第5話 挑発

 イナズマ達が仕事に戻り一時間ほど過ぎた頃、軍のフロートボートが採掘場に入り込んできた。


「皆、取り敢えず作業の手を止め聞いて欲しい、新入りのD元軍曹だ仲良くして欲しい」

 当事者の普人族らしき黒髪の男を引き連れた数人の軍関係者と共に姿をあらわした所長が、似合わない笑顔で御託を告げる。


 手錠らしきものを外された男が、突き出すように頷くと所長達は、作業場から出ていった。


「そこの図体のでかいよお、仕事の道具はねえのかい?」

 ヘラヘラと莫迦にするように男が、イナズマに問いかける。


「オレの名は稲妻だ!今は生憎と二本腕かたわの人ヤロウの道具がねえからこれでも使ってな!!」

 イナズマは近くの仲間からブレイカーをひったくるように咥え取ると、男に向かって勢いよくぶん投げた。


「おいおい、こんなノロマな投げ方でお優しいこった。イナズマなんて大層な名はやめてノロマなウスノロに変えたらどうだい??」

 ブレイカーを片手であっさり受け取った男が、更に挑発する。


「………勝手にしろ!!…おい!

 皆仕事に戻るぞ」


 イナズマは埒が明かないと思い男の相手をやめ、仕事にと戻る。


 残された男は頭の後ろで手を組んで、退屈そうに彼らの仕事ぶりをただ眺めるだけであった。

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ウスノロな稲妻 いちごはニガテ @xxitigo

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