界の説明をするね

 地球と違ってたくさんの種族が暮らしている世界よ

 見た目が人のそれとは違うけれども

 人と共存してる方達はさほど問題ではないの

 世界はもっと危険にさらされていて

 猛獣や怪物、悪魔のような姿の魔人

 人間が敵としているのはこのタイプよ

 まぁ話だけでは分かりにくいわね

 行ってみれば理解できるようになるわ

 後、あなたは世界を周る旅になると思うの

 行く先々に私を祀っている教会があるの

 そこに立ち寄り、祈りを捧げて私を呼んで欲しいの

 そうすれば街や村の為になるし

 私の為にもなるので、これは忘れずにお願いしますね』


女神からの説明をうけた勇は

理解を示したように深く頷(うなず)く

でもさほど理解してない


 『それではあなたに女神の加護を』


そう言い祈るポーズをとる女神

その瞬間、勇の体が薄ら光をおびる


 『きれいなひかり〜

 やっぱり夢じゃないんだな〜

 どこかで覚めるかと思ったんだけど・・・

 それか今も夢の中?

 だったらよかったんだけどね、フフ』


何かを決心した勇


 『それでは準備はよろしいですか?』


女神が勇に尋ねる

そうすると勇は女神に


 『あっちょっと聞きたい事があります

 私のいた世界、日本はどちらの方向ですか?』


それを聞いた女神は勇に


 『ちょうど真下に位置するかな』


と下方向に指を差す


 『ありがとうございます』


そう言い勇は膝をつき

顔を地面につけて目を閉じる


 『お父さん、お母さん

 こんな事になってしまってごめんなさい

 先立つ不幸をご許しください、なんてね

 こんな事言うはめになるなんてびっくりだよ、アハハ

 私は2人の子供で幸せでした

 どうか悲しまないでください

 あ、子供作ったらどうかな?

 女の子だったら嬉しいな〜

 2人ともまだ若いからいけるよ、ウフフ

 妹なら愛のつく名前にしてあげて欲しいです

 それでは末長くお元気でお過ごしください

 ありがとう、さようなら』


 『おじいちゃん

 組み手出来なくてごめんね

 約束してたのに待っててくれたかな?

 空手では一度も勝てなかった・・・

 まだまだおじいちゃんに教わりたい事

 たくさんありました

 一緒に世界をみようぜ!

 なんて言ってたのに中途半端になってしまって

 ごめんね

 どうか気を落とさずまだまだ元気で長生きして欲しいです

 ありがとう、バイバイ』


 『おにいちゃん

 私のせいで空手辞めちゃってごめんね 

 お兄ちゃんは関係ないって言ってくれてたけど

 私ずっと謝りたかった

 お兄ちゃんの親友、りょうちゃんに怪我させてしまって

 その後空手を辞める事に繋がってしまって・・・・

 2人とも辞めた事は私のせいじゃないって

 サッカーがしたかったって言ってくれてたけど

 ほんとはちょっと申し訳なくてね

 いつも優しいお兄ちゃんありがとうございました

 おじいちゃんの事よろしくね』


顔を床に押し当てて目を閉じたまま

涙を流す勇

少し大きく深呼吸して立ち上がる


 『はいっ!!!準備できました』


勇は笑顔で女神にそう伝えた

女神は目を閉じ何かを呟き始める


 『それではいってらっしゃい

 がんばってね勇』

 

勇はテレポーテーションでもするのかと

心構えをした瞬間だった


 バンっっ


という音と共に勇の足元の床が開いた

コントで使われるような落とし穴のように

落下していく勇


 『え〜〜〜〜〜〜

 きゃ〜〜〜〜〜〜〜

 うそ〜〜〜〜〜〜〜〜

 こわいこわいこわいこわい

 どこまで落ちてくの〜〜〜』


身をすくめて落下していく勇

落下していっていたはずが

いつの間にか上昇している感覚になる


 『あれ?あれれ?

 いつの間にか上に引っ張られてる?

 なんかこれ気持ち悪い〜〜〜

 シーソーのあれだ

 わ〜〜〜やめて〜〜〜もう助けてよ〜』


そう言っていると暗闇の先に光が見えてきた

出口だ

勇はそう思うとちょっとワクワクしてきた

新しい世界の入り口を飛び越える勇

というか穴から放り出された

飛び出た先はたくさんの人が祈りを捧げていた

そんな真ん中に躍り出た勇



続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る