第2話 イビル国

 どこかの岸に打ち上げられていたんでございます。

 私は立ち上がり、砂まみれになっている服装をパンパンと叩き落としながら「はて、ここはどこだ?」と辺りを見回したら、もうビックリしました。

 それはもう、ものすごくびっくりしたんでございます。

 なんたって、港もなければ、家もございません。

 目の前には森しかないんでございます。

 だいたいの岸には人が何か施した物、または人の作った何かしらの気配というものがあるのですが何もないのでございます。

 この近くには人はいないと考えた私は気落ちもせず、

「なるようになる。とりあえず、食料と水の確保を」と考え、森の中に入って探索を始めたのでございます。

 しばらく、歩き回っていると木造で建てられた一件の家を発見しました。

「こんな近くに家がある?」

 不思議に思いつつも、その家に向かったんです。

 ドアの前まで来ると、何やら悪い気が流れているな、とはっきりと感じました。

 あ、言い忘れていました。

 私、はるか東の国で修業をしたので、少しばかし気の流れが分かるんでございます。

 ・・・・・・そんなに怪しい顔を向けないでいただけないでしょうか。

 本当に私は気の流れが分かりまして――おおっといけませんね、話が逸れてしまいました。

 ええっと、話を戻しますと――

 ドアの前に立っている私は誰かいればいいな、と考えながら、

「どなたかいらっしゃいませんか?」

 と何度もドアに向かって声を上げました。

 しかし、どなたも出てきません。

 無礼を承知で私はドアをノックして「お邪魔いたします」と言い、靴を脱いで入室したんでございます。

 シーン、と静まっている家の中はやはり誰もいない様子でした。

 家の中は植物が立ち並び、独特な臭いを放っていたんでございます。

 ただ、そこの空間は農機具があったり、丸椅子があったりと生活感があって、使われていない家ではないとすぐに気が付きました。

 ここで待っていたら誰か来るだろうと思った私は近くにあった丸椅子に座って待ち続けたんでございます。

 何十分か経ちまして、毛むくじゃらの大男がやって来て、やっと人が来たと喜んでいた私に腰につけていた大きなナイフをいきなり取り出して、私に向けたんです。

 事情を説明しようと話しかけるのですが全く話になりませんでした。

 と言いますのも、相手の人は違う言語を使うため話が通じませんでございます。

 はて、どのように説明をしましょうか、と悩んでいると、大男はじりじりと詰め寄ってきて今にも襲い掛かろうとしていました。

 そんな緊迫した状況で私は冷静に目だけを動かし、周りの物を見ました。

 数秒も許されない状況、とある物が私の目に入ってきたのでございます。

 それが私の命を救いました。

 何かと申しますとペンと紙でございます。

 なんとかして、体を使ってジェスチャーして、紙とペンで説明をさせてくれ、と必死に伝えました。

 私の熱い思いが伝わったのか、大男は紙とペンがある場所と私を交互に見て、頷いたんでございます。

 伝わったかな、と思った私に大男は手招きをして、私をテーブルに呼び寄せ、座らされました。

 それで絵を描いて今の自分の状況を説明したんでございます。

 すると、毛むくじゃらの大男は理解してくれて、

 伝わってよかった、と思っていると大男からとある提案をされました。

 無料で俺の手伝いをするなら2食付きでここに住んでもいい、ということでした。

 知らない土地でしばらくの間、住めるならいいと考えた私は、承諾するのでございます。

 ただ、この大男、実はとても厄介な人物でして、どうやら危ない植物を栽培してたんでございます。

 その時の私はそうとも知らず、2か月ほど彼のお手伝いをしていました。

 ある日、家の中で彼と作業をしていると、剣を持っている5人がいきなり家に入って来たんでございます。

 大男には「流郎、逃げろー!」となんとなくそんなことを言われているのが分かって、近くにあった丈夫な細長い棒を手に持ちなんとかして家を出て逃げました。

 彼らからはうまく逃げられたのですが、問題が起きまして……

 私、追われる身になったのでございます。

 この国の至る所の掲示板に指名手配として私の似顔絵が載り、逃亡生活を余儀なくされたのです。

 ですから私は、点々といろんな地域を移動しました。

 指名手配に載っていない国まで行きましたが、色々と問題が起き、西へ西へと進み、ついには砂漠地帯を彷徨いました。

 果てしない日にちを砂漠の中、歩いていると、ようやく街が見えたのでございます。

 そこがイビル国という6区に構成されている大きな内陸国でした。

 ヨーロッパと言われる大陸にあるよく似た建物が立ち並んでいて、一見すると、街は豊かなのかと思えたその国は、都心を離れると飢餓、病、水不足と数多くの人災が起きていたんでございます。

 当初、空腹で飲み水に困っていた私を助けてくれた村の方々がいました。その方々になにかできやしないか、と考えて、はるか東の国にある水路技術や農業の技術などをイビル国中に何年もの間、駆け回って教えたのであります。

 問題はまだまだありますが、以前と比べるとイビル国は豊かになりました。

 イビル国に来てから8年ほどの時が過ぎた頃、私はイビル国にあるウォルタ区の小さな街、ベータ街で10才ほどの14名の子供たちを教育していました。

 この頃、私はとても忙しい立場でいましたが、貧困層の教育を確立するために1つのモデルとしてベータ街に桐島塾を建てました。

 この街で滞在する時はできる限り私が教育をすると村人たちに数年前から話していたので、ここで教育を始めました。

 しかし、子供たちを教育しているある日、歴史を揺るがすほどの大事件が起きます。それは、桐島事件または桐島大犯罪事件と呼ばれるようになります。

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~8年先のやばい未来に転生~桐島流朗物語 シドウ @jpshido

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